日本の食事、和食は何が優れているのでしょうか? これを研究しているのが東北大学の都築毅准教授です。
和食が2013年にユネスコ無形文化遺産、いわゆる世界遺産に登録されて以来、講演などで引っ張りだこになっています。
都築准教授らの研究グループは、昭和35年(1960)から平成17年(2005)までの日本人の食事を、年ごとに比較する研究をしています。年ごとの日本人の食事内容は厚生労働省にデータがあり、残っているレシピを元にそれを再現し、マウスにたべさせてその結果を比較したのです。こうした実験は人体実験ができないのでマウスで実験するのが定石です。その結果、都築准教授らは、昭和50年の食事が最も健康効果が高く、肥満を抑える効果が大きく、老化を抑制して長い寿命をもたらすと結論付けました。都築准教授はこれを「スーパー和食」と呼んでいます。
スーパー和食とは、コメご飯を中心に、魚介類、豆類、海藻類などの腹持ちの良い食品が多く、それに少し欧米化したメニューが入っているものです。例えば、朝食は米のご飯、アジの干物、アサリと小松菜の煮浸し、ナスの味噌汁、花豆の甘煮、といった具合。昼食は少し欧風化してサンドイッチ、コンソメスープ、果物。そして夕食がご飯、肉じゃが、もずく酢、キャベツと卵の澄まし汁、といった具合です。
スーパー和食が体に良い第一の理由は、体内の代謝が活発になるためです。スーパー和食には腹持ちは良い食品が多く、此田は消化吸収のスピードが遅く、血糖値が上がりにくいからです。血糖値が上がりにくいと、インシュリンの分泌が抑えられます。
インスリンにはブドウ糖を脂肪に換える働きと体内に留まっている脂肪の分解を抑える働きがあります。 腹持ちが良い食品を食べることでインスリンが出にくくなると、体内のブドウ糖も脂肪に換えられないため、脂肪が内臓に取り込まれにくくなります。したがって、ブドウ糖を熱として放出して代謝が良くなっていきます。これが習慣づけられると、たくさん食べても脂肪がとどまりにくい、つまり太りにくい体質になっていくのです。
スーパー和食が体の良い第二の理由は、体への負担が少ないためです。マウスの実験では、スーパー和食を食べたマウスの癌の発生率が現状の4分の1に、糖尿病のリスクが5分の1になったというデータが出ています。また、認知症の発症リスクが4分の1に低減したという知見も得られています。マウスと人間では体の構造が異なり、特に認知症については脳の構造、人間は特に大脳が大きく違うので一概には言えません。それでも、このマウスでの実験結果は多くの部分で人間にも当てはまるといわれています。
スーパー和食には魚が多いことです。魚にはオメガ3系という脂肪酸が多く含まれています。代表的なものは、αリノリン酸【ALA】とエイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)の3つです。 これらが血中に多いと、特に高齢者の場合、記憶力や思考力といった認知機能検査の成績が良いという疫学のデータがあります。
もう一つの理由として、スーパー和食には豆腐や納豆といった大豆食品が多いことがあげられます。福岡県福岡市に隣接した久山町で昭和36(1961)年に始まり現在に至るまで行われている、現地の住民8400人を対象にした大規模な追跡調査です。それによると、大豆食品や野菜を多くとる人は、そうでない人に比べて認知症になる人が3割少ないという結果が出ています。つまり、人間を対象にした調査結果からみても、大豆食品が多いスーパー和食には認知症予防について一定の効果があると判断できます。<< /strong>
タグ:昭和50年代の食事