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2018年08月09日

LINEペイ、「客にも店にも大奮発」を貫く理由




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クレジットカードや電子マネーなど、家計消費に占める「キャッシュレス比率」がわずか18%(2015年、経済産業省)という現金大国・日本。この比率が4〜5割に達する国も少なくない中、政府は訪日客対策を兼ね、2025年までに同比率を40%へ、さらに中長期で80%へと高める目標を掲げる。

ここに新たな商機を見いだす企業は少なくない。その先頭に立っているのが、スマートフォン向けメッセンジャーアプリ国内最大手のLINEだ。




 LINEは2014年12月、スマホ決済サービス「LINE Pay」を開始した。現在はタイや台湾でも展開しており、グローバルでの月間流通総額は1250億円に及ぶ。スマホアプリでQRコードを読み込む方法で、国内での決済金額は昨年比で2.5倍と成長が続いている(いずれも2018年5月時点)。

 6月には利用者向けにポイント付与率拡大、加盟店向けには決済手数料の一部無料化など、大胆な施策を複数発表した。8月に入り、サービスへの反映が本格化、消費者や小売店への猛アピールが始まっている。




■利用度合いに応じて4色のバッジを付与

 LINEが利用者向け施策の目玉として打ち出したのが、独自のポイント還元プログラム「マイカラー」だ。LINEペイユーザーに対し、サービスの利用度合いに応じて4色(グリーン、ブルー、レッド、ホワイト)のバッジを付与、最低のホワイト(決済額の0.5%)から最高のグリーン(同2%)まで、決済時のポイント還元率に差をつける仕組みとなっている。

 これに加え2019年7月末までは、LINEペイのQRコード決済利用に対し、各自のカラーとは関係なく一律3%のポイント還元を行うキャンペーンも実施。期間限定ではあるものの、グリーンバッジを持つ利用者には最大5%のポイントを付与するという奮発ぶりだ。




 8月からはさらにアクセルを踏み込む。「どうすればランクが上がるのかわかりづらい」という利用者の声を受け、LINEペイ利用者全体をランク付けする「相対評価」から、必要条件をクリアすれば誰でも適用される「絶対評価」に変更。月間の決済額や送金人数など、カラー判定の条件も明示した。

 これと同時に、ポイント付与対象の上限金額を従来の10万円から100万円まで拡大した。「LINEペイは利用者にとって“セカンドカード”のような位置づけで、10万円もあれば十分かと考えていたが、もっと使いたいという声をたくさんもらった。100万円まで枠を引き上げたことで、メインの決済手段としても使ってもらえる可能性が広がる」。同事業の運営会社・LINE Payの長福久弘COO(最高執行責任者)はそう自信を見せる。



LINEペイが利用者獲得と両軸で進めるのが、加盟店の開拓だ。同社は2018年中に決済対応箇所(自動販売機等も含む)を100万まで増やす計画を掲げる。現在までに9.4万箇所を独自開拓したほか、今秋からはクレジットカード大手・ジェーシービーが展開し、おサイフケータイ(非接触型)の決済で72万店の加盟店を持つクイックペイと新たに提携、一気に加盟店を増やす。

 100万箇所という目標達成に向けては、大規模チェーンの開拓はもちろん、「パパママストア」といわれる中小規模事業者への訴求も重要になる。そこでLINEが進めてきたのが、店舗向けのLINEペイ導入形態の多様化だ。事業者の規模やニーズに合わせ、今後投入を予定するものを含めすでに5つをラインナップする。ライバル社にもここまでそろえる例はない。




 主に大規模事業者向けに提案するのは、POSレジ改修や、アリペイ、ウィチャットペイなどの決済にも対応する「スターペイ」端末の導入。一方、イベント会場や屋台の決済には、店頭に電子機器のいらないプリント型が重宝されている。この中間的な役割を担う手段として、8月からはスマホ端末で決済できる専用アプリの提供を加盟店向けに開始、また今年中にLINEペイ特化型の独自端末も投入する予定だ。

■加盟店が負担する手数料を3年間無料に




 そして今回投入した店舗用アプリについては、通常決済利用時に加盟店側が負担する手数料を3年間無料とした。「加盟店にとっての導入のハードルを探し、それをクリアするサービスを出すのが自分たちの役割。3年後には手数料をいただくが、まずは導入してもらい、生産性向上や業務改善を実感してもらいたい」(長福COO)。

 決済事業者の“儲けの源泉”である手数料収入を犠牲にする大胆な戦略といえるが、一方で、LINEの出澤剛CEOは「手数料だけで儲けるモデルは今後徐々に少なくなっていくのではないか」と指摘する。特に、利用者ごとの傾向をつかんでサービスのパーソナライズ、レコメンドなどを行っているネット企業にとって、実購買データは貴重だ。「決済で集まるデータによって広告、金融など、ほかの事業領域がさらに盛り上がるように掛け算をしていく」(同氏)。



ここに目を付けるのはLINEだけではない。実際、スマホ決済領域ではプレーヤーが乱立する。従来のライバルである楽天の「楽天ペイ」、独立系の「オリガミペイ」などに加え、フリマアプリのメルカリが投入に向け準備する「メルペイ」も、加盟店開拓を開始している。直近では、ソフトバンクとヤフーの合弁による新サービス「ペイペイ」も発表された。ペイペイはLINE同様、今秋のサービス開始時から3年間の決済手数料無料を武器に加盟店開拓を進める方針だ。




 LINEにとってのアドバンテージは、圧倒的な規模のメッセンジャーサービスを築いている点だ。決済と並ぶウォレットサービスの主要機能に、立て替え、割り勘などで発生する個人間送金がある。月間7600万人が利用しているLINEアプリなら、すでに親しい友人や家族との日々のコミュニケーションに使われており、送金機能の親和性が高い。わざわざ別アプリをダウンロードする必要がないという点でも、心理的ハードルが低い。




 メッセンジャーアプリとしての強みは加盟店開拓においても武器になる。「飲食店や小売店が売り上げを拡大するために、決済後のコミュニケーションは重要。LINEはそこまで合わせて提供することができる」(長福氏)。スマホ決済時に顧客のアカウントと友だち登録を行えたり、購入履歴に応じ店舗情報やクーポンを配信できたりする機能が加盟店にうけているという。

■スマホ決済に対する信頼を醸成できるか

 盛り上がり始めたスマホ決済市場、今後各社の生き残り競争はどう展開していくのか。長福氏は「日本でも中国同様、数社の強いサービスが並行して使われるようになっていくのでは」と見る。メッセンジャーアプリ発のスマホ決済サービスとしては、中国のウィチャットペイが同国内で巨大サービスに成長している。同社の成長過程が、LINEにとっても一つのモデルケースとなりそうだ。




 一方で、「中国の現状がそのまま日本の未来」と考えるのは早計だろう。特に個人情報の取得、広告など他事業への利用にかかわる意識は、中国と日本で大きく異なるため、やり方を間違えれば一気にユーザー離れを起こす可能性はある。「日本に準拠した形、ユーザーが不快にならない形で進めるのはもちろん、データを預けてもらうにはしっかりメリットを訴求できなければと考えている」(長福氏)。

 もう一つの事業リスクは、スマホ決済全体に対する信頼が揺らぐことだ。中国では店頭に設置していたプリント型のQRコードを勝手にすり替えられ、店が収益を横取りされるといったトラブルが実際に多発している。「決済は安心安全が絶対だが、QRコード決済はまったく新しい文化なので、中国でもさまざまなトラブルが起きながら成長している。これを業界全体でしっかり研究し、技術的に制御できる体制を築く必要がある」(長福氏)。




 日本では現在、約20の業者が関連の決済サービスを提供しているが、これが将来、100事業者以上に増えるという見方もある。仮想通貨しかり、一つの不祥事で業界全体へのイメージが大きく悪化し、成長の勢いがそがれるケースは珍しくない。そうならないための対策も、LINEペイに限った話ではないが、業界全体の課題といえそうだ。








引用元:
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180809-00232890-toyo-bus_all




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