2017年01月24日
流線【第6話】
「お疲れさまでーす!!!」
「お疲れ―す」
メインの後にダウンで軽く400m近く、練習が終わった。
練習あとのプールサイドでは、練習の疲れをねぎらう言葉が飛び交う
2年生3年生はプールに備え付けのシャワーを浴びにゆき
一番下級生である1年生たちは
まだプールサイドで練習道具の後片づけをしている。
そんな中、同じ一年生であるはずの結城も
シャワーを浴びに行こうとするのが健吾の目に留まった。
他の一年生が片付けをしている中
そんなことをしようものならば、
3年生の逆鱗に触れ、結果的に
「悪いのは指導していない2年生だ。」
ということになり、飛び火して健吾たちも怒られかねない。
健吾は駆け足で、シャワーへと向かおうとする結城のもとへと向かいそのままの勢いで腕を取り
先輩たちの見えない壁の影まで引っ張っていった。
結城は少し驚きの意も込めた、不思議そうな顔をしている。
健吾は壁の裏にいるであろう先輩たちに声が聞こえないよう
自分の顔を結城に近づけ静かな口調で言った。
「(うちの部活は上下関係厳しいから、一年生一人でシャワー浴びるのは絞られるぞ)」
「(???)」
結城は健吾が言っていることがよくわかっていないようだった。
無言ではあったが、あまり変わらない表情で理解していないことがわかる
「まあ、つまりは。。。なんだ。。。」
健吾は少し言葉に詰まる。
「『1年生の片づけが終わるまでシャワー浴びるのは待て』ってことだ。」
「これがうちの決まりなんだ。すまんな」
健吾はコーチをやっていて指導をするしてはいるものの、水泳以外のことであまり後輩に注意するのは得意ではないようだった。
結城はまたも表情は変わらなかったが
今回は納得したようであり
体を翻して道具を片づけをしている一年生たちのもとへとゆっくりと歩いて行った。
(返事がないのはデフォルトなんだな)
もう少しコミュニケーションをとりたいところだとも思ったが、
結城もとりあえずは片付けに向かったので、
健吾は桐川の泳ぎに関して本人に言いたいことがあったので後ろに振り返ろうとした。
しかしその時、
一瞬だけ不意に
「・・・・じゃん。。。」
という声が
結城の方向から聞こえた気がした。
(・・・)
シャワーの方向に身を反転させようとしていた動きが一瞬だけ止まる
(気のせいか・・・???)
健吾は結局自分の勘違いということにしてシャワールームのほうへと向き、
気にせずに桐川を探しにシャワールームへと向かった。
シャワールームで桐川の姿を探す。
いない。
(更衣室か???)
更衣室へと向かう。
まだシャワーを浴び終わった数人しかいない更衣室の中で
桐川の姿を探す。
やはりいない。
すると健吾の肩に、シャワーの水でぬれたであろう
水浸しの手がかけられた。
「どしたん?」
セームで髪の毛をわしゃわしゃ拭きながら歩いてきた俊平だった。
(それ言うのにわざわざぬれた手をかける必要はないだろ)
健吾は俊平に対する軽い怒りを悟られないよう優しく俊平の手を振り払い
「桐川探してるんだが知らないか???」
と尋ねた。すると
「あーキリさんなら俺がシャワー浴び始める前にカバンもってとっとと出てったよ???」
と予想はしていなかったが確かに納得できる答えが返ってきた。
(にしても早すぎるだろう)
「競歩大会の次は早着替え大会かね?」
と俊平が冗談めかして言ってきたが
ここまでなんでも早いと、あながち否定できないかもしれない。
健吾はそう思った。
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