はなしあいて

人の娘だった時の自分はもう消え去った

自分の名前さえ知ってる人もほとんどいない

生まれ育った姓が、旧という形になって消え

親に名づけてもらった名前も、知ってる人が

どんどん、減っていく

それが自然で当然で何も疑問に思わなかった時期もある

その頃は、パートナーが、子供が、私を求めてくれていた

だから、夢中で生きてきた

優しく年月が過ぎ、自分の名前を忘れそうになるほどの時間

２０年くらいが過ぎている

いろんなことがあった、いろんな思いをしてきた

元気でこうしていることは本当に幸せだ

そんな今だから、ふと、思ったのだ

自分という存在について、わたしって一体なんなのか

私は何のために、これから生きていくのか

配偶者の身の回りのことをしていて

子供も独立して、ふたりだけの食卓で

なぜ、私は、ただ座っているだけの人を前にして

食事を準備してテーブルに運んでるのか

先に食べ終わった人の置きっぱなしにしてる食器を見ながら

やっと、座って食べてるのに、もうテーブルにはひとりだけ

まるで女中さんみたいだなと、思ってしまったのだ

休みの日には、寝そべってスマホをいじってる人を見ながら

ひとりで、家事をしていることが我慢できず、掃除も洗濯も

その人の前ではしなくなった

配偶者にとっては、親がやってくれたことを私がやっていて当然だろうが

私は、他人の世話することに幸せは感じない

こんな毎日でこれからの人生が過ぎていくなんて、絶対にいやだ

私は

誰かの奥さんでも、どこ家の嫁でもない

ちゃんと、名前があるんだ、わたしにはわたしの人生があり

わたしは、幸せに生きる権利があるんだ

嫁だから、妻だから、母だから、もう若くないからと言って

私は、私という個人であって

都合のいい時だけ取り出せる万能なロボットではないんだ

わたしが私のために生きて何が悪い

嫁だろうが妻だろうが母だろうが５０代だろうが

楽しいことは楽しいし、嬉しいことは嬉しい

我慢する必要なんかどこにもないんだ

わたしは、私という存在、自分のためにたった一度の人生を

楽しく生きていい

それが幸せと思えることを、どんどんやっていこうと

決めた