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2018年01月10日
東野圭吾『宿命』
〜『宿命』7つのポイント〜
『宿命』は、東野圭吾15作目の作品。
小さな頃から因縁のある2名が、片方は刑事、もう片方は殺人事件の容疑者として再び出会います。
高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。
男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。
刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
さあ、『宿命』について語りましょう。
1 あらすじ
主人公・和倉勇作は、小学校5年生の時に瓜生晃彦と同級生になります。
これまで成績優秀、スポーツ万能だった勇作でしたが、晃彦には何をやっても勝てませんでした。
中学、高校と勇作にとっては屈辱の日々が続きます。
そのような中で出会った美佐子と、勇作は甘い恋に落ちます。
しかし幸せの日々は長くは続きません。
勇作は目指していた医者への道をあきらめなければならなくなり、美佐子とも別れ、警察官となります。
ある日、電機メーカーUR電算で起こった殺人事件の担当となった勇作は、先代社長の息子である晃彦と再会します。
そして、あろうことか晃彦の妻となっている美佐子とも再会を果たすのでした。
これまで何をやっても晃彦に勝てなかった勇作でしたが、この事件の犯人は晃彦であると確信を持っています。
宿命の二人の宿命の対決の行方はいかに。
そして二人の本当の宿命とは?
2 登場人物
和倉勇作
主人公。医者への道をあきらめ警察官となる。
瓜生晃彦
勇作の幼少期からの宿命のライバル。大学病院で助手をしている。
瓜生美佐子
晃彦の妻。勇作の初恋の相手。
瓜生直明
UR電算前社長。晃彦の父。
瓜生亜耶子
直明の後妻。晃彦とは義理の関係。
瓜生弘昌
直明の次男。亜耶子の実子。
瓜生園子
直明の長女。亜耶子の実子。
内田澄江
瓜生家の家政婦。
須貝正清
UR電算の新社長。
松村顕治
UR電算常務。直明の腹心の部下。
尾藤高久
UR電算勤務。直明の元秘書。
江島壮介
美佐子の父。
サナエ
レンガ病院の入院患者。
3 和倉勇作
幼少期にレンガ病院で会ったサナエのことが気になっていた勇作。
サナエの死を悲しみますが、その時に出会っていたのが瓜生晃彦でした。
それまで勉強も運動も1番だった勇作でしたが、5年生の時に晃彦と同じクラスになってからはその座を晃彦に奪わます。
中学生になっても晃彦に勝てなかった勇作は、何とか晃彦を負かそうと、晃彦と同じ進路を選びます。
それは医学の道でした。
レンガ病院に立ち寄ることが多かった勇作は、父の見舞いに来ていた美佐子と出会い恋に落ちます。
そんな時、警察官だった父が倒れ、勇作は医師への道をあきらめざるを得なくなりました。
そして父と同じ警察官の道を選び、美佐子に別れを告げます。
それから数年、勇作はUR電算で起きた殺人事件の担当となりますが、そこで晃彦と再会し、また、晃彦の妻となっていた美佐子とも再会を果たします。
長年のライバルに初恋の相手まで奪われた形になった勇作ですが、殺人事件の犯人は晃彦ではないかと疑っています。
合わせて、被害者の遺品にレンガ病院の写真を見つけた勇作は、今回の事件とサナエの死に関係があると確信を持ちます。
ライバルに対する思い、初恋の相手に対する思いに揺れながら、勇作は事件の解決、そしてUR電算に隠された謎の解明に挑みます。
4 瓜生晃彦
勇作のライバル。
UR電算前社長・瓜生直明の息子でありながら、会社の後継ではなく医学への道を志します。
大学病院の助手として勤める晃彦は、家族の誰にも、妻である美佐子にも心を開くことはありません。
事件の捜査が進んでいく中、晃彦は不審な行動を繰り返します。
果たして、晃彦は事件にどのようにかかわっているのでしょうか。
晃彦の行動に隠された謎とは一体?
5 瓜生美佐子
美佐子は長年「糸」を感じています。
父・壮介の好待遇すぎる入院とその後のUR電算への再就職、自身のUR電算への就職、そして晃彦との出会い、結婚。
しかし晃彦との結婚生活を送っても、美佐子は晃彦に対し、かつて勇作に感じたような愛情を感じることができませんでした。
晃彦のことを理解しようと努める美佐子ですが、晃彦は心を打ち明けることはありません。
美佐子は晃彦との離婚も考えだしますが、その矢先に起きたUR電算の殺人事件。
そしてかつて愛した勇作との再会。
勇作は事件の犯人として晃彦を疑っています。
晃彦の不審な動きを感じている美佐子の心は大きく揺れ動きます。
6 事件の真相
須貝正清が殺されます。
凶器は瓜生直明の遺品にあったボウガン。
警察は弘昌を逮捕しますが、勇作や美佐子は真相はそこにはないと確信しています。
晃彦の動きには明らかに不自然なところがあるからです。
警察の捜査は難航しますが少しずつ事実が判明していきます。
果たして殺人事件の真相とは?
7 最後の一行
作者・東野圭吾はこの作品について次のように語っています。
「犯人は誰か、どういうトリックか―
手品を駆使したそういう謎もいいけれど、もっと別のタイプの意外性を創造したいと思いました。
このような題名をつけたのも、そういう意図のあらわれです。
そして今回一番気に入っている意外性は、ラストの一行にあります。
だからといって、それを先に読まないで下さいね」
一番気に入っている意外性であるラスト一行にいかにもっていくか綿密な計算を立て、構想に3か月、執筆に2か月をかけたとのことです。
殺人事件の謎解きも十分に楽しめるものですが、それ以上に2人の宿命の謎、真実が明らかになるところは圧巻。
これまでの、トリックに重きを置いた作品とは異なり、登場人物1人1人の背景が見事に描写されており、そこに様々な事象の真相があるため読者はどんどん引き込まれていきます。
東野圭吾のターニングポイントとなった作品の1つといっても良いのではないでしょうか。
まとめ
『宿命』7つのポイント
1 和倉勇作の背景
2 瓜生晃彦が隠していること
3 揺れ動く美佐子の心
4 レンガ病院とサナエの謎
5 殺人事件の解明
6 勇作と明彦の宿命とは
7 最後の一行の意外性
『宿命』は、東野圭吾15作目の作品。
小さな頃から因縁のある2名が、片方は刑事、もう片方は殺人事件の容疑者として再び出会います。
高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。
男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。
刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
さあ、『宿命』について語りましょう。
価格:691円 |
1 あらすじ
主人公・和倉勇作は、小学校5年生の時に瓜生晃彦と同級生になります。
これまで成績優秀、スポーツ万能だった勇作でしたが、晃彦には何をやっても勝てませんでした。
中学、高校と勇作にとっては屈辱の日々が続きます。
そのような中で出会った美佐子と、勇作は甘い恋に落ちます。
しかし幸せの日々は長くは続きません。
勇作は目指していた医者への道をあきらめなければならなくなり、美佐子とも別れ、警察官となります。
ある日、電機メーカーUR電算で起こった殺人事件の担当となった勇作は、先代社長の息子である晃彦と再会します。
そして、あろうことか晃彦の妻となっている美佐子とも再会を果たすのでした。
これまで何をやっても晃彦に勝てなかった勇作でしたが、この事件の犯人は晃彦であると確信を持っています。
宿命の二人の宿命の対決の行方はいかに。
そして二人の本当の宿命とは?
2 登場人物
和倉勇作
主人公。医者への道をあきらめ警察官となる。
瓜生晃彦
勇作の幼少期からの宿命のライバル。大学病院で助手をしている。
瓜生美佐子
晃彦の妻。勇作の初恋の相手。
瓜生直明
UR電算前社長。晃彦の父。
瓜生亜耶子
直明の後妻。晃彦とは義理の関係。
瓜生弘昌
直明の次男。亜耶子の実子。
瓜生園子
直明の長女。亜耶子の実子。
内田澄江
瓜生家の家政婦。
須貝正清
UR電算の新社長。
松村顕治
UR電算常務。直明の腹心の部下。
尾藤高久
UR電算勤務。直明の元秘書。
江島壮介
美佐子の父。
サナエ
レンガ病院の入院患者。
3 和倉勇作
幼少期にレンガ病院で会ったサナエのことが気になっていた勇作。
サナエの死を悲しみますが、その時に出会っていたのが瓜生晃彦でした。
それまで勉強も運動も1番だった勇作でしたが、5年生の時に晃彦と同じクラスになってからはその座を晃彦に奪わます。
中学生になっても晃彦に勝てなかった勇作は、何とか晃彦を負かそうと、晃彦と同じ進路を選びます。
それは医学の道でした。
レンガ病院に立ち寄ることが多かった勇作は、父の見舞いに来ていた美佐子と出会い恋に落ちます。
そんな時、警察官だった父が倒れ、勇作は医師への道をあきらめざるを得なくなりました。
そして父と同じ警察官の道を選び、美佐子に別れを告げます。
それから数年、勇作はUR電算で起きた殺人事件の担当となりますが、そこで晃彦と再会し、また、晃彦の妻となっていた美佐子とも再会を果たします。
長年のライバルに初恋の相手まで奪われた形になった勇作ですが、殺人事件の犯人は晃彦ではないかと疑っています。
合わせて、被害者の遺品にレンガ病院の写真を見つけた勇作は、今回の事件とサナエの死に関係があると確信を持ちます。
ライバルに対する思い、初恋の相手に対する思いに揺れながら、勇作は事件の解決、そしてUR電算に隠された謎の解明に挑みます。
4 瓜生晃彦
勇作のライバル。
UR電算前社長・瓜生直明の息子でありながら、会社の後継ではなく医学への道を志します。
大学病院の助手として勤める晃彦は、家族の誰にも、妻である美佐子にも心を開くことはありません。
事件の捜査が進んでいく中、晃彦は不審な行動を繰り返します。
果たして、晃彦は事件にどのようにかかわっているのでしょうか。
晃彦の行動に隠された謎とは一体?
5 瓜生美佐子
美佐子は長年「糸」を感じています。
父・壮介の好待遇すぎる入院とその後のUR電算への再就職、自身のUR電算への就職、そして晃彦との出会い、結婚。
しかし晃彦との結婚生活を送っても、美佐子は晃彦に対し、かつて勇作に感じたような愛情を感じることができませんでした。
晃彦のことを理解しようと努める美佐子ですが、晃彦は心を打ち明けることはありません。
美佐子は晃彦との離婚も考えだしますが、その矢先に起きたUR電算の殺人事件。
そしてかつて愛した勇作との再会。
勇作は事件の犯人として晃彦を疑っています。
晃彦の不審な動きを感じている美佐子の心は大きく揺れ動きます。
6 事件の真相
須貝正清が殺されます。
凶器は瓜生直明の遺品にあったボウガン。
警察は弘昌を逮捕しますが、勇作や美佐子は真相はそこにはないと確信しています。
晃彦の動きには明らかに不自然なところがあるからです。
警察の捜査は難航しますが少しずつ事実が判明していきます。
果たして殺人事件の真相とは?
7 最後の一行
作者・東野圭吾はこの作品について次のように語っています。
「犯人は誰か、どういうトリックか―
手品を駆使したそういう謎もいいけれど、もっと別のタイプの意外性を創造したいと思いました。
このような題名をつけたのも、そういう意図のあらわれです。
そして今回一番気に入っている意外性は、ラストの一行にあります。
だからといって、それを先に読まないで下さいね」
一番気に入っている意外性であるラスト一行にいかにもっていくか綿密な計算を立て、構想に3か月、執筆に2か月をかけたとのことです。
殺人事件の謎解きも十分に楽しめるものですが、それ以上に2人の宿命の謎、真実が明らかになるところは圧巻。
これまでの、トリックに重きを置いた作品とは異なり、登場人物1人1人の背景が見事に描写されており、そこに様々な事象の真相があるため読者はどんどん引き込まれていきます。
東野圭吾のターニングポイントとなった作品の1つといっても良いのではないでしょうか。
まとめ
『宿命』7つのポイント
1 和倉勇作の背景
2 瓜生晃彦が隠していること
3 揺れ動く美佐子の心
4 レンガ病院とサナエの謎
5 殺人事件の解明
6 勇作と明彦の宿命とは
7 最後の一行の意外性
新品価格 |
東野圭吾『探偵倶楽部』
〜『探偵倶楽部』7つのポイント〜
『探偵倶楽部』は、東野圭吾14作目の作品。
VIP専用の会員制調査機関が事件を解決していく5つのストーリーからなる短編集です。
「お母さん、殺されたのよ」―
学校から帰ってきた美幸は、家で母が殺害されたことを知らされる。
警察は第一発見者である父を疑うが、彼には確かなアリバイがあった。
しかしその言動に不信を抱いた美幸は、VIP専用の調査機関〈探偵倶楽部〉に調査を依頼する。
探偵の捜査の結果、明らかになった意外な真相とは?
〈探偵倶楽部〉が難事件を鮮やかに解決!
傑作ミステリー!!
さあ、『探偵倶楽部』について語りましょう。
1 探偵倶楽部
VIP専用の会員制調査機関。
クラブの調査員は男女2人。
男は30代半ばくらいで長身。
日本人離れした彫りの深い顔立ちをしており、黒っぽいスーツを着ています。
女は20代後半くらいで真っ黒な髪を肩まで伸ばしています。
目は切れ長で口元も引き締まっており、間違いなく美人の部類に入ります。
2 偽装の夜
大手スーパーマーケットの社長・正木藤次郎の喜寿を祝うパーティーが開かれましたが、そこに離婚を迫られた妻が離婚届を持って現れます。
藤次郎はパーティーを中座しますが、その後首吊り死体となって発見されます。
発見したのは藤次郎の秘書・成田、藤次郎と結婚し3番目の妻となる予定の江里子、娘婿で副社長の高明の3人。
3人はそれぞれの思惑が合致し、藤次郎の死を偽装しようと画策します。
しかし事態は思わぬ展開に・・・。
(登場人物)
正木藤次郎
大手スーパーマーケットの社長
正木文江
藤次郎の妻。離婚成立寸前。
正木涼子
藤次郎の娘で高明の妻。
正木高明
正木涼子の婿で副社長。
江里子
藤次郎の3番目の妻になる予定の女性。
成田真一
正木藤次郎の秘書。
麻子
正木家の家政婦。
3 罠の中
大手不動産会社社長・山上孝三が自宅の風呂場で死んでいました。
以前から心臓の悪かった孝三が風呂場で心臓麻痺を起こした事故死と判断されましたが、孝三の妻・道代はいつもの孝三の入浴の習慣と違うことから、孝三は何者かに殺されたのではないかと疑問を抱きます。
(登場人物)
山上孝三
不動産会社社長。
山上道代
孝三の妻。
浜本利彦
山上孝三の姉の息子。
高田百合子
利彦の婚約者。
青木信夫
道代の弟。
青木喜久子
信夫の妻。
青木行雄
信夫の息子。
中山二郎
製薬会社勤務。
中山真紀枝
二郎の妻で孝三の妹。
中山敦司
二郎の息子。
玉枝
山上家の家政婦。
4 依頼人の娘
ある日美幸が高校のテニス部の練習から帰ってくると、自宅の2階で母親が血まみれで死んでいました。
死体の第一発見者は父。
警察は父を疑っていましたが、父にはアリバイがありました。
しかし美幸は、父や姉、叔母の様子がおかしく、自分に何か隠しているのではないかと思い、探偵倶楽部に調査を依頼します。
(登場人物)
的場美幸
高校1年生。
的場陽介
美幸の父で薬品メーカー勤務。
的場享子
美幸の姉
的場妙子
美幸の母。自宅で死体となって発見される。
大塚典子
妙子の妹。
中野修
カルチャーセンターの講師。
古川昌子
妙子の友人。
5 探偵の使い方
夫・佐智男の浮気を疑い探偵倶楽部に調査を依頼した阿部芙美子。
芙美子は、佐智男と一緒にいる女性の写真を見ると、依頼途中にもかかわらず調査を打ち切ります。
夫の浮気相手は芙美子の親友・真鍋秋子でした。
芙美子はそのことを秋子の夫・真鍋公一に伝えます。
1週間後、佐智男と公一は伊豆のホテルで不審死を遂げます。
警察は、公一が佐智男と秋子を殺毒殺しようとして、誤って自らが毒を飲んでしまったものと判断しました。
しかし、探偵倶楽部が知っている真相とは・・・。
(登場人物)
阿部佐智男
産業機器メーカー勤務。
阿部芙美子
佐智男の妻。
真鍋公一
大営通商勤務。産業機器部部長。
真鍋秋子
公一の妻。
6 薔薇とナイフ
和英大学教授・大原泰三は娘・由理子が妊娠していることを知り激怒します。
相手は誰かを問い詰めますが由理子は頑なに口を閉ざします。
泰三は、大学研究室の中に由理子の相手がいると見当をつけ、探偵倶楽部に相手が誰か調査を依頼します。
そんな中、由理子の部屋で酔って寝ていた姉・直子の刺殺死体が発見されます。
直子は由理子と間違えられて殺されたと考えた泰三は、犯人は由理子の相手だと判断します
。
探偵倶楽部の調査結果はいかに・・・。
(登場人物)
大原泰三
和英大学教授。
大原由理子
泰三の娘。
大原直子
泰三の娘。由理子とは異母姉妹。
葉山
大原家の主治医。
吉江
大原家の家政婦。
上野
大学研究室のメンバー。
元木
大学研究室のメンバー。
神崎
大学研究室のメンバー。
7 総評
探偵倶楽部の2人が鮮やかに淡々と調査を進め、物語の中にしゃしゃり出てこないところが特徴。
これにより、探偵ではなく各事件の登場人物を主人公として物語が進み、分かりやすい構成、展開となっています。
短編集なので1つ1つのエピソードの印象そのものが薄くなってしまうことは仕方がありませんが、どのストーリーも謎解きそのものよりも、その裏にある真相、どんでん返しが楽しめます。
こういう作品であると、探偵倶楽部の調査員にピンチが訪れたり、探偵倶楽部の正体に迫ったりするパターンもよく見受けられますが、この作品に限ってはそのようなこともなく、探偵倶楽部はあくまでも淡々と依頼された調査をこなすだけ、というところも面白いところです。
まとめ
『探偵倶楽部』7つのポイント
1 淡々と確実に調査を進める探偵倶楽部
2 探偵倶楽部が物語にしゃしゃり出ない
3 各ストーリーの分かりやすい構成
4 各ストーリーの謎解き
5 各ストーリーで探偵倶楽部が出す結論
6 事件の裏にある真相
7 どんでん返し
『探偵倶楽部』は、東野圭吾14作目の作品。
VIP専用の会員制調査機関が事件を解決していく5つのストーリーからなる短編集です。
「お母さん、殺されたのよ」―
学校から帰ってきた美幸は、家で母が殺害されたことを知らされる。
警察は第一発見者である父を疑うが、彼には確かなアリバイがあった。
しかしその言動に不信を抱いた美幸は、VIP専用の調査機関〈探偵倶楽部〉に調査を依頼する。
探偵の捜査の結果、明らかになった意外な真相とは?
〈探偵倶楽部〉が難事件を鮮やかに解決!
傑作ミステリー!!
さあ、『探偵倶楽部』について語りましょう。
探偵倶楽部 本格推理小説 (ノン・ポシェット) [ 東野圭吾 ] 価格:596円 |
1 探偵倶楽部
VIP専用の会員制調査機関。
クラブの調査員は男女2人。
男は30代半ばくらいで長身。
日本人離れした彫りの深い顔立ちをしており、黒っぽいスーツを着ています。
女は20代後半くらいで真っ黒な髪を肩まで伸ばしています。
目は切れ長で口元も引き締まっており、間違いなく美人の部類に入ります。
2 偽装の夜
大手スーパーマーケットの社長・正木藤次郎の喜寿を祝うパーティーが開かれましたが、そこに離婚を迫られた妻が離婚届を持って現れます。
藤次郎はパーティーを中座しますが、その後首吊り死体となって発見されます。
発見したのは藤次郎の秘書・成田、藤次郎と結婚し3番目の妻となる予定の江里子、娘婿で副社長の高明の3人。
3人はそれぞれの思惑が合致し、藤次郎の死を偽装しようと画策します。
しかし事態は思わぬ展開に・・・。
(登場人物)
正木藤次郎
大手スーパーマーケットの社長
正木文江
藤次郎の妻。離婚成立寸前。
正木涼子
藤次郎の娘で高明の妻。
正木高明
正木涼子の婿で副社長。
江里子
藤次郎の3番目の妻になる予定の女性。
成田真一
正木藤次郎の秘書。
麻子
正木家の家政婦。
価格:561円 |
3 罠の中
大手不動産会社社長・山上孝三が自宅の風呂場で死んでいました。
以前から心臓の悪かった孝三が風呂場で心臓麻痺を起こした事故死と判断されましたが、孝三の妻・道代はいつもの孝三の入浴の習慣と違うことから、孝三は何者かに殺されたのではないかと疑問を抱きます。
(登場人物)
山上孝三
不動産会社社長。
山上道代
孝三の妻。
浜本利彦
山上孝三の姉の息子。
高田百合子
利彦の婚約者。
青木信夫
道代の弟。
青木喜久子
信夫の妻。
青木行雄
信夫の息子。
中山二郎
製薬会社勤務。
中山真紀枝
二郎の妻で孝三の妹。
中山敦司
二郎の息子。
玉枝
山上家の家政婦。
4 依頼人の娘
ある日美幸が高校のテニス部の練習から帰ってくると、自宅の2階で母親が血まみれで死んでいました。
死体の第一発見者は父。
警察は父を疑っていましたが、父にはアリバイがありました。
しかし美幸は、父や姉、叔母の様子がおかしく、自分に何か隠しているのではないかと思い、探偵倶楽部に調査を依頼します。
(登場人物)
的場美幸
高校1年生。
的場陽介
美幸の父で薬品メーカー勤務。
的場享子
美幸の姉
的場妙子
美幸の母。自宅で死体となって発見される。
大塚典子
妙子の妹。
中野修
カルチャーセンターの講師。
古川昌子
妙子の友人。
5 探偵の使い方
夫・佐智男の浮気を疑い探偵倶楽部に調査を依頼した阿部芙美子。
芙美子は、佐智男と一緒にいる女性の写真を見ると、依頼途中にもかかわらず調査を打ち切ります。
夫の浮気相手は芙美子の親友・真鍋秋子でした。
芙美子はそのことを秋子の夫・真鍋公一に伝えます。
1週間後、佐智男と公一は伊豆のホテルで不審死を遂げます。
警察は、公一が佐智男と秋子を殺毒殺しようとして、誤って自らが毒を飲んでしまったものと判断しました。
しかし、探偵倶楽部が知っている真相とは・・・。
(登場人物)
阿部佐智男
産業機器メーカー勤務。
阿部芙美子
佐智男の妻。
真鍋公一
大営通商勤務。産業機器部部長。
真鍋秋子
公一の妻。
6 薔薇とナイフ
和英大学教授・大原泰三は娘・由理子が妊娠していることを知り激怒します。
相手は誰かを問い詰めますが由理子は頑なに口を閉ざします。
泰三は、大学研究室の中に由理子の相手がいると見当をつけ、探偵倶楽部に相手が誰か調査を依頼します。
そんな中、由理子の部屋で酔って寝ていた姉・直子の刺殺死体が発見されます。
直子は由理子と間違えられて殺されたと考えた泰三は、犯人は由理子の相手だと判断します
。
探偵倶楽部の調査結果はいかに・・・。
(登場人物)
大原泰三
和英大学教授。
大原由理子
泰三の娘。
大原直子
泰三の娘。由理子とは異母姉妹。
葉山
大原家の主治医。
吉江
大原家の家政婦。
上野
大学研究室のメンバー。
元木
大学研究室のメンバー。
神崎
大学研究室のメンバー。
7 総評
探偵倶楽部の2人が鮮やかに淡々と調査を進め、物語の中にしゃしゃり出てこないところが特徴。
これにより、探偵ではなく各事件の登場人物を主人公として物語が進み、分かりやすい構成、展開となっています。
短編集なので1つ1つのエピソードの印象そのものが薄くなってしまうことは仕方がありませんが、どのストーリーも謎解きそのものよりも、その裏にある真相、どんでん返しが楽しめます。
こういう作品であると、探偵倶楽部の調査員にピンチが訪れたり、探偵倶楽部の正体に迫ったりするパターンもよく見受けられますが、この作品に限ってはそのようなこともなく、探偵倶楽部はあくまでも淡々と依頼された調査をこなすだけ、というところも面白いところです。
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まとめ
『探偵倶楽部』7つのポイント
1 淡々と確実に調査を進める探偵倶楽部
2 探偵倶楽部が物語にしゃしゃり出ない
3 各ストーリーの分かりやすい構成
4 各ストーリーの謎解き
5 各ストーリーで探偵倶楽部が出す結論
6 事件の裏にある真相
7 どんでん返し
東野圭吾『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』
〜『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント〜
『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』は、東野圭吾13作目の作品。
産業機器メーカーで働く主人公が、己の出世と保身のために悪事に手を染めようとする話です。
自身の過去の経験から、人間よりも機械のほうが信頼できる主人公は、同情すべき余地もあるのでしょうか。
登場人物が軒並み悪人。
こういう話も読みごたえがあるのかもしれません。
産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。
将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。
そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ・・・。
大阪→名古屋→東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした!
傑作長編推理!
さあ、『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』について語りましょう。
1 あらすじ
中堅産業機器メーカーに勤める末永拓也。
上昇志向が強く、これまでも数々の実績を積み重ねてきました。
上層部に取り入ろうと、オーナーの末娘の婿養子になることを目論みますが、関係を持った女性・康子から妊娠を告げられます。
康子は堕胎するつもりは毛頭ありません。
野望を達成する前にこのトラブルをどのように解決しようか考えていた矢先、拓也は専務の息子・直樹から呼び出しを受けます。
そこには同僚の橋本の姿も。
直樹も橋本も康子と関係を持っており、誰が康子の子の父親かが分かりません。
それぞれにとって康子の妊娠は不都合であるため、共同で康子を殺害する完全犯罪計画を練りますが・・・。
計画を実行に移すと、思いがけない出来事が起こります。
2 登場人物
末永拓也
産業機器メーカー「MM重工」勤務。
人工知能ロボットの研究開発を行う。
自身が手掛けたロボット『ブルータス』を愛する。
雨宮康子の殺害計画に参画する。
雨宮康子
「MM重工」役員室勤務。
拓也と関係を持つが、相手は拓也だけではなかった。
拓也に妊娠を告げ、堕胎しないと宣言する。
仁科直樹
拓也の上司。「MM重工」開発企画室長で専務の息子。
雨宮康子殺害計画の発案者。
橋本敦司
「MM重工」勤務。極限ロボットの開発に従事。
雨宮康子殺害計画に参加。
仁科敏樹
「MM重工」専務。直樹の父。
仁科星子
仁科敏樹の次女。
仁科沙織
仁科敏樹の長女。
宗方伸一
仁科沙織の夫。「MM重工」航空機事業部研究主任。
中森弓絵
「MM重工」開発企画室勤務。
酒井悟郎
「MM重工」作業員。中森弓絵の幼馴染。
高島勇二
「MM重工」に勤務していた作業員。
1年前に作業中の事故で命を落とす。
佐山総一
警視庁捜査一課刑事。
3 殺害計画
雨宮康子から妊娠を告げられ堕胎しないことを宣言されたのは拓也だけではありませんでした。
開発企画室長の仁科直樹と、拓也の同僚・橋本敦司も同様に康子から責任を取るよう迫られていたのです。
しかし康子の子供の父親は誰か分かりません。
直樹は康子から莫大な養育費を要求され社内での立場が危うくなることを危惧しています。
橋本はこれまでの順風満帆な出世街道が危ぶまれることを恐れています。
そして拓也にとっては星子との結婚の大きな障害になります。
3人の思惑が一致し、共同で康子を殺害することを計画します。
大阪、名古屋、東京に別れ、大阪で康子を殺害し死体を名古屋まで運び、名古屋から東京に運び死体を処理する、という殺人リレー計画です。
詳細まで計画を練り、ついに康子殺害の実行日。
名古屋担当になった拓也は、待ち合わせ場所に駐車されていた車で東京に向かい、東京担当の橋本に死体を引き渡します。
しかし現れた死体は康子のものではありませんでした。
4 第二の被害者
第一の事件が起こってから数日後、第二の事件が起こります。
当初は自殺と思われたのですが、警察の捜査中にトリックを使った殺人だということが判明します。
犯人はいったいどのような方法でこの事件を起こしたのでしょうか。
そして犯人は一体誰なのでしょうか。
拓也は迫りくる恐怖に対しどのように立ち向かうのでしょうか。
5 末永拓也
決して恵まれた人生を送ってこなかった末永拓也。
幼い時に母を亡くし、左官職人だった父は酒に溺れ、拓也にも暴力を振るっていました。
少年時代に父を憎み軽蔑した拓也は、あらゆる欲望を抑え、自力で東京の大学に合格します。
大学入学後も人一倍の努力を重ね、大学院で「MM重工」との共同開発に携わります。
以降、「MM重工」に入社し、順風満帆に実績を重ねていく拓也。
自分は選ばれた人間である、自分は人を支配する最上層の人間になる、という野望を持ち、星子の婿養子になるために尽力します。
拓也は人を信じていません。
信じられるのは自身が手掛けたロボットのみ。
このような屈折した性格も、拓也の生い立ちが大いに関係しているのではないでしょうか。
6 事件の真相
雨宮康子殺害計画は拓也の全く予想していない展開となりました。
そして第二の事件が起こります。
計画の発案者である直樹に、何か拓也たちに知らせていない思惑があるのではないか、そう考えた拓也は、警察に疑われながらも独自に捜査を行います。
そして導き出された結論は・・・。
事件の真相、そして真犯人は意外な人物でした。
7 総評
利害関係の一致する3人が結託しての殺人計画。
そしていざ実行してみると計画とは異なる人物の死体が現れます。
設定としては大変面白いのですが、どこか全体的に中だるみ感があったような気がします。
それは、ひょっとしたらどの登場人物にも感情移入できなかったからなのかもしれません。
謎解き自体は引き込まれるのですが、拓也というキャラクターに同調できないところがあります。
主要登場人物にろくでもない人物が多いのも理由なのかもしれません。
そして最後の結末。
残り数ページの追い込み感がすごかったのですが、この結末には賛否両論分かれるかもしれません。
結局、この作品の登場人物で救われたのは誰なのでしょうか。
まとめ
『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント
1 3人で共謀して殺人リレーを行うという設定の面白さ
2 運ばれていた死体は意外な人物のものだった
3 続いて起こる第二の事件
4 末永拓也のキャラクター
5 主要登場人物にろくな人物がいない
6 物語の結末は?
7 この作品で救われたのは誰か
『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』は、東野圭吾13作目の作品。
産業機器メーカーで働く主人公が、己の出世と保身のために悪事に手を染めようとする話です。
自身の過去の経験から、人間よりも機械のほうが信頼できる主人公は、同情すべき余地もあるのでしょうか。
登場人物が軒並み悪人。
こういう話も読みごたえがあるのかもしれません。
産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。
将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。
そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ・・・。
大阪→名古屋→東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした!
傑作長編推理!
さあ、『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』について語りましょう。
ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー (光文社文庫) [ 東野圭吾 ] 価格:616円 |
1 あらすじ
中堅産業機器メーカーに勤める末永拓也。
上昇志向が強く、これまでも数々の実績を積み重ねてきました。
上層部に取り入ろうと、オーナーの末娘の婿養子になることを目論みますが、関係を持った女性・康子から妊娠を告げられます。
康子は堕胎するつもりは毛頭ありません。
野望を達成する前にこのトラブルをどのように解決しようか考えていた矢先、拓也は専務の息子・直樹から呼び出しを受けます。
そこには同僚の橋本の姿も。
直樹も橋本も康子と関係を持っており、誰が康子の子の父親かが分かりません。
それぞれにとって康子の妊娠は不都合であるため、共同で康子を殺害する完全犯罪計画を練りますが・・・。
計画を実行に移すと、思いがけない出来事が起こります。
2 登場人物
末永拓也
産業機器メーカー「MM重工」勤務。
人工知能ロボットの研究開発を行う。
自身が手掛けたロボット『ブルータス』を愛する。
雨宮康子の殺害計画に参画する。
雨宮康子
「MM重工」役員室勤務。
拓也と関係を持つが、相手は拓也だけではなかった。
拓也に妊娠を告げ、堕胎しないと宣言する。
仁科直樹
拓也の上司。「MM重工」開発企画室長で専務の息子。
雨宮康子殺害計画の発案者。
橋本敦司
「MM重工」勤務。極限ロボットの開発に従事。
雨宮康子殺害計画に参加。
仁科敏樹
「MM重工」専務。直樹の父。
仁科星子
仁科敏樹の次女。
仁科沙織
仁科敏樹の長女。
宗方伸一
仁科沙織の夫。「MM重工」航空機事業部研究主任。
中森弓絵
「MM重工」開発企画室勤務。
酒井悟郎
「MM重工」作業員。中森弓絵の幼馴染。
高島勇二
「MM重工」に勤務していた作業員。
1年前に作業中の事故で命を落とす。
佐山総一
警視庁捜査一課刑事。
原作:東野圭吾 3作品 DVD-BOX 「11文字の殺人」「ブルータスの心臓」「回廊亭殺人事件」[新品] 価格:10,460円 |
3 殺害計画
雨宮康子から妊娠を告げられ堕胎しないことを宣言されたのは拓也だけではありませんでした。
開発企画室長の仁科直樹と、拓也の同僚・橋本敦司も同様に康子から責任を取るよう迫られていたのです。
しかし康子の子供の父親は誰か分かりません。
直樹は康子から莫大な養育費を要求され社内での立場が危うくなることを危惧しています。
橋本はこれまでの順風満帆な出世街道が危ぶまれることを恐れています。
そして拓也にとっては星子との結婚の大きな障害になります。
3人の思惑が一致し、共同で康子を殺害することを計画します。
大阪、名古屋、東京に別れ、大阪で康子を殺害し死体を名古屋まで運び、名古屋から東京に運び死体を処理する、という殺人リレー計画です。
詳細まで計画を練り、ついに康子殺害の実行日。
名古屋担当になった拓也は、待ち合わせ場所に駐車されていた車で東京に向かい、東京担当の橋本に死体を引き渡します。
しかし現れた死体は康子のものではありませんでした。
4 第二の被害者
第一の事件が起こってから数日後、第二の事件が起こります。
当初は自殺と思われたのですが、警察の捜査中にトリックを使った殺人だということが判明します。
犯人はいったいどのような方法でこの事件を起こしたのでしょうか。
そして犯人は一体誰なのでしょうか。
拓也は迫りくる恐怖に対しどのように立ち向かうのでしょうか。
5 末永拓也
決して恵まれた人生を送ってこなかった末永拓也。
幼い時に母を亡くし、左官職人だった父は酒に溺れ、拓也にも暴力を振るっていました。
少年時代に父を憎み軽蔑した拓也は、あらゆる欲望を抑え、自力で東京の大学に合格します。
大学入学後も人一倍の努力を重ね、大学院で「MM重工」との共同開発に携わります。
以降、「MM重工」に入社し、順風満帆に実績を重ねていく拓也。
自分は選ばれた人間である、自分は人を支配する最上層の人間になる、という野望を持ち、星子の婿養子になるために尽力します。
拓也は人を信じていません。
信じられるのは自身が手掛けたロボットのみ。
このような屈折した性格も、拓也の生い立ちが大いに関係しているのではないでしょうか。
6 事件の真相
雨宮康子殺害計画は拓也の全く予想していない展開となりました。
そして第二の事件が起こります。
計画の発案者である直樹に、何か拓也たちに知らせていない思惑があるのではないか、そう考えた拓也は、警察に疑われながらも独自に捜査を行います。
そして導き出された結論は・・・。
事件の真相、そして真犯人は意外な人物でした。
7 総評
利害関係の一致する3人が結託しての殺人計画。
そしていざ実行してみると計画とは異なる人物の死体が現れます。
設定としては大変面白いのですが、どこか全体的に中だるみ感があったような気がします。
それは、ひょっとしたらどの登場人物にも感情移入できなかったからなのかもしれません。
謎解き自体は引き込まれるのですが、拓也というキャラクターに同調できないところがあります。
主要登場人物にろくでもない人物が多いのも理由なのかもしれません。
そして最後の結末。
残り数ページの追い込み感がすごかったのですが、この結末には賛否両論分かれるかもしれません。
結局、この作品の登場人物で救われたのは誰なのでしょうか。
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まとめ
『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント
1 3人で共謀して殺人リレーを行うという設定の面白さ
2 運ばれていた死体は意外な人物のものだった
3 続いて起こる第二の事件
4 末永拓也のキャラクター
5 主要登場人物にろくな人物がいない
6 物語の結末は?
7 この作品で救われたのは誰か
原作:東野圭吾 3作品 DVD-BOX 「11文字の殺人」「ブルータスの心臓」「回廊亭殺人事件」 新品価格 |
東野圭吾『殺人現場は雲の上』
〜『殺人現場は雲の上』7つのポイント〜
『殺人現場は雲の上』は、東野圭吾12作目の作品。
新日本航空のスチュワーデス、通称エー子とビー子の凸凹コンビが遭遇する7つの事件簿。
テンポもよく気軽にサクサク読める楽しい作品です。
登場人物
早瀬英子(通称エー子)
東大中退。容姿端麗で頭脳明晰。入社試験と訓練学校の成績は首席。
藤真美子(通称ビー子)
三流短大卒。肥満体質で失敗が多い。入社試験と訓練学校の成績はギリギリ通過。
新日本航空の花のスチュワーデス、通称エー子とビー子。
同期入社でルームメイトという誰もが知る仲良しコンビ。
容姿と性格にはかなり差がある凸凹コンビではあるけれど・・・。
この二人が奇妙な事件に遭遇する。
昼間、乗務中にお世話した男の妻が、自動ロックのホテルの室内で殺害されたのだ!
雲をつかむような難事件の謎に挑む二人の推理はいかに?
さあ、『殺人現場は雲の上』について語りましょう。
1 ステイの夜は殺人の夜
エー子とビー子が鹿児島へのフライトの際の行きつけのスナック『ワイキキ』でパイロットたちと飲んでいたときに現れた1人の男性。
彼は、機内で腹痛を訴えエー子とビー子が世話をした大学の助教授・本間でした。
エー子たちと同じホテルに宿泊している本間は、エー子たちと一緒に酒を飲みます。
散開し部屋に戻りますが、本間の妻の他殺死体を発見します。
本間も容疑者に挙げられましたが、殺害時刻には本間はエー子たちと酒を飲んでいました。
2 忘れ物に御注意ください
某旅行社が考え出した、乳児お持ちの若い夫婦を対象とした旅行パック「ベビー・ツアー」。
エー子とビー子もその飛行機に乗務します。
25組の夫婦が参加したこのツアーでしたが、乗客全員が降りた後の機内に、とんでもない忘れ物がありました。
赤ん坊です。
しかしすべてのツアー客がみな赤ん坊を抱いていました。
いったい誰が赤ん坊を忘れたのでしょうか。
事態を整理し真相を探るエー子と、赤ん坊に懐かれるビー子。
3 お見合いシートのシンデレラ
スチュワーデスが離着陸時に座るアテンダントシートは、お客様と向かい合って座ることになるので、お見合いシートとも呼ばれています。
あるとき、お見合いシートに座っていたビー子がとある男性に見初められます。
その男性はビー子の好みのタイプ。
彼からデートに誘われたビー子は、その男性が資産20億を持つ資産家であることを知り、初めてのデートでいきなりプロポーズされます。
そして、ビー子はエー子とともに彼の親戚へのお披露目会に参加します。
4 旅は道連れミステリアス
福岡にある和菓子屋の店主が、エー子とビー子が乗務する東京行の便に搭乗していました。
エー子もビー子もこの店主とは顔見知り。
しかし何だかおかしな様子です。
その店主が、東京のホテルで死体となって発見されます。
そしてその横には女性の死体も。
その女性にこのホテルを紹介したのはビー子でした。
5 とても大事な落とし物
エー子は乗務する機内の化粧室でとんでもない落とし物を発見します。
それは、署名のない遺書でした。
その落とし主は間違いなく乗客27人の中にいます。
化粧室を使ったのは、OL風の女性、サラリーマンぽい人、中学生くらいの女の子、禿げ頭のおじさん、中年のおばさん、白髪のおばあさん。
何とか落とし主を6人に絞ったエー子とビー子は、自殺を思いとどめさせようと奔走します。
6 マボロシの乗客
羽田空港内の客室乗務員室に脅迫電話が入りました。
脅迫者は、「昨日人を殺した。金を出さなければ新日本航空の乗客を次々と殺す」と言っています。
そして空港の駐車場で血の付いた女性用バッグが見つかりました。
そのバッグの中には新日本航空の搭乗券も入っていましたが、その搭乗券の飛行機に乗っていた乗客の中には、このバッグの持ち主はいません。
しばらくして、その飛行機の乗客で、このバッグの持ち主の女性を見たという男が現れます。
7 狙われたエー子
盛岡のホテルで起きた殺人事件の容疑者として、エー子の元恋人が挙げられます。
そしてエー子は何者かに車ではねられそうになるります。
エー子には襲われる心当たりはありませんが、ひょっとしたら元恋人がアリバイを守るためにエー子を襲ったのではないかという疑惑が出てきます。
元恋人から会いたいと言われたエー子は、単身彼に会いに行きますが・・・。
まとめ
『殺人現場は雲の上』7つのポイント
1 成績優秀、才色兼備のエー子
2 落ちこぼれで問題児のビー子
3 エー子とビー子の凸凹コンビの活躍
4 登場人物たちの軽快なやり取り
5 気軽にサクサク読めるテンポ
6 1つ1つのエピソードの面白さ
7 リラックスして読むのにぴったりの楽しい作品
『殺人現場は雲の上』は、東野圭吾12作目の作品。
新日本航空のスチュワーデス、通称エー子とビー子の凸凹コンビが遭遇する7つの事件簿。
テンポもよく気軽にサクサク読める楽しい作品です。
登場人物
早瀬英子(通称エー子)
東大中退。容姿端麗で頭脳明晰。入社試験と訓練学校の成績は首席。
藤真美子(通称ビー子)
三流短大卒。肥満体質で失敗が多い。入社試験と訓練学校の成績はギリギリ通過。
新日本航空の花のスチュワーデス、通称エー子とビー子。
同期入社でルームメイトという誰もが知る仲良しコンビ。
容姿と性格にはかなり差がある凸凹コンビではあるけれど・・・。
この二人が奇妙な事件に遭遇する。
昼間、乗務中にお世話した男の妻が、自動ロックのホテルの室内で殺害されたのだ!
雲をつかむような難事件の謎に挑む二人の推理はいかに?
さあ、『殺人現場は雲の上』について語りましょう。
価格:473円 |
1 ステイの夜は殺人の夜
エー子とビー子が鹿児島へのフライトの際の行きつけのスナック『ワイキキ』でパイロットたちと飲んでいたときに現れた1人の男性。
彼は、機内で腹痛を訴えエー子とビー子が世話をした大学の助教授・本間でした。
エー子たちと同じホテルに宿泊している本間は、エー子たちと一緒に酒を飲みます。
散開し部屋に戻りますが、本間の妻の他殺死体を発見します。
本間も容疑者に挙げられましたが、殺害時刻には本間はエー子たちと酒を飲んでいました。
2 忘れ物に御注意ください
某旅行社が考え出した、乳児お持ちの若い夫婦を対象とした旅行パック「ベビー・ツアー」。
エー子とビー子もその飛行機に乗務します。
25組の夫婦が参加したこのツアーでしたが、乗客全員が降りた後の機内に、とんでもない忘れ物がありました。
赤ん坊です。
しかしすべてのツアー客がみな赤ん坊を抱いていました。
いったい誰が赤ん坊を忘れたのでしょうか。
事態を整理し真相を探るエー子と、赤ん坊に懐かれるビー子。
殺人現場は雲の上 スチュワ-デス名探偵の事件簿 (サスペリアミステリ-コミックス) [ 浦川まさる ] 価格:555円 |
3 お見合いシートのシンデレラ
スチュワーデスが離着陸時に座るアテンダントシートは、お客様と向かい合って座ることになるので、お見合いシートとも呼ばれています。
あるとき、お見合いシートに座っていたビー子がとある男性に見初められます。
その男性はビー子の好みのタイプ。
彼からデートに誘われたビー子は、その男性が資産20億を持つ資産家であることを知り、初めてのデートでいきなりプロポーズされます。
そして、ビー子はエー子とともに彼の親戚へのお披露目会に参加します。
4 旅は道連れミステリアス
福岡にある和菓子屋の店主が、エー子とビー子が乗務する東京行の便に搭乗していました。
エー子もビー子もこの店主とは顔見知り。
しかし何だかおかしな様子です。
その店主が、東京のホテルで死体となって発見されます。
そしてその横には女性の死体も。
その女性にこのホテルを紹介したのはビー子でした。
5 とても大事な落とし物
エー子は乗務する機内の化粧室でとんでもない落とし物を発見します。
それは、署名のない遺書でした。
その落とし主は間違いなく乗客27人の中にいます。
化粧室を使ったのは、OL風の女性、サラリーマンぽい人、中学生くらいの女の子、禿げ頭のおじさん、中年のおばさん、白髪のおばあさん。
何とか落とし主を6人に絞ったエー子とビー子は、自殺を思いとどめさせようと奔走します。
6 マボロシの乗客
羽田空港内の客室乗務員室に脅迫電話が入りました。
脅迫者は、「昨日人を殺した。金を出さなければ新日本航空の乗客を次々と殺す」と言っています。
そして空港の駐車場で血の付いた女性用バッグが見つかりました。
そのバッグの中には新日本航空の搭乗券も入っていましたが、その搭乗券の飛行機に乗っていた乗客の中には、このバッグの持ち主はいません。
しばらくして、その飛行機の乗客で、このバッグの持ち主の女性を見たという男が現れます。
7 狙われたエー子
盛岡のホテルで起きた殺人事件の容疑者として、エー子の元恋人が挙げられます。
そしてエー子は何者かに車ではねられそうになるります。
エー子には襲われる心当たりはありませんが、ひょっとしたら元恋人がアリバイを守るためにエー子を襲ったのではないかという疑惑が出てきます。
元恋人から会いたいと言われたエー子は、単身彼に会いに行きますが・・・。
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まとめ
『殺人現場は雲の上』7つのポイント
1 成績優秀、才色兼備のエー子
2 落ちこぼれで問題児のビー子
3 エー子とビー子の凸凹コンビの活躍
4 登場人物たちの軽快なやり取り
5 気軽にサクサク読めるテンポ
6 1つ1つのエピソードの面白さ
7 リラックスして読むのにぴったりの楽しい作品
東野圭吾『鳥人計画』
〜『鳥人計画』7つのポイント〜
『鳥人計画』は、東野圭吾11作目の作品。
スキージャンプを題材とした作品で、天才ジャンパーが殺された謎に迫ります。
しかし物語の早いうちから犯人が判明。
そのきっかけは犯人と警察に送られた密告状。
警察は犯人が事件を起こした動機と方法を、犯人は密告状を送った人物が誰かを追及します。
「鳥人」として名を馳せ、日本ジャンプ界を担うエース・楡井が毒殺された。
捜査が難航する中、警察に届いた一通の手紙。
それは楡井のコーチ・峰岸が犯人であることを告げる「密告状」だった。
警察に逮捕された峰岸は、留置場の中で推理する。
「計画は完璧だった。
警察は完全に欺いたつもりだったのに。
俺を密告したのは誰なんだ?」
警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき「計画」の存在が浮かび上がる・・・。
精緻極まる伏線、二転三転する物語。
犯人が「密告者=探偵」を推理する、東野ミステリの傑作。
さあ、『鳥人計画』について語りましょう。
1 あらすじ
和製ニッカネンの異名を持つ天才ジャンパー・楡井明が毒殺されました。
日本ジャンプ界の宝が毒殺された事件の捜査は難航します。
事件の犯人は楡井のコーチ・峰岸。
容疑者からは最も遠い位置におり、また峰岸自身もトリックには絶対の自信を持っていました。
しかし峰岸の元に届く一通の手紙。
そこには『楡井明を殺したのはあなただ 自首しなさい』と書かれていました。
誰が何故どのようにして峰岸の計画を知ったのでしょうか。
そして警察にも、楡井を殺したのは峰岸であると密告状が届きます。
峰岸が施した、楡井殺害のトリックとは?
何故峰岸は楡井を殺害したのでしょうか。
密告状を送った人物の正体とは?
2 登場人物
峰岸貞男
原工業所属のスキージャンプのコーチ。
自身もかつてはジャンプの選手だった。
楡井を殺害する。
楡井明
和製ニッカネンの異名を持つ天才スキージャンパー。
杉江夕子
楡井明の恋人。
三好靖之
全日本チームの総監督。
杉江泰介
日星自動車スキー部監督。
杉江夕子、杉江翔の父。
杉江翔
日星自動車スキー部に所属する選手。
片岡正明
日星自動車スキー部のトレーナー。
沢村亮太
氷室興産スキー部のジャンパー。
日野幸博
氷室興産スキー部のジャンパー。
有吉幸広
北東大学助教授。
ジャンプのメカニズムを研究し氷室興産スキー部に協力している。
深町和雄
日星自動車に勤務する元ジャンパー。
島野悟郎
故人。日星自動車スキー部に所属していた。
佐久間公一
札幌西警察署刑事課捜査一係刑事。
須川
北海道警察捜査一課刑事。佐久間とペアを組む。
3 楡井明
生きている楡井が登場するのは冒頭のわずかの部分でしかありません。
しかしこの作品で最も存在感を出しているのは他の誰よりもこの楡井です。
天真爛漫で陽気すぎるくらい陽気。
独特の感性を持ち、周囲の人は楡井が何をしたくて何を言いたいのか分からないこともしばしば。
しかしジャンプの才能は他の誰も寄せ付けません。
他の選手が緊張して萎縮する中、楡井だけはいつもと変わらずリラックス。
多くのジャンパーからのプレッシャーにも全く動じません。
圧倒的な才能の前では努力は太刀打ちできない、そう思わせるのに十分な才能の持ち主で、事実数々の好成績を積み重ねます。
コーチである峰岸は何故楡井を殺害したのでしょうか。
そこが大きな謎の1つです。
4 峰岸貞男
早い段階から峰岸は楡井の殺害を決意していました。
物語中盤前に峰岸が犯人であることが明らかになりますが、大きな謎が3つあります。
1つは、何故峰岸は楡井を殺害したのか。
1つは、どのように峰岸は楡井を殺害したのか。
そしてもう1つは、一体誰がいつどのようにして峰岸の犯行を知ったのか。
峰岸は自身の犯行に絶対的な自信を持っていました。
一体どこで破綻してしまったのか、留置場の中で峰岸は懸命に考えます。
かつてスキージャンプの選手だった峰岸が楡井に抱いていた感情とは。
楡井殺害の裏には、恐るべき計画がありました。
5 日星自動車の謎
楡井の圧倒的な成績により、他の日本人選手は目立った成績を残すことができていません。
そのような中、日星自動車のジャンパー・杉江翔だけは着実に、そして大幅に成績をアップさせていました。
しかしその表情は冴えず、そして不自然なほど肉体も変化していました。
日星自動車の監督は、自身もかつてはジャンプの選手で優秀な成績を収めた杉江泰介。
杉江翔の成績アップの裏に隠された秘密とは?
そしてそのことは楡井の殺害と何か関係があるのでしょうか。
6 密告者の正体
峰岸の元に届いた、峰岸が楡井殺害の犯人であることを指摘し自首を勧める手紙。
そして警察に届いた、峰岸が楡井殺害の犯人であることを綴った告発文。
この2つの文書の登場で、事件は急展開します。
警察に逮捕された後も、峰岸は殺害動機や殺害方法については全く口を割りません。
警察は地道に捜査を続け、事件の謎に迫っていきます。
一体誰がどのように峰岸の犯行を知り、勧告文や告発文を書いたのでしょうか。
犯人、そして警察が、探偵役を捜すという新しく面白い試みです。
7 事件の真相
物語は峰岸と警察の捜査を主な視点として書かれています。
峰岸は、自身の犯行のどこに穴があり、それを暴き告発したのは誰かということを推理します。
警察は峰岸が楡井を殺害した動機と方法を捜査します。
そして、日星自動車がひた隠しにする秘密とは一体何か、そこも事件解決にとって重要な要素であり読者の興味を引きます。
スキージャンプのメカニズムの説明などに多くの量が割かれているため、読者によっては流し読みしてしまうかもしれません。
しかしその部分さえ我慢できれば、物語としては多くの謎解き要素を持ち、真相に迫るべく読み進めていくことができる作品です。
終盤、少し期待外れ、拍子抜けの感が出る部分もありますが、本当に大切なのはその先の展開。
事件の裏に隠された恐るべき謎と、人間が人間たるための哀しい真相が明らかになります。
物語は意外で驚愕の結末を迎えるので、最後まで目を離してはいけません。
まとめ
『鳥人計画』7つのポイント
1 スキージャンプを題材にした作品
2 楡井明という強烈な個性
3 峰岸が楡井を殺害した動機は?
4 峰岸が楡井を殺害した方法は?
5 峰岸が犯人であると告発したのは誰?
6 日星自動車が持つ謎とは?
7 事件の真相、驚愕の結末
『鳥人計画』は、東野圭吾11作目の作品。
スキージャンプを題材とした作品で、天才ジャンパーが殺された謎に迫ります。
しかし物語の早いうちから犯人が判明。
そのきっかけは犯人と警察に送られた密告状。
警察は犯人が事件を起こした動機と方法を、犯人は密告状を送った人物が誰かを追及します。
「鳥人」として名を馳せ、日本ジャンプ界を担うエース・楡井が毒殺された。
捜査が難航する中、警察に届いた一通の手紙。
それは楡井のコーチ・峰岸が犯人であることを告げる「密告状」だった。
警察に逮捕された峰岸は、留置場の中で推理する。
「計画は完璧だった。
警察は完全に欺いたつもりだったのに。
俺を密告したのは誰なんだ?」
警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき「計画」の存在が浮かび上がる・・・。
精緻極まる伏線、二転三転する物語。
犯人が「密告者=探偵」を推理する、東野ミステリの傑作。
さあ、『鳥人計画』について語りましょう。
価格:604円 |
1 あらすじ
和製ニッカネンの異名を持つ天才ジャンパー・楡井明が毒殺されました。
日本ジャンプ界の宝が毒殺された事件の捜査は難航します。
事件の犯人は楡井のコーチ・峰岸。
容疑者からは最も遠い位置におり、また峰岸自身もトリックには絶対の自信を持っていました。
しかし峰岸の元に届く一通の手紙。
そこには『楡井明を殺したのはあなただ 自首しなさい』と書かれていました。
誰が何故どのようにして峰岸の計画を知ったのでしょうか。
そして警察にも、楡井を殺したのは峰岸であると密告状が届きます。
峰岸が施した、楡井殺害のトリックとは?
何故峰岸は楡井を殺害したのでしょうか。
密告状を送った人物の正体とは?
2 登場人物
峰岸貞男
原工業所属のスキージャンプのコーチ。
自身もかつてはジャンプの選手だった。
楡井を殺害する。
楡井明
和製ニッカネンの異名を持つ天才スキージャンパー。
杉江夕子
楡井明の恋人。
三好靖之
全日本チームの総監督。
杉江泰介
日星自動車スキー部監督。
杉江夕子、杉江翔の父。
杉江翔
日星自動車スキー部に所属する選手。
片岡正明
日星自動車スキー部のトレーナー。
沢村亮太
氷室興産スキー部のジャンパー。
日野幸博
氷室興産スキー部のジャンパー。
有吉幸広
北東大学助教授。
ジャンプのメカニズムを研究し氷室興産スキー部に協力している。
深町和雄
日星自動車に勤務する元ジャンパー。
島野悟郎
故人。日星自動車スキー部に所属していた。
佐久間公一
札幌西警察署刑事課捜査一係刑事。
須川
北海道警察捜査一課刑事。佐久間とペアを組む。
3 楡井明
生きている楡井が登場するのは冒頭のわずかの部分でしかありません。
しかしこの作品で最も存在感を出しているのは他の誰よりもこの楡井です。
天真爛漫で陽気すぎるくらい陽気。
独特の感性を持ち、周囲の人は楡井が何をしたくて何を言いたいのか分からないこともしばしば。
しかしジャンプの才能は他の誰も寄せ付けません。
他の選手が緊張して萎縮する中、楡井だけはいつもと変わらずリラックス。
多くのジャンパーからのプレッシャーにも全く動じません。
圧倒的な才能の前では努力は太刀打ちできない、そう思わせるのに十分な才能の持ち主で、事実数々の好成績を積み重ねます。
コーチである峰岸は何故楡井を殺害したのでしょうか。
そこが大きな謎の1つです。
4 峰岸貞男
早い段階から峰岸は楡井の殺害を決意していました。
物語中盤前に峰岸が犯人であることが明らかになりますが、大きな謎が3つあります。
1つは、何故峰岸は楡井を殺害したのか。
1つは、どのように峰岸は楡井を殺害したのか。
そしてもう1つは、一体誰がいつどのようにして峰岸の犯行を知ったのか。
峰岸は自身の犯行に絶対的な自信を持っていました。
一体どこで破綻してしまったのか、留置場の中で峰岸は懸命に考えます。
かつてスキージャンプの選手だった峰岸が楡井に抱いていた感情とは。
楡井殺害の裏には、恐るべき計画がありました。
5 日星自動車の謎
楡井の圧倒的な成績により、他の日本人選手は目立った成績を残すことができていません。
そのような中、日星自動車のジャンパー・杉江翔だけは着実に、そして大幅に成績をアップさせていました。
しかしその表情は冴えず、そして不自然なほど肉体も変化していました。
日星自動車の監督は、自身もかつてはジャンプの選手で優秀な成績を収めた杉江泰介。
杉江翔の成績アップの裏に隠された秘密とは?
そしてそのことは楡井の殺害と何か関係があるのでしょうか。
6 密告者の正体
峰岸の元に届いた、峰岸が楡井殺害の犯人であることを指摘し自首を勧める手紙。
そして警察に届いた、峰岸が楡井殺害の犯人であることを綴った告発文。
この2つの文書の登場で、事件は急展開します。
警察に逮捕された後も、峰岸は殺害動機や殺害方法については全く口を割りません。
警察は地道に捜査を続け、事件の謎に迫っていきます。
一体誰がどのように峰岸の犯行を知り、勧告文や告発文を書いたのでしょうか。
犯人、そして警察が、探偵役を捜すという新しく面白い試みです。
7 事件の真相
物語は峰岸と警察の捜査を主な視点として書かれています。
峰岸は、自身の犯行のどこに穴があり、それを暴き告発したのは誰かということを推理します。
警察は峰岸が楡井を殺害した動機と方法を捜査します。
そして、日星自動車がひた隠しにする秘密とは一体何か、そこも事件解決にとって重要な要素であり読者の興味を引きます。
スキージャンプのメカニズムの説明などに多くの量が割かれているため、読者によっては流し読みしてしまうかもしれません。
しかしその部分さえ我慢できれば、物語としては多くの謎解き要素を持ち、真相に迫るべく読み進めていくことができる作品です。
終盤、少し期待外れ、拍子抜けの感が出る部分もありますが、本当に大切なのはその先の展開。
事件の裏に隠された恐るべき謎と、人間が人間たるための哀しい真相が明らかになります。
物語は意外で驚愕の結末を迎えるので、最後まで目を離してはいけません。
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まとめ
『鳥人計画』7つのポイント
1 スキージャンプを題材にした作品
2 楡井明という強烈な個性
3 峰岸が楡井を殺害した動機は?
4 峰岸が楡井を殺害した方法は?
5 峰岸が犯人であると告発したのは誰?
6 日星自動車が持つ謎とは?
7 事件の真相、驚愕の結末