2014年08月10日
領海侵入繰り返す 中国船
領海侵入繰り返す中国船 挑発乗らず…支える現場の「士気」
【海防】第3部 尖閣国有化1年
8月7日午前8時半。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)・魚釣島から1キロほど離れた海を、
1隻の日本漁船が航行していた。
晴天に恵まれ、
穏やかな海だった。
しかし、
漁船の乗組員はこの時、
恐怖すら感じていた。
中国海警局の船「海警」が、
この漁船を執拗に追っていたのだ。
いうまでもなくここは日本の領海内だが、
海警はそれを無視するかのように汽笛を鳴らし、
漁船を威嚇し続けた。
「ここは中国が管轄する海域だ。
拿捕するぞ」
海警は中国語で理不尽な警告を発し、
小型ボートを船から下ろして実力行使に踏み切るかのような行動もみせた。
さらに、
漁船との距離をじわじわと詰めてくる。
10メートル、
9メートル、
8メートル…。
漁船側が接触の危険を感じる5メートルほどの距離になったとき、
助けが入った。
海上保安庁の巡視船が猛スピードで、
両船の間を割くように現れた。
尖閣諸島を管轄する第11管区海上保安本部
(11管、那覇)の宮古島海上保安署
(沖縄県宮古島市)に所属する巡視船「のばる」。
尖閣警備を念頭に平成23年4月に配備された高速船だ。
のばるの身をていしての護衛に対し、
海警は汽笛を4回鳴らした後、
漁船への接近を中断した。
左に大きく舵を切って、
衝突を回避した。
すぐに、
近くをゴムボートで航行していた海上保安官が漁船に近づき、
声をかけた。
「命の危険がありますので、早めに撤収してください」
日本政府は昨年9月11日、
尖閣諸島を民間の所有者から購入、
国有化した。
それ以降、
周辺海域の様相は大きく変わった。
中国公船の接続水域での航行は常態化し、
領海侵入も8月31日までに59回に上った。
ほぼ6日に1回という高い頻度だ。
台風が通過するなど大荒れの天候とならない限り、
居座り続けている。
「明らかに日本の領土である尖閣諸島の周辺の海域に、
わが者顔で中国公船が航行している。憤りを感じずにはいられない」。
警備に携わった経験のある海上保安官は本音を漏らす。
海保によると、
中国公船が日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国漁船への立ち入り検査をするような動きや、
事前通告のない海洋調査とみられる航行も確認された。
海保では中国側がこれらの活動を通じて尖閣の領有権を主張しているとみている。
幹部は
「国家の明確な意図を持って自らの主張を既成事実化しようとしている」
と危ぶむ。
尖閣を管轄する11管の大型巡視船は計7隻。
常時5隻程度展開する中国公船に11管だけで対応するのは難しく、
海保は全国の海上保安本部から巡視船を順次派遣し、
「冷静に、理性的に警備に当たってきた」(幹部)。
中国側の挑発には乗らず、
巡視船は退去や調査中止を繰り返し呼びかけてきた。
「尖閣周辺では、
一つのミスが国際的な衝突に発展する。
感情を極力抑え、
無用な衝突を避ける努力をしてきた」。
警備に携わる海保幹部は話す。
現場の海上保安官は、
巡視船から無線などを通じて何時間でも粘り強く説得に当たる。
冬の荒波にもまれる狭い船室内で双眼鏡片手に長時間の監視を強いられたり、
真夏の炎天下のゴムボート上に何時間も立っている海上保安官もいる。
「限られた空間の中で極度の緊張を長期間強いられる。
だれもがストレスを抱えている」。
現場を知る海上保安官は本音を漏らす。
過酷な任務を支えるのは、
海上保安官の「士気」だ。
こうした中、8月1日付で海上保安大学校出身の佐藤雄二長官(59)が就任。
国土交通省のキャリア官僚の指定席だった長官ポストに、
初めて“制服組”が就いた。
海保幹部は「現場派がトップと聞き、
血がわくほど士気が上がった」と話す。
佐藤長官は尖閣での指揮経験もあり、
現場の苦労を最もよく知る幹部の一人だ。
前線での警備だけでなく、
給油や飲食物の手配、
停泊場所の確保といった作業に携わる海上保安官の努力も知っている。
「最前線だけが厳しいのではない。
後方支援も含め、
一丸となって危機に立ち向かう」。
佐藤長官は、
海保の団結力で難局に立ち向かう決意だ。
東シナ海南西部に位置し、
魚釣島や大正島、
久場島などから成る島嶼群。
沖縄県石垣市に属する。
日本政府は明治28(1895)年に沖縄県への編入を閣議決定し、
実業家に無償貸与した。
戦前はかつお節工場などがあったが、
昭和15年ごろに無人島に。
魚釣島、
北小島、
南小島の3島は長く民間人が所有、
国が賃借契約を結ぶ形で管理してきたが、
平成24年9月11日に国有化された
全国に11ある管区海上保安本部のうち、
沖縄周辺の海域を管轄し、
那覇市に本部を置く。
昭和47年の沖縄返還に伴って発足した。
本部の配下には、
尖閣警備の前線基地となっている石垣のほか、
中城、
那覇の計3つの海上保安部があり、
さらに宮古島、
名護の2つの海上保安署がある。
那覇海上保安部は、
本部の尖閣警備業務の負担軽減などのため、
今年5月にできた
ecar
【海防】第3部 尖閣国有化1年
8月7日午前8時半。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)・魚釣島から1キロほど離れた海を、
1隻の日本漁船が航行していた。
晴天に恵まれ、
穏やかな海だった。
しかし、
漁船の乗組員はこの時、
恐怖すら感じていた。
中国海警局の船「海警」が、
この漁船を執拗に追っていたのだ。
いうまでもなくここは日本の領海内だが、
海警はそれを無視するかのように汽笛を鳴らし、
漁船を威嚇し続けた。
「ここは中国が管轄する海域だ。
拿捕するぞ」
海警は中国語で理不尽な警告を発し、
小型ボートを船から下ろして実力行使に踏み切るかのような行動もみせた。
さらに、
漁船との距離をじわじわと詰めてくる。
10メートル、
9メートル、
8メートル…。
漁船側が接触の危険を感じる5メートルほどの距離になったとき、
助けが入った。
海上保安庁の巡視船が猛スピードで、
両船の間を割くように現れた。
尖閣諸島を管轄する第11管区海上保安本部
(11管、那覇)の宮古島海上保安署
(沖縄県宮古島市)に所属する巡視船「のばる」。
尖閣警備を念頭に平成23年4月に配備された高速船だ。
のばるの身をていしての護衛に対し、
海警は汽笛を4回鳴らした後、
漁船への接近を中断した。
左に大きく舵を切って、
衝突を回避した。
すぐに、
近くをゴムボートで航行していた海上保安官が漁船に近づき、
声をかけた。
「命の危険がありますので、早めに撤収してください」
日本政府は昨年9月11日、
尖閣諸島を民間の所有者から購入、
国有化した。
それ以降、
周辺海域の様相は大きく変わった。
中国公船の接続水域での航行は常態化し、
領海侵入も8月31日までに59回に上った。
ほぼ6日に1回という高い頻度だ。
台風が通過するなど大荒れの天候とならない限り、
居座り続けている。
「明らかに日本の領土である尖閣諸島の周辺の海域に、
わが者顔で中国公船が航行している。憤りを感じずにはいられない」。
警備に携わった経験のある海上保安官は本音を漏らす。
海保によると、
中国公船が日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国漁船への立ち入り検査をするような動きや、
事前通告のない海洋調査とみられる航行も確認された。
海保では中国側がこれらの活動を通じて尖閣の領有権を主張しているとみている。
幹部は
「国家の明確な意図を持って自らの主張を既成事実化しようとしている」
と危ぶむ。
尖閣を管轄する11管の大型巡視船は計7隻。
常時5隻程度展開する中国公船に11管だけで対応するのは難しく、
海保は全国の海上保安本部から巡視船を順次派遣し、
「冷静に、理性的に警備に当たってきた」(幹部)。
中国側の挑発には乗らず、
巡視船は退去や調査中止を繰り返し呼びかけてきた。
「尖閣周辺では、
一つのミスが国際的な衝突に発展する。
感情を極力抑え、
無用な衝突を避ける努力をしてきた」。
警備に携わる海保幹部は話す。
現場の海上保安官は、
巡視船から無線などを通じて何時間でも粘り強く説得に当たる。
冬の荒波にもまれる狭い船室内で双眼鏡片手に長時間の監視を強いられたり、
真夏の炎天下のゴムボート上に何時間も立っている海上保安官もいる。
「限られた空間の中で極度の緊張を長期間強いられる。
だれもがストレスを抱えている」。
現場を知る海上保安官は本音を漏らす。
過酷な任務を支えるのは、
海上保安官の「士気」だ。
こうした中、8月1日付で海上保安大学校出身の佐藤雄二長官(59)が就任。
国土交通省のキャリア官僚の指定席だった長官ポストに、
初めて“制服組”が就いた。
海保幹部は「現場派がトップと聞き、
血がわくほど士気が上がった」と話す。
佐藤長官は尖閣での指揮経験もあり、
現場の苦労を最もよく知る幹部の一人だ。
前線での警備だけでなく、
給油や飲食物の手配、
停泊場所の確保といった作業に携わる海上保安官の努力も知っている。
「最前線だけが厳しいのではない。
後方支援も含め、
一丸となって危機に立ち向かう」。
佐藤長官は、
海保の団結力で難局に立ち向かう決意だ。
東シナ海南西部に位置し、
魚釣島や大正島、
久場島などから成る島嶼群。
沖縄県石垣市に属する。
日本政府は明治28(1895)年に沖縄県への編入を閣議決定し、
実業家に無償貸与した。
戦前はかつお節工場などがあったが、
昭和15年ごろに無人島に。
魚釣島、
北小島、
南小島の3島は長く民間人が所有、
国が賃借契約を結ぶ形で管理してきたが、
平成24年9月11日に国有化された
全国に11ある管区海上保安本部のうち、
沖縄周辺の海域を管轄し、
那覇市に本部を置く。
昭和47年の沖縄返還に伴って発足した。
本部の配下には、
尖閣警備の前線基地となっている石垣のほか、
中城、
那覇の計3つの海上保安部があり、
さらに宮古島、
名護の2つの海上保安署がある。
那覇海上保安部は、
本部の尖閣警備業務の負担軽減などのため、
今年5月にできた
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