なぜ、中年期以降になると睡眠障害に悩まれる人が増えるのでしょうか。
之には次の3つの理由が考えられます。
第一の理由は、加齢とともにメラトニンの分泌量が減るためです。メラトニンは一般に幼児期(1歳から3歳ごろ)に最も多く分泌され、思春期以降減少し、70歳を超えるとピーク時の10分の1以下になります。
メラトニンは網膜が光を検出すると、脳の視交叉上核を経て、松果体に信号が伝わることで分泌されます。メラトニンの分泌量が減るのは、加齢によってこの信号伝達系に「退行性変化(組織の形が変化して、その働きが低下すること)」が生じるのが原因と考えられています。
第二の理由は、ストレスによるセロトニンの分泌量の低下に伴い、メラトニンの分泌量が減るためです。中年期には仕事や家庭のことで多くのストレスがかかります。私たちはストレスにさらされ続くと、脳内のセロトニンを含むモノアミンの代謝障害が起きます。メラトニンはセロトニンを原料として松果体で合成されるので、セロトニンの分泌量が減るとメラトニンの分泌量も減ることになります。
第三の理由は、夜間に光に当たる時間(光暴露時間と言います)の増加により、メラトニンの分泌量が減るためです。多くの課題と責任を背負っている中年期には仕事や家庭のことが気になり、ついつい夜中にもパソコンやスマホを見てしまいがちです。フェイスブックやツイッター、LINEといったSNSの普及がさらにこの傾向に拍車をかけます。中には寝床に入ってからスマホをいじる人も少なくありません。
こうした行動が夜間のメラトニン分泌量を減少させ睡眠障害の原因となります。
この理由は、パソコンやスマホ、タブレットなどの液晶画面から強力なブルーライトが発生しており、これがメラトニン分泌量を抑制するためです。また、蛍光灯からもブルーライトが発生します。特に白色のLED照明からのブルーライトは強力でメラトニン分泌を抑制します。
こうしたブルーライトを夜中に太陽光線を浴びるのと似た状態です。ということは、メラトニンの分泌が減るだけではなく、夜中に脳や体を「覚醒状態」にして交感神経が優位な状態になり、ますます睡眠障害を起こしやすくなってしまいます。
このような夜間の光暴露時間の増加は、中年期の仕事や家庭の条件に加えて、スマホやSNSの普及など情報社会の進展といった生活環境の変化も大きな原因です。
以上の3つの理由以外に、中年期にはうつ病による睡眠障害などもあります。
認識すべきは、中年期以降に睡眠障害が起こりやすいのは、単に「年を取ったから睡眠力が落ちたのだ」というほど単純ではなく、それなりの理由があることです。
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