2019年03月11日
GMOコインに聞く、仮想通貨の課題と現状、そして「ステーブルコイン」へ
■事業開始からまもなく2年に
――GMOコインは仮想通貨ビジネスの中でも、どの領域を担っているのでしょうか。
小谷: GMOコインは、日本国内に居住しているお客様に対して、仮想通貨の販売所サービス、証拠金取引サービス、取引所サービスを提供しています。販売所サービスは仮想通貨の現物取引で、顧客の資産分だけ仮想通貨が取引できるというものです。仮想通貨の証拠金取引サービスは、為替FXの仮想通貨のようなサービスです。こちらは顧客の資産にレバレッジをかけることによって、少し大きな取引が可能になります。取引所サービスは、株式取引のように板を見ながら取引ができるサービスになります。
GMOコイン 取締役 経営管理部長 小谷紘右(こたに こうすけ)氏
1984年生まれ、東北大学理学部を卒業後、2007年日本生命相互会社に入社。2012年GMOクリック証券
に入社し、経営企画部・財務部にて、中期経営計画・予算の策定、業績管理、資金調達、新規事業管理
などを担当。2016年に野村證券株式会社に入社。2017年GMO-Z.comコイン株式会社
(現GMOコイン株式会社)に入社し、経営管理部長として、経営計画・予算の策定、業績管理、
人事、総務などを担当。2018年3月より、同社の経営管理担当取締役を務める。
我々が本格的に営業をスタートしたのは、2017年5月末日からで、もう少しで2年になります。現状23〜24万ほどのお客様に口座開設していただいています。2017年12月〜2018年1月にかけて仮想通貨の価格が上下した際、特にお客様の申し込みが多かったですが、価格が落ち着いている現在も毎月1万件ほどの申し込みがありますので、引き続き潜在的なニーズはあるかなと思います。
――立ち上げから約2年の間にこの領域ではさまざまな動きがありましたが、社内ではどのような変化があったのでしょうか。
小谷: 2018年10月、日本仮想通貨交換業協会が認定資金決済事業者協会として金融庁より認定を受け、自主規制規則も施行され、レギュレーションが明確になった部分はありますので、そうした部分の対応を日々行っています。
2016年設立の我々は後発組です。取り扱っているのは5銘柄と、他社に比べるとまだまだ少ないので、サービス面において引けを取らないようにやっていきたいと考えています。また、取引においては手数料が大きなファクターを占めてくるので、仮想通貨の取引もよりリーズナブルなものにしていきたいと考えていますし、これはGMOフィナンシャルグループの企業理念でもあります。
――現在、取り扱っている5つの銘柄は?
小谷: 我々が取り扱っているのは、ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、リップルで、それぞれ違う部分もあれば似通っている部分もあります。
ビットコインと、ビットコインキャッシュはもともと、ビットコインがハードフォークして2つに分かれたものなので、かなり似ていますし、ライトコインも共通点がありますね。イーサリアムは少し違っていて、「スマートコントラクト」、つまり、取引契約を人の手を介さずに自動化してスムーズに行う技術を利用しています。ビットコインなどは「ディセントラライズド(decentralized)=非集権化」という形で、中央銀行のような存在がいないというところが特長です。一方、リップルはそれだけではなく、中心に運営者がいて、いろいろなサービスを提供することができます。
また、ビットコインは1ビットコイン=40万円ほどですが、リップルは1リップル=30〜40円ほどで、1円動くと結構な率で動くことになるので、好む方が一定数いらっしゃいます(相場は2019年1月時点)。
――仮想通貨は国境を越えて取引をできるようなイメージがありますが、利用者がどこに在住しているかで、使える取引所も変わってきますね。
小谷: 我々がなぜ日本に居住している人を対象にしているかというと、資金決済法や自主規制規則への対応はもちろん、犯罪収益移転防止法、アンチ・マネーローンダリングやテロ資金供与対策への対応などが関わってくるからです。本人確認を厳格に行い、反社会的勢力やマネー・ローンダリング、テロに加担している人にサービスが利用されないように、業者としてしっかりと管理する必要があります。利用者が海外在住者の場合、本人確認や何か問題が起きたときに、どこの法律が適用されるかという問題もクリアにしなければならない課題です。
――時折、仮想通貨が盗まれるというニュースを目にしますが、ウォレットなどのセキュリティにも投資されているのでしょうか。
小谷: 投資というか、非常に気を遣ってはいますね。年末年始問わず365日24時間態勢で、システム的なチェックはもちろん人が見るようにもしています。大きな出金があった場合には自動的に検知してアラートが上がるような対応もしていますし、人がすぐにチェックをして対応するといった態勢も整備しています。セキュリティに関して巨額な投資をしているというより、やるべきことをしっかり行うという運用を大事にしています。
天才的なハッカーがクラッキングして仮想通貨を奪われるということが絶対に発生しないとは言い切れない部分もありますが、現状、日本で起きている問題というのは、まずは、当たり前のことが対応するということが重要なのではないかと思っています。
■仮想通貨が使える環境を増やしていきたい
――仮想通貨は投資だけでなく、買い物や送金に使うことができます。用途の広がりについてはどのように見ていますか。
小谷: これは課題でもあるのですが、今はまだ仮想通貨を使える場があまりないというところが正直なところです。家電量販店や中古車販売店などで仮想通貨決済が利用可能になっていますが、他の決済手段と比較すると、利用者数も利用可能な環境も少ないのが現状です。
今は投資というところにフォーカスされる場面が多いですが、仮想通貨はもともと、決済や海外送金をスムーズにできるようにということで生まれたという背景があります。その特長を活かすためにも、実際に使えるようにしていかないと一般の方には中々広がらないと思います。
――デジタルだからこそ、仮想通貨は世界中どこでも使えそうに思えますが、海外からの訪日客の利用というのはどのような状況なのでしょうか。
小谷: 私は海外の法律に明るいわけではありませんが、たとえば中国では仮想通貨の取引は法令上禁止されています。どこまで法的な面をクリアにして、サービスを提供するかがポイントですね。世界各国でレギュレーションの足並みがそろっていなかったりするので。
――海外では仮想通貨のATMを提供していたりしますが。
小谷: テクノロジー的にはそんなに難しいことではないと思いますが、それを日本でやろうとすると、仮想通貨と法定通貨を交換する場合に仮想通貨交換業者の登録や本人確認が必要だったり、法的な制約があるのです。
――仮想通貨は、デジタルなインセンティブのひとつとしてゲームなどでも活用されていますね。
小谷: GMOコインでは、サッカーJ2のFC琉球が2018年にJ2昇格が確定したときに、昇格ボーナスとして1000万円相当のビットコインを贈呈しました。FC琉球ではブロックチェーン技術を活用したファン・サポーター向けサービスの開発などの検討していたようで、グループ会社からの紹介を受けておつきあいが始まりました。 その流れで、GMOコインが2019シーズン オフィシャルトップパートナーとなっています。
※写真提供:GMOコイン ゲームでのインセンティブでいえば、GMOインターネットが提供しているゲームアプリ「ウィムジカル ウォー」が定期的に開催している大会の上位者に、ビットコインを付与していますね。
――ICOについては、世界各国でさまざまな取り組みがありますが、問題も指摘されています。
小谷:ICOには現在、日本では明確な規制や法律はなく「仮想通貨ではない」という形でやっているものもあるようです。そのため、詐欺のケースなどが問題になっているわけです。仮想通貨交換業協会も自主規制規則を定めていますが、ICOについても今後何かしらのルールが定められる可能性が高いと考えています。
株式のIPOをする場合には、会社の財務体制など細かいところまで問われます。ICOでは、どういう目的で実施するのか、どうオペレーションをしていくのかを考え、セキュリティをしっかりと整備した上で取り組む必要があります。
■GMOインターネットグループとしての取り組み
――仮想通貨については、GMOフィナンシャルホールディングスだけでなく、GMOインターネットグループを連携しての構想をお持ちかと思います。
小谷: GMOインターネットは、マイニング事業なども含めて川上の部分を担っており、GMOコインはどちらかというと川下の部分を担っています。言い換えると、主に個人向けに仮想通貨の取引を提供しています。グループ全体としては、仮想通貨を支える役割を果たしていきたいと考えています。まだ、具体的にお話をできるものはありませんが、事業シナジーを出していこうということで2017年から取り組んでいます。
――暗号技術の開発などにも取り組んでいるのでしょうか。
小谷: ブロックチェーン技術は仮想通貨を作るだけのものではなく、さまざまなサービスに応用ができる可能があります。GMOインターネットでは、ブロックチェーン技術に関連するサービスの開発を行っています。たとえば「Z.com Cloud ブロックチェーン」は、イーサリアムを使って、ブロックチェーン上に分散型のアプリケーション(Decentralized Apps:DApps)を構築するためのプラットフォームです。
――2018年には、日本円と連動した発表されたステーブルコインの発行を発表されました。
小谷: ステーブルコインはGMOインターネットが主導しているグループ横断のプロジェクトです。ステーブルコインとは、法定通貨によって価値を裏付けることで価格の安定性を持たせた仮想通貨です。GMOインターネットグループのグローバルブランド「Z.com」を通じて、ステーブルコイン(円ペッグ通貨)として「GMO Japanese YEN」をアジア地域へ向けて、2019年度に発行する予定です。日本では規制の面などで難しいところがあり、海外でも国ごとにルールも異なるので、調査を進めながらどこでどのように展開するか準備を進めている段階です。
ひとつ意外だったのは、ステーブルコインについての発表をした直後に、海外からの方からの反響があったとGMOインターネットの担当者から聞いています。日本語のプレスリリースに続いてすぐに英語でも発表したのですが、私たちがグループとして仮想通貨ビジネスに取り組んでいることが海外でかなり知られていることを実感しました。
ステーブルコインを展開するのは海外(アジア)ですが、日本円と連動しているので日本でも注目されるのではと思っていたところ、国内での反応はいまひとつでした。通貨として仮想通貨は非常に魅力がありますし大きな可能性を感じていますが、ボラティリティが厳しいと通貨として成り立たない。しっかり流通する通貨になるものを考えたときに、ステーブルコインという存在は必要だと考えています。
――GMOコインとして、2019年に特に取り組んでいきたいことはありますか。
小谷: セキュリティ面においてはゴールがないので、取り組みを続けていくことが必要です。お客様が安心して取引できるということがビジネスの土台になりますから。自主規制規則に沿った運営にも全力で取り組みたいと思います。その上で銘柄含めて、他社に引けを取らないようサービスを充実させ、使い勝手を良くしていきたいと思います。
引用元:MONEYzine
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190225-00000002-sh_mon-bus_all
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