2018年06月30日
バブルがいつ弾けるかを推測する手がかり、「恐怖指数」の読み方
<1年足らずで10倍になったビットコインは、その後、1週間で30%急落した。いつかは弾けるのがバブルだが、問題は「それがいつなのか」。それを推測する手がかりとなるのが、市場参加者たちの集団心理を表した指標だ>
株価の大暴落は恐ろしいものです。だれだって遭遇したくありません。でも、そんな「恐ろしさ」を表す指数があることをご存じでしょうか? それが「恐怖指数」とも呼ばれる「VIX指数」です。
VIX指数が上昇すればするほど、「投資家が暴落リスクに対する警戒感を強めている」とわかり、反対に、VIX指数が低いところで安定していれば、「暴落のリスクはないと安心している」という雰囲気を読み取れる----そんな指標です。
株価は集団心理で動きます。どれだけ市場参加者が「ビビっているか」を数値で把握できれば、大いに活躍してくれるでしょう。というわけで、集団心理を表すVIX指数をはじめとした指標と、その見方について紹介します。
鍵は「ボラティリティー」にあり
そもそも、「市場参加者がビビっているかどうか」をどうやって算出するのでしょうか。その鍵となるのは「ボラティリティー」です。このボラティリティーがVIX指数(恐怖指数)につながっていくので、まずはボラティリティーについて説明します。
ボラティリティーとは「変動率」、つまり「値動き」のことです。たとえば以下の2つであれば、(2)のほうが「ボラティリティーが大きい」と言えます。
(1)ある一定期間で、株価が1000〜1100円で動く株
(2)ある一定期間で、株価が800円〜1500円で動く株
そして、ボラティリティーには2種類あります。
●ヒストリカル・ボラティリティー......過去の実際の変動率
●インプライド・ボラティリティー......将来の予想変動率
過去の変動率は、実際の数値があるので測定も簡単です。しかし、「将来の予想変動率」はどのように測定するのでしょうか?
金融には「オプション取引」というものがあります。「将来の決められた期日に、あらかじめ決められた価格対象となっている資産を買い付ける、または売り付ける『権利』を売買する取引」です。このオプション取引の価格から、市場参加者が予想している将来のボラティリティーを逆算できるのです。
日経平均の予想変動率
日経平均株価の各ボラティリティー指数は、日本経済新聞を見ればわかります。過去の変動率であるヒストリカル・ボラティリティー(=日経平均HV)、予想変動率のインプライド・ボラティリティー(=日経平均VI〔ボラティリティー・インデックス〕)ともに、紙面に掲載されています。
両者の差を見るのも面白いのですが、ここではネットで簡単に見ることができ、これからの市場の雰囲気を知ることのできる「日経平均VI」(=予想変動率)について詳しく見ていきましょう。
2017年11月1日の日経平均VIは「19.74」でした。これは、「市場参加者の予想の平均に基づけば、日経平均株価は『今後1年間に約68%の確率で、22,420.08円(11月1日終値)から上下19.74%の範囲(26,845.80円〜17,994.35円)で変動する』だろう」という意味です。
ここで「約68%の確率で」という数値がしれっと出てきますが、これにピン!ときた人は統計通です。1標準偏差(σ)の中にデータが含まれる割合が68%のため、このような表現になっていますが......とりあえず、ピン!とこなかった人は「そういうことらしい」と思っておいて大丈夫です。
・予想変動率は「推移」で見る
日経平均VIは、ある一日の単体の数値ではなく「推移」で見ることに意味があります。たとえば、ある年の8月2日の数値は24.19で、8月9日には42.69に上昇していたとすると、「市場参加者の株価下落に対する警戒感が高まった」ということがわかります。
そして、日経平均VIは通常、20〜30程度を推移します。だから、これを大きく上回ってきたら「暴落リスクを強く意識している投資家が増えてきた」とわかるのです。過去10年の日経平均VIの推移を見てみましょう。
ズバ抜けてグラフが飛び上がっているのは、リーマンショックがあった年です。市場の不安がはっきりと見て取れます。それ以外の時期は、上がっては下がり、下がっては上がり......を繰り返しています。
・セオリーどおりにはいかない
ここで、過去10年の日経平均株価の推移もあわせて見てみます。
「市場関係者がビビっていれば株価は下がり、強気なら株価は上がる」のがセオリーならば、日経平均VIと日経平均株価は「逆相関(逆の動き)」になるように思えます。しかし、双方のチャートを見るかぎり、必ずしもそうなっているわけではないことがわかります。
日経平均VIは、あくまで「市場参加者の予想の平均」に基づいたものだからです。
これを見て、もしかすると「あんまり当てにならないなぁ〜」と思ったかもしれません。しかしながら、リーマンショックで暴落する株価と、それに反して急上昇する日経平均VIには、当時の投資家たちの言葉にできない不安が見て取れるのではないでしょうか。
ここでようやく、冒頭で触れた「恐怖指数(VIX指数)」のお話になります。
恐怖指数、つまりVIX指数とは、日本のTOPIX(東証株価指数)にほぼ相当する存在である「S&P500指数」のオプション取引のインプライド・ボラティリティー(予想変動率)を、日経平均VIのような手法で数値化したものです(ヤフーファイナンスなどで見られます)。
過去10年のVIX指数の推移は以下のようになっています。
そして下は、VIX指数のもととなるS&P500指数の推移とあわせたチャートです。これを見ると、S&P500は過去最高水準まで高まっているものの、VIX指数は低水準で収まっており、ここから「投資家たちはこの状態を『バブル』あるいは『異常な高値』だとは思っていない」ということが読み取れます。
・世界はアメリカを見ている
世界の株式市場の中心はアメリカです。アメリカ株の動向が各国株に与える影響も大きいため、世界中の投資家がこのVIX指数を注目しています。
VIX指数の見方については「10〜20%の間を推移する」とする解説が多いです。「20%を超えたら即、危険信号」ということではありませんが、25%を超えたら、投資家の警戒感がかなり高まっていると見たほうがいいでしょう。ここでも、大きく超えているのはリーマンショックの時期です。
日経平均株価と日経平均VIとの場合と同じように、基本は「逆相関」の関係になりがちに思えますが、このようにチャートで見比べると、必ずしもそうは言えないことがわかります。
投資家たちが、日経平均株価が今後どうなると想定しているかを表した数値が「日経平均VI」であり、アメリカ版TOPIXであるS&P500指数が今後どうなると想定しているかを表したものが「VIX指数=恐怖指数」です。
日経平均VIもVIX指数も、数値が大きければ大きいほど「変動(ボラティリティー)が大きいと投資家たちは踏んでいる(=暴落の可能性が高いと見ている)」ということです。
本来、日経平均株価と日経平均VI、そしてS&P500指数とVIX指数は、いずれも逆相関になりやすいはずですが、必ずしもそうはなりません。あくまで、これらの指数は「現時点での投資家の予測に基づいた数値にすぎない」からです。
したがって、参考程度の数値ではありますが、「集団心理」というつかみどころのないものを数値にしているという点や、「世界の投資家が見ている」という点において、たまにはVIX指数をチェックしてみるといいのではないでしょうか。そこで、思わぬ発見があるかもしれません。
引用元:ニューズウィーク日本版
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180629-00010000-newsweek-bus_all
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