2018年09月29日
いままでいくらが闇に消えた? 仮想通貨流出事件を振り返る
9月20日、仮想通貨取引所「Zaif」が、不正アクセスで約67億円相当(後に70億円相当と訂正)の仮想通貨を流出したと発表した。1月には同じく国内で、「Coincheck」から約580億円相当の仮想通貨が流出したばかりとあって、衝撃は大きい。
数十億〜数百億円が虚空に消えるという話には目まいがするばかりだが、仮想通貨の歴史上、今まで総額いくら分が流出したのだろうか。Mt.GoxからZaifまでの主要な事件を振り返る。
記載する仮想通貨の日本円価格は、当時のレートによるもの。
2014年 Mt.Gox 約390億円相当のビットコイン盗難
仮想通貨取引所から仮想通貨が流出することを「GOXする」(ゴックスする)、と一部で言われるようになったが、その語源こそかつて日本にあった仮想通貨取引所、Mt.Gox(マウントゴックス)だ。
2010年から東京でビットコイン取引所を営んでいたが、2014年2月に全取引を中止、同サイトを白紙にした。発覚するまで何年も窃盗行為を受け、計74万4408BTC(約390億円)を失ったとしている。
運営していたMTGOXは破産手続きを進めていたが、保有していたビットコインの価格が当時から上昇。債権額の約456億円を上回ったため、2018年6月に東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けた。
2015年 Bitstamp 約5億円相当のビットコイン
英国のBitstamp(ビットスタンプ)は、2015年1月に約5億円相当のビットコイン(約1万9000BTC)を流出。同社が保持していた10%の資産だったという。
2016年 The DAO 約65億円相当のイーサリアム
大きな流出事件としては初めてのビットコイン以外の仮想通貨で、「第2のMt.Gox事件」ともいわれる「The DAO事件」。これは仮想通貨取引所ではなく、イーサリアムプラットフォーム上のプロジェクトだった。
2016年6月に、何者かがThe DAOのスマートコントラクトのバグを攻撃。The DAOに集まっていた資金の約3分の1である、約65億円相当のイーサリアムが盗まれた。
2016年 Bitfinex 約73億円相当のビットコイン
当時ドルベースの仮想通貨取引所としては世界最大だった、香港のBitfinex(ビットフィネックス)は、2016年8月に約73億円相当のビットコイン(約12万BTC)を失った。
2017年 Nicehash マイニング売買サイトから76億円相当の被害
仮想通貨マイニングの採掘能力を売買できるサイトである、スロベニアのNicehash(ナイスハッシュ)から、約76億円相当のビットコイン(約4700BTC)が流出した。事件が発生したのは2017年12月6日ごろ(日本時間)で、7日午前5時には具体的な被害を発表した。流出したBTCはNicehashの資産の全てだったとしていた。
同月20日にはサイトを復旧した上で、「盗まれたユーザーの残高も払い戻せるようにする」とアナウンスした。
2018年 Coincheck 約580億円相当のNEM
仮想通貨取引所Coincheckから2018年1月、約580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出。金融庁による仮想通貨交換業への規制強化のきっかけとなった。
仮想通貨の土台となるブロックチェーンにトレーサビリティがあることに加え、NEMには「モザイク」というマーク付与機能があることから、盗まれたNEMの行き先を数人のホワイトハッカーが追いかけたことが話題になった。
一方で、犯人側はダークウェブ上にNEMとビットコインやライトコインを割安で交換できる取引所をオープン。犯人は全NEMの交換を完了し、同サイトに北朝鮮の最高指導者・金正恩氏とみられる人物が札束に囲まれたコラージュ写真と「Thank you!!!」の文字を掲げた。
2018年 BitGrail 約204億円相当のNano
イタリアの仮想通貨取引所BitGrail(ビットグレイル)から2018年2月、約204億円相当の仮想通貨「Nano」が流出した。フランチェスコCEOはTwitterで「残念ながら100%の補償は不可能」と発言。
フランチェスコCEOは流出前にNanoのブロックチェーンを切り戻す「ハードフォーク」をNanoの開発チームに打診したが、Nano開発チームはこれを拒否。
調査のためサイトを閉じたが、5月2日に再開。しかし同日にフィレンツェ裁判所から同社オフィスを閉じるよう処分を受け、再度クローズ。9月現在、同社が保有する残りのNanoは司法当局により管理されているとしている。
2018年 Zaif 約70億円相当のビットコインなど流出
9月20日午前2時に、Zaifがハッキング被害を発表。21日の追加発表によれば、約42億5000万円相当のビットコイン(5966.1BTC)、約6億7000万円相当のモナコイン(623万6810MONA)、約21億円相当のビットコインキャッシュ(4万2327.1BCH)、合計約70億円相当が盗まれたという。
20日の発表では、14日に不正アクセスがあり入出金サービスに不具合が発生、17日にサーバ異常を検知、18日にハッキング被害を確認としていたが、ネット上では「なぜ14日に不具合が出たのに異常検知が17日なのか」といった疑問の声も。
18日にはZaifのTwitterアカウントが、本件の3通貨の入出金一時停止について障害対応中としつつも、「お客さまの資産の安全を確認したことを報告する」と記載していたことについて、「消費者を欺いたのではないか」と不満が噴出している。
24日までに、Zaifによる記者会見の場は設けられていない。
流出総額は1463億円相当 もろい“大黒柱”
これら金額的に主要な事件を合わせるだけでも、流出被害総額は合計1463億円相当となる。被害割合を円グラフにしてみると、CoincheckとMt.Goxだけで全体の約65%を占めることが見て取れる。
これはつまり、4年間でこれだけの額が犯罪者に渡ったということでもある。
仮想通貨自身の技術は決して悪ではないし、中央集権に頼らない価値移転手段やスマートコントラクトにはこれまでになかった利便性を生み出せるポテンシャルもある。
その一方、仮想通貨の価値を測るには現状、法定通貨との接点がほぼ必須だ。新規に発行されたアルトコインの多くがまず目標とするのは仮想通貨取引所への上場であり、上場時の初値で売り抜くためにICO(Initial Coin Offering)に投資する投資家もいれば、その思惑を逆手に取ってICO詐欺を働く犯罪者もいる。
仮想通貨のみで回る経済圏が確立すればまた話は別だろうが、現在の仮想通貨にとって、法定通貨との接点となる仮想通貨取引所は非常に重要な地位を占めている。
ブロックチェーンが仮想通貨の土台ならば、仮想通貨取引所は大黒柱といったところか。強固な土台に対して大黒柱がもろすぎる印象を受けざるを得ない。
引用元:ITmedia PC USER
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180926-00000011-zdn_pc-sci
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