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2019年02月23日

仮想通貨のバブル崩壊、ICOに「冬の時代」




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仮想通貨バブルの崩壊から1年が経った。ビットコインの価格は最高値の5分の1で推移するなど相場は停滞、一般投資家にまで広がった投資熱は冷え込んでいる。


 仮想通貨バブルの当時、仮想通貨を使った資金調達手法として脚光を浴びたICO(イニシャル・コイン・オファリング)はもっとひどい状態だ。あるICO案件の「その後」を追うと、投資家たちの怒りが噴出していた。

 「逃げようとしているでしょ、みんな困ってるんですよ!」「こっちは数千万円をつぎ込んだんだ!」




ビットプロパティー構想とは何か

 昨年11月、「ビットプロパティー」というICO案件の進捗状況を伝えるための説明会が都内の貸会議室で開かれていた。投資家たちの怒号は会場外にまで響きわたるほど。投資家たちに説明をしていた男性は、「自分には詳細な事情はわからない」と弁明するのがやっとだった。

 世界各国の不動産の所有権をブロックチェーン上に乗せ、「BTP」という、独自に発行した仮想通貨で不動産に投資できるようにする。所有不動産はメガソーラーなどの再生可能エネルギー施設を中心とし、売電収益などがBTP保有者に分配される。BTPは仮想通貨交換所に上場され、広く売買もできる。そして、ビットプロパティー構想の実現に必要な資金はBTPの発行と販売によって確保すると販売時には説明されていた。




 BTPの販売は、仮想通貨バブル前夜といえる2016年1月から2017年6月にかけて行われた。集客と販売を担ったのが「一般社団法人日本クリプトカレンシー協会」なる団体だ。

 同協会は、仮想通貨の普及促進や情報提供、個人の資産保全を事業目的として2015年6月に都内で設立された。BTPの販売終了直後に活動を休止するまで、東京を中心に各地でセミナーを開催。活動休止前の協会ホームページでは、「日本最大級の仮想通貨に特化した社団法人」であるとうたい、セミナー参加者は累計で3000人以上とアピールしていた



6人ほどいた協会メンバーのうち、セミナーでBTPを紹介する役回りだったのは2人。協会の創設者で2015年末にビットプロパティー株式会社を設立し、代表取締役を務めていた30代前半の男性と、昨年11月の説明会で会場の怒りの的になっていた20代の男性だ。協会創設者は次のようなセールストークで話しかけ、仮想通貨で一山当てたい投資家たちの心をくすぐった。

 「日本の収益用不動産の市場規模は200兆円超。これからの10年で何%がデジタル化されると思いますか。それがBTPの想定市場規模です。デジタル化されるのが50%なら日本だけで100兆円です」




 「(BTPの価格上昇度については)3倍、5倍、10倍は全然狙えますね。10倍だったら少ないと思います。10倍のところでは僕は売らないです」

■14億円以上の資金を集める

 70万円以上を投資すれば、年率3〜5%の配当が出ることも、投資家には魅力に映ったようだ。最終的には日本円やビットコインで14億円相当の資金が集まった。

 ビットプロパティーは沖縄県・石垣島にあるメガソーラー施設と土地を購入。現在はそこから上がる売電収益をイーサリアム(ビットコインと並ぶ主要な仮想通貨)で投資家たちに分配している。




 BTPに900万円を投じた投資家の場合、分配金の額は「月2万円相当」。ただ、「BTPの価格が10倍になると思っていた。そのような触れ込みだった」と不満をあらわにする。「欲の皮が突っ張りすぎ」との批判も聞こえてきそうだが、その不満にはうなずける点もある。仮想通貨交換所へのBTP上場が事実上頓挫したからだ。

 ビットプロパティーは当初、BTPの上場時期を2017年1月と公表していた。だが予定は遅れ、2018年上旬に改めた。ところが2018年に入ると仮想通貨バブルの崩壊に加えて、BTPのように配当を出す仮想通貨は株式などの有価証券と同様、金融当局の監視下に置こうとする流れが世界的に広まった。その結果、BTPの上場は暗礁に乗り上げた



そこでビットプロパティーが行ったのが別の仮想通貨の割り当てだ。2018年6月、BTP投資家に「DCPT」という新しい仮想通貨を付与した。DCPTとは「Dexischain」(デクシスチェーン)という不動産価格の予測サービス内で用いる独自の仮想通貨で、ネビュラ(Nebula)というフランスの仮想通貨交換所に2018年秋に上場した。

 しかしDCPTは買い手がおらず、上場直後から今に至るまで、ほぼ売買できない状態だ。デクシスチェーンが構想する不動産価格予測サービスの詳細は不明で、しかも開発中の段階。ただの電子データにすぎないDCPTを買おうという人は、仮想通貨バブルの崩壊した今ではそう現れない。しかもネビュラはマイナーな交換所だ。




 BTPに500万円を投じた投資家は、「形ばかりのDCPT上場でお茶を濁している。各国の不動産を買うプラットフォームをビットプロパティーで作ると言っていたのに、それも進んでいない」と憤る。実際、ビットプロパティーが購入したのは石垣島のメガソーラーだけだ。

■会社の主要機能はタックスヘイブンへ

 2018年12月、デクシスチェーンのカスタマーサポートから投資家たちに一通のメールが送信された。

 そこには、ビットプロパティー所有の石垣島メガソーラーについて、「売買が成立した場合には速やかにご報告させて頂きます」と記されていた。投資家たちは2018年11月の説明会で、当初構想と現状が大きく乖離しているため、メガソーラーを売却して投資した資金を返金するように求めていた。「結論は出せていない」とメールには書かれているものの、プロジェクトを断念して返金する可能性はゼロではないようにも読み取れた。




 一方、メールでは、カスタマーサポートを含む多くの機能をセーシェルの開発会社に移すことも伝えられた。インド洋の島にあるセーシェル共和国は、元英国領のタックスヘイブン(租税回避地)。そこにBTPやDCPTの発行主体である開発会社が置かれているという。

 投資家たちが現在把握している連絡先は、カスタマーサポートのメールアドレスのみ。だがこのサポートメールは、予告なしに日本語での対応を終了する場合があると通告されている



さらにこのメールが送信されて4日後、ビットプロパティーの代表取締役が交代した。フィリピン・セブ島に住居を置く外国人と思しき人物が新たに代表取締役に就任した。直前の代表取締役は、金儲けのノウハウを商品として販売する「情報商材屋」として知られる日本人が務めていた。デクシスチェーンプロジェクトも率いていたその人物に対し、昨年11月の説明会で責任を追及する声が投資家からあがったばかりだった。

 BTPの投資家たちは返金の可能性に期待を寄せるが、交渉の窓口が海外に移っていくことに不安を募らせている。国内に残るのは2018年11月に説明会を開いた日本クリプトカレンシー協会の元メンバーくらいだ。だが、同メンバーが協会解散後に運営していたブロックチェーン関連企業は昨年末で閉鎖された。




 2017年8月までビットプロパティー代表取締役を務め、事情にもっとも詳しいとみられる同協会の創設者に至っては、所在がわからない。昨年11月の説明会では「今は連絡がつかない状態にある」と説明された。

■ビットプロパティー構想に実態はあったか

 ビットプロパティー構想は、本当に実態のある事業だったのだろうか。日本クリプトカレンシー協会が推薦したICO案件には、形ばかりの上場後に上場廃止し、うやむやになったものはほかにもある。デクシスチェーンも本当に開発を進めているのか、疑わしい。




 協会創設者の人脈をたどっていくと、「元金融機関ディーラー」を自称する人物とシンガポールに移住した出会い系サイト元運営者の2人に行き着く。

 彼らと近しかった人物によると、出会い系サイト元運営者が日本で稼いでシンガポールに持ち出した資金の運用を元ディーラーに依頼。元ディーラーがスポンサーとなって仮想通貨やブロックチェーン関連のビジネスを日本で立ち上げた。それらのビジネスには正業もあったが、日本クリプトカレンシー協会のようなものもあった、ということのようだ。




 ビットプロパティーの件は「投資家たちが仮想通貨バブルのさなかに、儲け話に目がくらんだだけ」なのか。そう一筋縄ではいかない点に、この問題の闇の深さが感じられる。


 









東洋経済オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190223-00267049-toyo-bus_allh






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