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2022年02月01日

頑張れガメオンズ

「本日をもって、我々ガメオンズは解散します。
 8年間応援ありがとうございました。」

みっちゃんと一緒に組んだガメオンズは今日解散することになった。
結成8年。いろいろなことがあったガメオンズが今日で終わる。

いつも真剣にお笑いに向き合ってきた。二人で夜遅くまでネタを書いたこともあった。
今思えばいい思い出ばかりだ。

俺たちは最初からコンビではなかった。元々は別々のコンビで俺とみっちゃんは活動していた。
俺は、前のコンビと1年もたたず解散している。理由は俺がネタを書かずダメ出しばっかりしているからだ。
「お前とはやっていけない」
人生で一番きつい言葉だ。今でも夢に出てくる。

ファミレスで一人うなだれていると、ちょうど隣の席でコンビをどうするかの話している2人組がいた。

「おれは、実家の畑を継ぎたいと考えてる。だからこれ以上一緒にやっていけない
 んだ。」
相方に解散を言われ、唯々黙っているだけの男が、のちにコンビを組むみっちゃん
こと、田中 光彦だ。
何も言い返さなかった。ただ黙ってジュースを見つめていた。

しばらくして、話が終わったのか、相方が席を立った。みっちゃんはそのまま黙って動かなかった。

俺はこの男がどうしても気になって仕方なかった。
声を掛けた。
「・・・なあ、ちょっといいか?」

みっちゃんは黙ってこちらを向いた。

「お前、俺と一緒に組まないか?実は俺も漫才やってて、この前相方に捨てられたんだ。」
「・・・・・。」

この時は気付かなかったが、みっちゃんは話下手で、コミュニケーションが取り辛いことがあった。

ほどなくして一緒にコンビを組むようになった。
名前はガメオンズ。ガメラみたいな存在になろうと思い付けた。あと俺とみっちゃんはどっちもガメラが好きだったので、この名前になった。

問題は事務所が違うことだった。俺は亜門興行。みっちゃんはワイワイ演劇という事務所に所属していた。

だが、こいつしかいない。俺は大手の亜門興行からワイワイ演劇に移った。
マネージャーといざこざがあったが、何とか穏便にことを済ませた。

「さて・・・。ガメオンズはこれからどうするか?ここが問題だな。売れるためにどんな賞レースにも参加しようと思う。もちろん営業もバンバン行く。とにかく
がむしゃらにやっていこう。」
みっちゃんはうんと頷いた。

基本的に俺たちはコントをやった。
ラーメン屋。水道工事、占い師、釣り人
色々なものをやった。

基本みっちゃんが台本を書いた。
みっちゃんが書く台本は、ストーリー性があって面白い。

タクシーのネタなんて、乗客が目的地を伝えたのに、全然聞いてくれない運転手という内容だ。
聞いていないのに、自分の話になると熱くなる厄介な運転手を俺がやった。
みっちゃんは、基本ツッコミ、というか戸惑いポジションである。

こうして俺たちはネタを作っては披露していった。

賞レースはいつも1回戦どまり。素人にも負ける始末。
「もう一回考え直したら?」

どこ行っても、それを言われてしまう。
みっちゃんのネタは完璧のはずだが、どこでもウケない。

「なーにがだめんんだろーな・・・」
設定がダメなのか、オチが悪いのか。

毎日悶々とした日を過ごした。

ある日、ショッピングモールの営業に行った。
いつものネタ2本と新ネタ1本入れることになった。

新ネタ?こんな当日に?
まさか当日に新ネタをするとは思っていなかった。

急いでみっちゃんが書いた台本に目を通す。
内容はスーパーの従業員がクレーマーに対処する話。

また妙にリアルだった。今回のネタは実体験みたいな話だった。

卵のパックが割れやすいからという理由でクレームを入れたお客に、店長が神回避するといった内容。

(いつも何でこんなリアルな話、書けるんだ?)

多分相当な人を見てきたんだと思う。
みっちゃんがどういう経緯で漫才師になろうと思ったのか、まだ知らない。

おっきい賞レースの予選が始まった。
もちろん俺たちもエントリーした。

予選1回戦。新作のコンビに店員のネタにした。ありがちだが、強盗を撃退する話にした。安パイのほうが、お客さんの反応もいいだろうし、安全に予選突破できるだろうと考えた。

結果は惨敗だった。素人にも負けた。早々に家に帰った。
何がダメだったのか全く見当がつかなかった。

みっちゃんはこの時から、芸人としてやっていけるのだろうかと心配するようになった。

お互い芸人としてどうするべきかわからなくなった。

苦労を重ね、1年が過ぎた。またあの賞レースの予選が始まる。

普通はここまでいろいろとネタを変えたり、工夫をこなす。
俺らガメオンズはそんな事一切しなかった。

同じネタで勝負した。あの時は客が悪かったから受けないんだ。本物が見れば絶対に面白いぞ。

結果は去年と同じだった。学生コンビにも負けた。

このころからみっちゃんと衝突することが増えた・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺はもともとお笑いが好きだった。小学生のころの夢は、お笑い芸人になることだった。
人を笑わせることが、とても快感だった。クラスの休み時間に、教壇でクラス中を笑わしたあの日。
あのことが忘れられず、いつかいろんな人を笑わせようと考えた。

高校になると、友達とコンビを組んで学園祭の舞台に立った。結果は大滑り。
散々だったが、逆に自信がついた。俺はこの道で食っていこう。

周りは反対した。そんなもので食っていけるはずがない。考え直せと。
親も教師もみな同じ意見だった。

ただ純粋に人を笑わせたい。そんなのが否定された気がしてとても嫌だった。
将来なんてわかるはずがない。なら、好きなことをして何が悪いんだ?

そんな反抗心で、家には帰らなかった。ずっと外にいた。勝手に養成所の申し込みをし、勝手に芸人になった。

養成所はみな同じ気持ちのような人が集まっていた。好きでお笑いをやろうとするひとたち。
一つだけ違うのは、化け物みたいに面白い人間ばっかりだったこと。人間いったいどう生きたらそんなに面白い事思いつくのか。
最初の授業で、皆の実力が試されたが、皆面白かった。

初めて自分は平凡な人間なんだと思い知らされた。それでも必死に養成所で学んだ。

だが、いざコンビを組むと何もできなかった。ネタが書けなかった。
何か面白いことが浮かんでも、否定されるんじゃないかと思うと書けなかった。

結果、前のコンビとは解消となった。だが、今度は違う。ガメオンズはそういうのはなしで、お互い協力しあえるコンビにしたい。


みっちゃんはお笑いに興味なかった。もともと本が好きな少年だった。
おれとは正反対の人間だ。

クラスでは変わり者扱いされていたらしい。勉強はそこそこできたらしい。
中学、高校ともに進学校だ。

そんな彼がお笑いに興味を持ったのは、友達の学園祭に遊びに行った、もとい強制的に連れてこられたところでみたお笑いライブらしい。

今までお笑いというものを見たことない男だ。それはとても衝撃的だったらしい。

僕がしたいことは、これじゃないか?
みっちゃんはその時に、自分の運命を感じたという。

みっちゃんは大学進学を諦めて、お笑い養成所に通おうとしたが、入った事務所には養成所がなかった。
なので、先輩芸人の付き人として活動していた。

何年か付き人をしていると、先輩の提案で相方を紹介してくれた。
だが、結局長くは続かなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
みっちゃんは意外とお笑いにストイックな男でもあった。
自分はお笑いのセンスがあるほうだと思っていたが、圧倒的に上だった。

ネタを考えるのは、みっちゃんだった。おれはみっちゃんに頼り切りになっていた。
自分ではネタが書けない。そんなことはわかっている。しかし、みっちゃんの才能に嫉妬している自分もいた。

そんな状態が続くと、なかなか物事がうまくいかない。当然ミスもするし、ネタが滑ることも多くなった。

あいつが悪い。そんな感じの喧嘩が増えた。
いつからか、みっちゃんとは話をするのをやめた。

打合せはマネージャーが一人一人個別に行った。

もう限界だろう。お互いわかっていた。
今度の単独ライブで、今年中に解散することを発表しよう。

久々の単独ライブ。お客さんはそこそこ集まった。事務所の関係者も多く見に来ていた。

だが、もうどうだってよかった。俺とみっちゃんは年内に解散することを決断していたのだ。

「えー、本日はお集まりいただき、ありがとうございました。ガメオンズはなんだかんだ8年活動してきました。これといった賞レースにも勝てず、知名度もいまいちです。我々は、芸人として限界を感じました。そこで、10月末で、我々ガメオンズは解散することになりました。今まで応援してくださり、ありがとうございました。」





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posted by bokusyo at 16:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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