2014年11月05日
相次ぐ値上げ デフレは終了か?
油、チョコレート、ハム、バターにチーズ、そしてインスタントラーメン。
消費増税後、「値上げ」に関するニュースが増えています。
そして、来月からは愛好家が多いコーヒーも値上げされます。
上げ幅は最大25%です。
多くは原材料価格の上昇が背景ですが、ここまで値上げの品目が広がってくると、「もはやデフレではなくなったのではないか」と感じる方も多いかも知れません。
増税後の値上げラッシュ
ここ半年、毎月1日が近づくと定番のように書いている原稿があります。
それが「値上げ」の原稿です。
「値上げの春」「値上げの夏」「値上げの秋」などと原稿を書き続けていくうちに、気付けば、対象となる品目は広範囲に広がってきました。
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食品の分野で例を挙げてみますと、食用の油、チョコレート(価格は据え置いたまま内容量は減少)、バター、チーズ、ヨーグルト、魚介類の缶詰、親子丼の元などのレトルト食品、ハム、ソーセージ、ギョーザ、インスタントラーメン、パスタ。
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食品だけではありません。
夏場にはレギュラーガソリンの平均価格が1リットル当たり170円近くにまで上昇しました。
ある取材先の小売店の関係者は、「4月の消費増税後、毎月のように納入メーカーから数十、多いときには100を超える品目の値上げの要請がくる」と話していました。
消費増税、そして広がる値上げの動きに、物価がじわりと上がっているなという実感を持つ人も多いのではないでしょうか。
背景は原材料高と円安
相次ぐ値上げの主な背景は「原材料価格の上昇」と「円安」です。
象徴的なケースが、11月1日から家庭用の商品が最大25%値上げされる「コーヒー」です。
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コーヒーは、原料となる豆の国際相場がことしに入って急ピッチで上昇しています。
病害虫や干ばつの影響で生産量が減少する一方、新興国でのコーヒーの消費量が増え、需給がひっ迫しているためです。
さらに、豆の調達を輸入に頼っている日本のメーカーは、円安によって調達のコストが一段と膨らんでいます。
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「ことしのコーヒー豆の調達価格は円換算で去年の2倍以上に達し、豆の相場高と円安の“二重苦”という深刻な状況に直面している」。
コーヒー豆の製造・販売大手「UCC上島珈琲」は9月に出した値上げのニュースリリースで、このような悲壮感が漂う表現を使ってコストが経営を圧迫している現状を説明しています。
このほかにも値上げの理由に、▽原油価格が反映されやすい包装の材料費や運送費、▽人件費、▽光熱費、の上昇を挙げる会社もあります。
もはやデフレではない!?
物価が下がり続けることで経済の活力が失われるデフレ。
デフレ脱却の宣言はまだありませんが、ここまで暮らしに身近な商品で値上げが相次ぐと、庶民感覚では『もはやデフレ状態ではないのでは』という実感すらしてきます。
そこで2つのデータを見てみました。
ニュースでもよく取り上げる総務省発表の「消費者物価指数」、そして東京大学の教授などが独自に物価動向を調査した「東大日次物価指数」です。
このうち先月下旬に発表された8月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた指数で前の年の同じ月を3.1%上回りました。
15か月連続の上昇です。
日銀の試算では、消費増税だけで全国の消費者物価指数は2%程度押し上げられるとされており、これを当てはめた場合、増税分を除いた先月の上昇率は、1.1%程度とみられます。
一方の東大日次物価指数は傾向が異なります。
この指数は、全国のスーパーのレジのデータを元に算出しています。
耐久消費財やサービスの価格は含まれない一方、スーパーで行われている値下げセールの価格を反映しやすいという特徴があります。
10月28日時点の指数は去年の同時期と比べて0.87%下落となっています。
ことし4月の消費増税以降、食品や日用品の分野では、上下を繰り返しながらも物価は下落傾向が続いているということを示しています。
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この二つのデータの矛盾を解きほぐすある食品メーカーの話があります。
「思い切って値上げに踏み切ったのに、後日、スーパーに様子を見に行くと、商品によっては値上げ前より値下げして販売されていた。店頭での販売価格はスーパー側が決めることなのでしかたのないことだが、思いは複雑だ」というのです。
商品は値上げされている一方、スーパーなど小売りの現場では、家計の負担感が増えて買い控えが起きないようにと値下げセールが積極的に行われていることがうかがえます。
消費者にはうれしい一方、メーカー、卸、小売りの誰かが「泣いている」ことも意味します。
今後は賃金もカギに
物価上昇は賃金の上昇分を上回り、実質賃金は前年同月比でマイナスの状態が続いています。
天候不順で野菜の価格が高騰した夏場、取材をしたある主婦は「給料は多少増えたけど、いろんなものが値上がりしていて、節約志向はむしろ強まっている」と話していました。
このところの「値上げラッシュ」。
コストプッシュ(原材料価格などの上昇)要因が少なくありませんが、そうしたなかでもスーパーが安売りに精を出すという現実は、政府が描くような物価上昇は簡単には実現しない、ということを示しているかもしれません。
こうしたなか、今後、消費者の購買力を高めていくためには、賃金の動向がカギとなります。
来年の春闘で、ことしに続いて賃上げの波が広がっていくのかも、注目していきたいと思います。
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