2023年9月現在、AmazonPrimeで視聴できます。
2022年6月公開 脚本・監督 早川千絵 112分 |
劇場公開時に観に行けなかったので、アマゾンで鑑賞しました。
少子高齢化が急速に進行している日本では、こうした制度が実現したらどうなんだろうと考える人は少なくないと思います。
映画では「プラン75」の対象となる高齢者、制度を支える側の行政・関連事業の人たちの「日常」が静かに描かれてゆきます。あからさまに「こんな制度はダメだ」という描き方をすると、かえって陳腐でしらけた内容に陥るので、逆に「日常に浸透した死の制度」を現実的なタッチで語ります。
映画的な省略が巧みで、説明的にならない抑制のきいた脚本が好感持てます。
また、主演の倍賞千恵子が素晴らしい演技をみせているのが圧巻です。
高齢者を政策的に排除するというアイディアは昔からSFなどではよく見かけますが、この映画の秀逸な点は、そうした制度が存在する社会を、リアルな当事者の視点でドラマに昇華したところだと思います。
また、単なる「制度の紹介ムービー」ではないので、当然「事件」が起こります。
社会体制が劇的に変化するような事件ではないのですが、観客にとっては「自分であればどうするか」を問われるような示唆に富んでいます。
管理人的にはこのプラン75の欠陥は、対象を高齢者に限定している点だと思います。
「生きる権利」は憲法が保障するところですが、「死ぬ権利」についてはじつは曖昧です。
全ての国民は等しく「死ぬ権利」を有する、という制度なら受け入れられるかもしれない。
このプラン75の欺瞞は、「死ぬ権利」に偽装して「死ぬ義務」を課している点にあります。
どれほど高齢であっても貧困であっても、生きることを望むならば「生きる権利」を奪ってはいけない。