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2017年10月03日

『訳す』 中日翻訳の高速化−比較言語学からの考察3

2 翻訳の作業単位

 単文で翻訳のトレーニングをすることに確かに意味はある。例えば、単文を訳すことによって、中日の品詞の違いについて確認ができる。  しかし、一文ごとの翻訳では、一つの中文が複数の日本語に訳出されることがある。

(1)你让我安静一会儿,好吗?(汉訳日精编教程)
(2)私を少し一人にさせてよ。いいですね。
(3)私を少し一人にしてよ。いいですね。

 (1)の和訳は、(2)でも(3)でもよい。しかし、(1)が段落の中に入ると、そうはいかない。文法に則して使役に訳すのか、それとも普通の平叙文で訳すのかを読み易さという観点から考える必要がある。文法通りに訳してしまうと、かえって読みにくくなることがあるからだ。読み易すい日本語とは、誰もが一読でわかるようなやさしい表現を用いた和文のことである。推敲する際にも、この点を考えるとよい。小説やエッセイを訳す時でも、段落に書かれた場面のイメージが浮かぶように訳していく。 
 外国語の学習者は、とかく文法を気にする傾向にある。しかし、表現法を問う場合には、あまり文法を気にせずに、こうも言えるしまたそうも言えるといった感覚でことばを処理していくとよい。作業単位を段落にすると、当然量が増えるわけだから、量が問われる翻訳作業に対しても抵抗がなくなると思う。そのため、作業単位を段落にすれば、表現の読みやすさを追及しながら、量にも対応できるといった効果が期待できる。

花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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