2014年07月09日
婚姻関係がないと制度上 「生きづらい」
青森の女性カップル
婚姻関係がないと制度上
「生きづらい」
青森県青森市在住の女性2人が6月5日、
青森市役所に婚姻届を出しました。
しかし青森市は憲法を根拠に受理しませんでした。
同性パートナーの“結婚式”の例はありますが、
手続きとして婚姻届を出すのはこれまでに公表された例はないとされています。
婚姻届を出そうと考えた理由や思いについて、
当事者の2人がインタビューに応じてくれました。
問題提起をしたかった
―― 同性婚の婚姻届を出したのは2人が初めてですか?
田中さん 公表されていないだけで、他の人もやっていると思っている。
―― 同性婚は認められないと言われてきました。どうして手続きをしたのですか?
佐藤さん
私が誕生日で、
「やってみたいことがあるのだけど……
婚姻届を出してみたい」と田中さんに言ったのです。
そしたら「いいよ」って。
「同じ地域に住む者として、
役所の人に肌感覚として分かってほしくて、
届けを出してみたい」と言ったのです。
田中さん
同性パートナーでも“結婚式”をするなら、
“婚姻届”を出すのかなと思っていた。
でも、
みんなやってない。
私たちがやるなら何かを動かすとか、
社会啓発になるようなことをしたいと思った。
誰かが励まされるとか。
どこかで何かを伝えられるかな、と。
佐藤さん
問題提起というか、
疑問を発する。
それをしない行動に魅力を感じない。
自分たちが幸せでなければできないことだけど、
自分ごとだけで行動はできなかった。
憲法論議になることは望んでいない
―― 受理されないと思っていた?
田中さん 99.9%受理されないと思っていた。
同性婚に関して議論されているのは知っている。
でも、届
けを出した人の話を聞いたことがない。
佐藤さん
パートナー法
(同性婚を認める特別配偶者法)の
制定などで活動をしている弁護士さんでも
「出したらこうなるだろう」という推測はあった。
―― 受理されない理由が憲法第24条でしたよね?
田中さん
婚姻届を出したときに、
担当者が「お二人は戸籍上、
女性ですよね?」と言われた。
「婚姻に関しては(憲法第24条1項で)
『両性の合意による』
と言われているけれども、
私たち二人とも性を持っています」と私が言ったことから、
役所の人が憲法を理由に答えないといけないと思ったのかもしれない。
(「夫」や「妻」を「×」していたことから)
自分たちは書類不備で返されると思っていた。
憲法24条は同性婚を禁止する項目ではないという思いがある。
非常に曖昧。
だから、
この書類には相応の意味があるとも思った。ただ、
憲法で闘うのは本意じゃない。
佐藤さん
私たちは憲法議論になることは現状、
望んではいない。24条を変えるのは非常に危険もある。
婚姻の自由であるとか、
人の権利に関する項目だから。
田中さん
普通は全部書いてあるのに不受理ということはない。
理由も「憲法第24条第1項」と書いてある。
「第1項」 の「第」は要らないでしょ。
「第2項」 あの不受理証明自体が不備です。
来年も婚姻届を出しに行く
佐藤さん
待たされていたときに、
他の職員の人たちの
「珍しい人たちが来た」
みたいな対応が傷ついた。
田中さん
見に来て、
隠れるみたいな。
ちらっと、
つい立てみたいなのに隠れるんです。
佐藤さん
社会の中で(私たちのようなセクシャル・マイノリティーが)
存在することを当たり前に受け止めてもらえない。
こういう気持ちを味わなければならないことを再確認した。
田中さん
窓口に行く前に整理券をもらいますよね。
目的を言うのですが、
「婚姻届を出しに来た」と。
整理券を配る女性に
「おめでとうございます」
と言われるんですよね。
佐藤さん
無条件に。
田中さん
悪気がないのは分かるんだけど、
一般の人にとっては当たり前のことなんだなって。
―― それでも窓口担当職員には思いのひとかけらくらいは伝えられた
田中さん
窓口の人はすごくいい人だった。
差別的なことも言わなかったし、
「同性の方ですよね?」という、
その瞬間から理解してくれていた。
最後に、
なんでこの場所に来たのかを伝えた。
青森にもセクマイ(セクシャル・マイノリティ)はいるし、
制度を使えない人はいっぱいいる。
それを知ってほしかった。
そして
「また、来年も来ます」
と言ったんです。
佐藤さん
ずっとここにいるということを言い続けるし、
毎年、
名物みたいに見られても、
「まだ同性のパートナーはダメなんだ」
と窓口の人は思う。
もし10年とか何十年後かにOKになったとして、
私たちが窓口に行ったときに
「やっと受理できますね」
と言ってもらえる日が来たらいい。
婚姻関係ないと一緒にいられない場面がある
田中さん
私はもともと婚姻制度があまり好きじゃない。
けれど、
婚姻制度を使わないと生きづらい社会であることは確か。
昨年、
佐藤さんの母が亡くなって、
自発呼吸ができないときにも、血縁ですか?
と言われて、
わたしは血縁者じゃなかったのでそばにいられなかった。
佐藤さんは一人っ子で他に家族もいない。
その全部の判断を一人でしなければならなかった。
一緒にいられない場面があることを改めて実感した。
佐藤さん
新たに望ましい制度を作っていくことと、
今ある制度のどこを活用するのかは平行していると思う。
新しいもの、
使い勝手のいいものが作られればいいけど、
現状で言えば、
別の書類を何個も用意をしなければならない。
田中さん
緊急の時はいつ来るかわからない。
何種類の書類を常に携帯しておかないといけない。
それが「配偶者です」とか、
「夫です」「妻です」といえば、
救急車両にも乗れるし、
病院に付き添ったり、
駆けつけても病室にすぐ入れるし、
緊急の判断もできる。
法整備をするということ以上に、
役所の人にわかってほしかった。
異性間の事実婚と違う面がある。
また、
青森市の場合は、
公営住宅には同性パートナーは入居できない。
大半の自治体が、
同性の同居というのを公営住宅では認めていない。
でも、
事実婚はもちろん、
男女であれば婚約者でさえ認められているところが多い。
言いだしたらきりがない。
“事例”を各地で集めていく
―― 不受理後に残念会としてのパーティーを開きましたが、参加した人の反応は?
田中さん Facebookでは「おめでとう」と言ってくる人がいた。
すごい嫌だったんです。
でも、
言ってくれた人に対するものじゃない。
そもそも(受理されないので)結婚じゃないですから。
市役所に一緒に行ってくれた人は誰一人として
「おめでとう」
という言葉を口走らなかった。
でも
「ナイス、ファイト」
とは言われた。
佐藤さん
何と闘っているのか分からないけど、
世の中にいなくされている感とか。
びっくりしている職員たちに対して、
「これが当たり前の姿なんだ。
私たちは存在する」ってことの闘いだったし。
一緒に来てくれたある人は
「自分たちがしたら……」と、
同じような緊張感でいてくれた。
残念会のときは参加したみんなが一緒に悔しがったり、
「また来年も行くべ」という話をしていたり。
―― 今後は
田中さん
現状、
私たちにとっての選択は裁判ではないと思っている。
一個一個、課題に立ち向かうしかない。
そうした“事例”を各地で集めていくのもいいと思う。
果たして今後、
憲法判断になるのか、
戸籍法などの項目になるのか。
今回のことが他の役所の人たちにとっても考えるきっかけになるのではと思う。
こうした情報を集積していくことの必要性は感じている。
例えば、
財産関係など司法書士に公正証書を作成してもらう必要がある。
共同生活に関する合意事項などを作り、
配偶者と認められれば、
遺言書がなくても2分の1以上の相続分が法律で認められるし、
相続税も安くなる。
病気や交通事故で緊急で入院した場合でも、
手術等の治療方針に同意をすることもできる
長年、
検討課題だった非嫡出子の相続差別規定は最高裁で違憲判決(2013年9月4日)が出されて、
相続分が同等になりました。
憲法第14条1項の法の下の平等が根拠です。
青森市の女性2人は裁判ではなく、
ケースを積み上げて行こうとしています。
そして、
法整備が進むなどして、
窓口の職員に「おめでとう」と言われる日を待ち望んでいます。
日本ではこれまで積極的には論じられてこなかった同性婚の問題。
議論の行方が注目されます。
eca
婚姻関係がないと制度上
「生きづらい」
青森県青森市在住の女性2人が6月5日、
青森市役所に婚姻届を出しました。
しかし青森市は憲法を根拠に受理しませんでした。
同性パートナーの“結婚式”の例はありますが、
手続きとして婚姻届を出すのはこれまでに公表された例はないとされています。
婚姻届を出そうと考えた理由や思いについて、
当事者の2人がインタビューに応じてくれました。
問題提起をしたかった
―― 同性婚の婚姻届を出したのは2人が初めてですか?
田中さん 公表されていないだけで、他の人もやっていると思っている。
―― 同性婚は認められないと言われてきました。どうして手続きをしたのですか?
佐藤さん
私が誕生日で、
「やってみたいことがあるのだけど……
婚姻届を出してみたい」と田中さんに言ったのです。
そしたら「いいよ」って。
「同じ地域に住む者として、
役所の人に肌感覚として分かってほしくて、
届けを出してみたい」と言ったのです。
田中さん
同性パートナーでも“結婚式”をするなら、
“婚姻届”を出すのかなと思っていた。
でも、
みんなやってない。
私たちがやるなら何かを動かすとか、
社会啓発になるようなことをしたいと思った。
誰かが励まされるとか。
どこかで何かを伝えられるかな、と。
佐藤さん
問題提起というか、
疑問を発する。
それをしない行動に魅力を感じない。
自分たちが幸せでなければできないことだけど、
自分ごとだけで行動はできなかった。
憲法論議になることは望んでいない
―― 受理されないと思っていた?
田中さん 99.9%受理されないと思っていた。
同性婚に関して議論されているのは知っている。
でも、届
けを出した人の話を聞いたことがない。
佐藤さん
パートナー法
(同性婚を認める特別配偶者法)の
制定などで活動をしている弁護士さんでも
「出したらこうなるだろう」という推測はあった。
―― 受理されない理由が憲法第24条でしたよね?
田中さん
婚姻届を出したときに、
担当者が「お二人は戸籍上、
女性ですよね?」と言われた。
「婚姻に関しては(憲法第24条1項で)
『両性の合意による』
と言われているけれども、
私たち二人とも性を持っています」と私が言ったことから、
役所の人が憲法を理由に答えないといけないと思ったのかもしれない。
(「夫」や「妻」を「×」していたことから)
自分たちは書類不備で返されると思っていた。
憲法24条は同性婚を禁止する項目ではないという思いがある。
非常に曖昧。
だから、
この書類には相応の意味があるとも思った。ただ、
憲法で闘うのは本意じゃない。
佐藤さん
私たちは憲法議論になることは現状、
望んではいない。24条を変えるのは非常に危険もある。
婚姻の自由であるとか、
人の権利に関する項目だから。
田中さん
普通は全部書いてあるのに不受理ということはない。
理由も「憲法第24条第1項」と書いてある。
「第1項」 の「第」は要らないでしょ。
「第2項」 あの不受理証明自体が不備です。
来年も婚姻届を出しに行く
佐藤さん
待たされていたときに、
他の職員の人たちの
「珍しい人たちが来た」
みたいな対応が傷ついた。
田中さん
見に来て、
隠れるみたいな。
ちらっと、
つい立てみたいなのに隠れるんです。
佐藤さん
社会の中で(私たちのようなセクシャル・マイノリティーが)
存在することを当たり前に受け止めてもらえない。
こういう気持ちを味わなければならないことを再確認した。
田中さん
窓口に行く前に整理券をもらいますよね。
目的を言うのですが、
「婚姻届を出しに来た」と。
整理券を配る女性に
「おめでとうございます」
と言われるんですよね。
佐藤さん
無条件に。
田中さん
悪気がないのは分かるんだけど、
一般の人にとっては当たり前のことなんだなって。
―― それでも窓口担当職員には思いのひとかけらくらいは伝えられた
田中さん
窓口の人はすごくいい人だった。
差別的なことも言わなかったし、
「同性の方ですよね?」という、
その瞬間から理解してくれていた。
最後に、
なんでこの場所に来たのかを伝えた。
青森にもセクマイ(セクシャル・マイノリティ)はいるし、
制度を使えない人はいっぱいいる。
それを知ってほしかった。
そして
「また、来年も来ます」
と言ったんです。
佐藤さん
ずっとここにいるということを言い続けるし、
毎年、
名物みたいに見られても、
「まだ同性のパートナーはダメなんだ」
と窓口の人は思う。
もし10年とか何十年後かにOKになったとして、
私たちが窓口に行ったときに
「やっと受理できますね」
と言ってもらえる日が来たらいい。
婚姻関係ないと一緒にいられない場面がある
田中さん
私はもともと婚姻制度があまり好きじゃない。
けれど、
婚姻制度を使わないと生きづらい社会であることは確か。
昨年、
佐藤さんの母が亡くなって、
自発呼吸ができないときにも、血縁ですか?
と言われて、
わたしは血縁者じゃなかったのでそばにいられなかった。
佐藤さんは一人っ子で他に家族もいない。
その全部の判断を一人でしなければならなかった。
一緒にいられない場面があることを改めて実感した。
佐藤さん
新たに望ましい制度を作っていくことと、
今ある制度のどこを活用するのかは平行していると思う。
新しいもの、
使い勝手のいいものが作られればいいけど、
現状で言えば、
別の書類を何個も用意をしなければならない。
田中さん
緊急の時はいつ来るかわからない。
何種類の書類を常に携帯しておかないといけない。
それが「配偶者です」とか、
「夫です」「妻です」といえば、
救急車両にも乗れるし、
病院に付き添ったり、
駆けつけても病室にすぐ入れるし、
緊急の判断もできる。
法整備をするということ以上に、
役所の人にわかってほしかった。
異性間の事実婚と違う面がある。
また、
青森市の場合は、
公営住宅には同性パートナーは入居できない。
大半の自治体が、
同性の同居というのを公営住宅では認めていない。
でも、
事実婚はもちろん、
男女であれば婚約者でさえ認められているところが多い。
言いだしたらきりがない。
“事例”を各地で集めていく
―― 不受理後に残念会としてのパーティーを開きましたが、参加した人の反応は?
田中さん Facebookでは「おめでとう」と言ってくる人がいた。
すごい嫌だったんです。
でも、
言ってくれた人に対するものじゃない。
そもそも(受理されないので)結婚じゃないですから。
市役所に一緒に行ってくれた人は誰一人として
「おめでとう」
という言葉を口走らなかった。
でも
「ナイス、ファイト」
とは言われた。
佐藤さん
何と闘っているのか分からないけど、
世の中にいなくされている感とか。
びっくりしている職員たちに対して、
「これが当たり前の姿なんだ。
私たちは存在する」ってことの闘いだったし。
一緒に来てくれたある人は
「自分たちがしたら……」と、
同じような緊張感でいてくれた。
残念会のときは参加したみんなが一緒に悔しがったり、
「また来年も行くべ」という話をしていたり。
―― 今後は
田中さん
現状、
私たちにとっての選択は裁判ではないと思っている。
一個一個、課題に立ち向かうしかない。
そうした“事例”を各地で集めていくのもいいと思う。
果たして今後、
憲法判断になるのか、
戸籍法などの項目になるのか。
今回のことが他の役所の人たちにとっても考えるきっかけになるのではと思う。
こうした情報を集積していくことの必要性は感じている。
例えば、
財産関係など司法書士に公正証書を作成してもらう必要がある。
共同生活に関する合意事項などを作り、
配偶者と認められれば、
遺言書がなくても2分の1以上の相続分が法律で認められるし、
相続税も安くなる。
病気や交通事故で緊急で入院した場合でも、
手術等の治療方針に同意をすることもできる
長年、
検討課題だった非嫡出子の相続差別規定は最高裁で違憲判決(2013年9月4日)が出されて、
相続分が同等になりました。
憲法第14条1項の法の下の平等が根拠です。
青森市の女性2人は裁判ではなく、
ケースを積み上げて行こうとしています。
そして、
法整備が進むなどして、
窓口の職員に「おめでとう」と言われる日を待ち望んでいます。
日本ではこれまで積極的には論じられてこなかった同性婚の問題。
議論の行方が注目されます。
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