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2018年04月22日
神戸市×リバプール市交流フォーラム「クリエイティブスペースが都市に与えるインパクト」4/28(土)
以下英語によるイベント情報です。→4/28(土)
以前リサーチの為長期滞在していたリバプール市の政策に関するイベントです。リバプール市は19世紀は港湾都市・工業都市として栄え、英国の産業革命の発祥の地と言われる地域の一角を占めています。世界で初めての本格的な鉄道はリバプールとマンチェスターを結ぶ路線からスタートしました。
しかし20世紀にはいると衰退の兆候を見せ始め、ビートルズが世に出た頃には主要な産業は英国南部に移転した後でした。しかし、この歴史が逆にリバプール市をアート、住宅、社会政策の先進都市としてして押し上げることになります。今回のフォーラムは「クリエイティブスペースが都市に与えるインパクト」というテーマでアートが地域活性化に果たす役割について議論します。
フォーラムは無料で、英語の同時通訳が付いています。
神戸市×リバプール市交流フォーラム「クリエイティブスペースが都市に与えるインパクト」
http://kiito.jp/schedule/lecture/article/28124/
How to invent the Future(未来の創り方)
https://078kobe.jp/events/5576/
【このカテゴリーの最新記事】
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4/26(木)朝英語の会梅田のテーマ:女性と相撲 ―「伝統」の定義
4/26(木)の朝英語の会梅田は「女性と相撲」の問題で問われる「伝統」の「定義」または「言説―Discourse」について議論します。
仏語discours(ディスクール〈英語のdiscourseに相当〉)の訳語にあたる「言説」は、まだ日本人に馴染みの薄い定義ですが、欧米の社会科学の分野では「Power-権力」を論じるにあたって非常に重要な概念となっていますので、ここで取り上げたいと思います。
言説という概念はフランスの著名な哲学者であるPaul-Michel Foucault (1926 – 1984)によって広く知られるようになった概念です。非常に複雑な概念ですが、簡単に言ってしまうと、ある「言葉」を誰がどのように「定義」しているかを見ることで、その言葉を利用する、そしてされる人々の力関係が決まる、といったことです。
この最も分かりやすい例が、プロバガンダと呼ばれているものです。例えばイスラム過激派のテロ集団は、様々なテロ活動を「ジハード=聖戦」と呼んで正当化してきました。被害者にとっては憎むべき卑劣な犯罪も、「聖戦」という言葉により、この「戦い」は過去の欧米の帝国主義による植民地支配の怨念を晴らすものだという高貴なものに浄化されます。日本やドイツのファシズムもこの言説の利用無くしては成立しませんでした。
そして、何故、この「言説と伝統」が問題になるかというと、多くの場合「伝統」は「歴史的に認められた守るべき文化遺産である」という定義が関係者=Stakeholderの間で広く共有され、それ故にその「伝統」が守られ続け、その伝統を利用する立場にある者の権力を強化する歴史があったからです。その最たるものが「王家」「王制」であり、王は神の使者として、その権力を誇示し、一般民衆を支配してきました。
現代においても「伝統」という言葉が広く他者を支配する手段として利用されてきたという主張をしているのが、「The Invention of Tradition」の著者、Eric Hobsbawmです。Hobsbawmはこの「伝統の定義」に疑義を示し、我々が伝統として信じているものの多くは比較的歴史が浅く、実際は時の権力者の都合の良い様に新たに「創作された伝統」であることが多々あると著書のなかで論じています。
先日、相撲の土俵内で救急救命中の女性が土俵から出るように促されたことが、大きな事件として取り上げられました。日本相撲協会が土俵内における女性排除の「伝統の重要性」を論ずる一方、多くの人々が実はかなり近年まで「女性力士」が存在したことを取り上げ、土俵内の女人禁制の「伝統の正当性」を厳しく批判しています。
このように「言葉の定義」というものは様々な角度から検証される必要があります。「Discourse」による「Tradition」の再定義は我々のCritical Thinkingのスキルを鍛えるための絶好の教材であるといえます。皆さんの議論を期待しています。
当日利用する記事はこちら。
Let’s discuss women and sumo.
https://www.japantimes.co.jp/life/2018/04/16/language/lets-discuss-women-sumo/#.WtwylciFPIV
以下、議論の為の参考文献です。
The Guardian紙
Women ordered off stage at sumo contest after trying to help stricken mayor
https://www.theguardian.com/world/2018/apr/05/women-ordered-off-stage-at-sumo-contest-after-trying-to-help-stricken-mayor
ミシェル・フーコー
Foucault: power is everywhere: understanding power for social change
http://www.powercube.net/other-forms-of-power/foucault-power-is-everywhere/
知恵蔵の解説(コトバンクより抜粋)
「言説」とは文字通り「言葉で説くこと、説くその言葉」の意であるが、言語・文化・社会を論じる用語としての語義はそれとは大きく異なる。批評用語としての「言説」は、仏語discours(ディスクール〈英語のdiscourseに相当〉)の訳語として成立した。元来、「演説、スピーチ、発言、論」を意味したdiscourseには、1960年代以降、ミシェル・フーコーの言う「特定の社会的・文化的な集団・諸関係に強く結びつき、それによって規定される、言語表現、ものの言い方」の含意が加えられた。それを受けて、今日「言説」(discours)は、ある「もの言い」の文化的、社会的文脈の意で使われることが多い。(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)
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2018年04月08日
4/12 (木)朝英語の会梅田:花粉症について
今年は桜の開花が早く、お花見シーズンも終わりに近づきつつあります。4月になり、日本での新年度が始まりました。「朝英語の会」梅田@スタートアップカフェ大阪も昨年3月末に始まったことから、この4月で1周年ということになります。先日記念として初めてプレスリリースを発行させていただきました。初めてなので、書き方や手続き、仕組み等不慣れなこともありましたが、良い経験でした。もし自分で出してみたいという方がおられたら、会の当日質問にお答えします。ちなみに同時期に、日本語・英語合わせて5本のプレスリリースを執筆しました。発行する前は、大変だなと思いましたが、一度自分で経験してみると後は意外とスムーズです。「習うより慣れろ」の精神で、今年も「英語で議論する会」を続けていきたいと思います。
以下発行したプレスリリースです。FacebookやTwitterでシェアしていただければ幸いです。
『朝英語の会』梅田 @スタートアップカフェ大阪〜The Japan Times 紙記事について議論する〜開催1周年!
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180330/prl1803301802205-n1.htm
さて、次回は多くの皆さんが悩まされている花粉症―Hay Feverです。住む地域にもよりますが、北米や欧州では、あまり悩まされずにいたので、日本では対策が大変です。特に今年はかなり症状が悪化している人が多いそうですが、理由は下記のニュースを見ればわかります。
ヒノキ花粉が急増 都内で記録的飛散量(動画)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180408/k10011394841000.html
また、花粉症の最新治療法に関しては以下の記事がありました。
花粉症の最新治療 薬・レーザー・舌下免疫療法
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_394.html?utm_int=detail_contents_news-link_001
Hay Fever (English)
https://www.emedicinehealth.com/hay_fever/article_em.htm
4/12(木)に利用する記事はこちらです。
Let’s discuss hay fever
https://www.japantimes.co.jp/life/2018/04/02/language/lets-discuss-hay-fever/#.Wsm7eohubIU
それでは、皆様とお会いできるのを楽しみにしています。
タグ:花粉症
2018年03月14日
3/22(木)朝英語の会梅田のテーマ:旅券と査証〜国境を超える自由について考える
3/22(木)の「朝英語の会梅田」は「パスポート指標」―その旅券を所持することによって得られる移動の自由度を表す指標―から「旅」「国際的な移動の自由」「市民権(国籍)」について議論します。
日本かシンガポールの旅券を所有していれば、世界180ヶ国に査証なしで訪問出来る―旅券による移動の自由度を表すHenley & Partners Passport Indexで日本とシンガポールが同時に1位になりました。インデックスの詳細に関しては下記を参照して下さい。
The 2018 Henley Passport Index
The Japan Times紙の記事は日本がこの指標でトップになった理由を詳細に説明しています。しかし、私はむしろ、何故このようなインデックスが発表されるようになったのかについて、たいへん興味を持ちました。たしかに、査証が不要になれば、旅行できる機会も増えます。旅が好きな人・海外出張が多い人にはこのような旅券は非常に有難いものです。また、特定の国の旅券保持者に対して、査証を緩和することにより、その対象国からの訪問客から得られる観光収入を増やすことが出来ます。近年、日本に海外からの観光客が増加した理由の一つに日本が査証要件を緩和したことが挙げられています。
「何故、国際的な移動の自由度が重要か?」という質問に対して、この指標を発表している法律事務所のHenley & PartnersはHPで以下の様に説明しています。
Why global mobility matters today
「経済のグローバル化に伴い、査証を必要としない国際的な移動の自由度が増してきた。あらゆる経済的地位の人々が、ビジネスやキャリアやライフスタイルの変化に応じて、頻繁に国境を超え、自由に移動することを求めるようになってきている。特に経済的に豊かな層ほど、その人のルーツやネットワーク、資産、或いは市民権さえも、複数の国にまたがり、その活動はコスモポリタンと言えるほどになっている。」
これは私が今まであまり考えたことのなかった視点です。確かに近年、見聞きするニュースから私たちは「移民=経済的機会を求めて先進国にやってきた恵まれない人々」という風な古いステレオ・タイプを抱きがちです。しかし、広く世界を見渡してみると、単なる出張や観光にとどまらず、経済的に恵まれた層は海外で教育を受け、そしてその経験を活かして、グローバル・レベルでビジネスを展開しているのが現実です。また私自身も長くEUの主要都市であるロンドンに暮らしましたが、まさに欧州を始め、世界中から、ビジネス、教育、観光のために様々な国の人々が訪問・滞在するコスモポリタンな都市でした。そして、留学や駐在等の比較的、短期間の滞在をきっかけに、職を得たり、投資をしたりして、最終的には英国に移住する決断をしたEU圏を始めとする移民の人々にも数多く出会っています。このような移民や各国からの訪問者が都市、そしてその国の経済の活性化に大きく貢献しているのは間違いありません。そして、Henley & Partners法律事務所は、そのように外国に投資したり、あるいは他国への移住を考えている経済的余裕を持つ人々に助言を与えるコンサルティング業を営む法律事務所なのです。
Henley & Partners
ただ、残念なことに近年、日本人の可処分所得は下降の一途をたどり、海外旅行者数や旅券の取得率も減少していると聞きます。そして、近年多くの人が問題視しているのが、日本が未だに二重国籍を認めていない事です。「日本人」と紹介されたノーベル賞を受賞するような優秀な研究者や作家がこの制限から「日本国籍」を捨てざるを得なかったことは記憶に新しいと思います。また、羽生結弦選手のような日本のトップアスリートの多くが、海外にトレーニングの拠点を置いているのが現状です。もし、日本が二重国籍を認めないなら、今後も優秀な才能の海外流出は止まらないでしょう。
「朝英語の会梅田」の参加者は海外志向の方が多く、また参加者の方の大半が過去海外で仕事をしていたり、留学していたという経験を持っています。次回、皆さんと「旅」にまつわる様々な逸話を話しあえるのを楽しみにしています。
次回の朝英語の会の記事は以下のサイトから、閲覧可能です。
Let’s discuss passports and visas
See you soon!
世界最大の口コミ旅行サイト
タグ:国境を超える自由
2018年03月03日
3/8(木)朝英語の会梅田のテーマ:学校の役割と制服、個性及び地域特性について
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3/8(木)の朝英語の会梅田のテーマが決まりました。SNS上で大きな話題を呼び、メディアでも何度か取り上げられた銀座の公立小学校、泰明小学校が「9万円のアルマーニ」を標準服として採用した件です。
Let’s discuss that Armani school uniform
泰明小学校の校長は「子ども達の日常の振る舞い、言葉遣い、学校社会という集団の中での生活の仕方など、どのような思いや願いがあって本校を選択されたのかが分からない」から、この小学校の生徒としてのプライドを持たせるためにアルマーニの標準服を採用したと説明しています。また「服育」という概念を使い、「ファッション」が人間の行動を変えるという理論を持ち出してこの標準服の役割を擁護しています。
なぜアルマーニ監修の標準服に? 泰明小校長は、こう保護者に説明した(全文)
実際、「マイフェアレディ」「プリティウーマン」「王子と乞食」など、映画や小説の中でファッションを中心にして、それを着用した人物の行動様式が次第に「成功者」のそれに変わっていくというストーリーがあります。また、「シャネルスーツ」「ミニスカート」の誕生に見られるように女性の社会進出や自己表現の自由とファッションが歴史的に綿密に結びついていることも事実です。
しかし、今回は標準服ですが、学校の制服には大きな違いがあります。まず、生徒は原則、自分で通学する学校の制服を選べないということです。特にこの学校は児童数が極端に少ない地域とは言え、公立小学校ですから、この地域に住む児童はほぼ自動的にこの学校に通学することになります。また身なりの規制や強制は「自己表現の自由」とは真逆の立場にあり、生徒の個性を抑圧することにもつながります。実際、私が通っていた公立中学は当時の学校のルールでは男子は全員丸刈りでしたし、公立高校はパーマを禁止していました。それ故に厳しい服装規定があり、私はこの「管理社会」という点で学校が嫌いでした。この観点からみると「服育」の目的とは何か疑問が残ります。
また、批判が寄せられたのは公立小学校であるにもかかわらず、9万円台と破格の価格設定の標準服が採用されたこと、そして、その決定のプロセスが保護者には十分に説明がなく、学校内でも議論がほとんどされてなかったことです。わが国ではこの20年、経済格差が拡大し、子供の貧困が大きな社会問題となっています。その時代に高価な制服が公立小学校に導入されることに疑問を持った人が大勢いたのも当然です。そして、何より、その決定のプロセスが透明ではなかったのですから、校長は批判されても仕方がないでしょう。
一式9万円の「アルマーニ標準服」 泰明小の校長「価格の条件付けず、交渉もしなかった」
一方、アルマーニの標準服を「保護者は全員購入した」「銀座という地域特性や他の名門小学校との競争上やむを得ない」という意見もある様です。
泰明小「アルマーニ」は本当に"高すぎる"のか〜中央区立小学校の標準服の実態とは?
実は「学校の制服に反対か賛成か」という設問はTOEFLやIELTSなどの英語試験に頻繁に採用されている問題です。それぞれの決定に様々な長所と短所があるからです。大変興味深いテーマです。皆さんの次回の議論に期待します。
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3/8(木)の朝英語の会梅田のテーマが決まりました。SNS上で大きな話題を呼び、メディアでも何度か取り上げられた銀座の公立小学校、泰明小学校が「9万円のアルマーニ」を標準服として採用した件です。
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泰明小学校の校長は「子ども達の日常の振る舞い、言葉遣い、学校社会という集団の中での生活の仕方など、どのような思いや願いがあって本校を選択されたのかが分からない」から、この小学校の生徒としてのプライドを持たせるためにアルマーニの標準服を採用したと説明しています。また「服育」という概念を使い、「ファッション」が人間の行動を変えるという理論を持ち出してこの標準服の役割を擁護しています。
なぜアルマーニ監修の標準服に? 泰明小校長は、こう保護者に説明した(全文)
実際、「マイフェアレディ」「プリティウーマン」「王子と乞食」など、映画や小説の中でファッションを中心にして、それを着用した人物の行動様式が次第に「成功者」のそれに変わっていくというストーリーがあります。また、「シャネルスーツ」「ミニスカート」の誕生に見られるように女性の社会進出や自己表現の自由とファッションが歴史的に綿密に結びついていることも事実です。
しかし、今回は標準服ですが、学校の制服には大きな違いがあります。まず、生徒は原則、自分で通学する学校の制服を選べないということです。特にこの学校は児童数が極端に少ない地域とは言え、公立小学校ですから、この地域に住む児童はほぼ自動的にこの学校に通学することになります。また身なりの規制や強制は「自己表現の自由」とは真逆の立場にあり、生徒の個性を抑圧することにもつながります。実際、私が通っていた公立中学は当時の学校のルールでは男子は全員丸刈りでしたし、公立高校はパーマを禁止していました。それ故に厳しい服装規定があり、私はこの「管理社会」という点で学校が嫌いでした。この観点からみると「服育」の目的とは何か疑問が残ります。
また、批判が寄せられたのは公立小学校であるにもかかわらず、9万円台と破格の価格設定の標準服が採用されたこと、そして、その決定のプロセスが保護者には十分に説明がなく、学校内でも議論がほとんどされてなかったことです。わが国ではこの20年、経済格差が拡大し、子供の貧困が大きな社会問題となっています。その時代に高価な制服が公立小学校に導入されることに疑問を持った人が大勢いたのも当然です。そして、何より、その決定のプロセスが透明ではなかったのですから、校長は批判されても仕方がないでしょう。
一式9万円の「アルマーニ標準服」 泰明小の校長「価格の条件付けず、交渉もしなかった」
一方、アルマーニの標準服を「保護者は全員購入した」「銀座という地域特性や他の名門小学校との競争上やむを得ない」という意見もある様です。
泰明小「アルマーニ」は本当に"高すぎる"のか〜中央区立小学校の標準服の実態とは?
実は「学校の制服に反対か賛成か」という設問はTOEFLやIELTSなどの英語試験に頻繁に採用されている問題です。それぞれの決定に様々な長所と短所があるからです。大変興味深いテーマです。皆さんの次回の議論に期待します。
タグ:制服の役割
2018年02月19日
2/22(木)「朝英語の会梅田」のテーマ:#MeToo に関する世代間ギャップについて
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2/22(木)「朝英語の会梅田」に利用する記事が発表されました。テーマは「#MeToo に関する世代間ギャップについて」下記リンクをクリックすると記事に移行します。
Let's discuss divisions between younger and older women over #MeToo | The Japan Times
昨年秋にThe New York Times紙が複数の女優の証言によりハリウッドの大物プロデューサーであったハービー・ワインスタイン氏の長年にわたる性的暴行を含む様々なハラスメント行為を紙面で告発しました。この記事をきっかけとして、これまで長らく沈黙していた様々な業界の性的ハラスメント被害者による告発の動きがSNSで一気に世界中に広まりました。告発の対象となった人物は芸能界、メディア、アート、政界、スポーツ界で地位を確立している大物が多く、その影響力は今年に入ってもまだ衰えることを知りません。
2018年は英国で女性の参政権100周年を記念する多くのイベントが行われていますが、フェミニズムのムーブメントにはいくつかの波があると言われています。70年代のウーマン・リブ運動以降はフェミニズムの動きは比較的緩やかで、その前の二つの大きな波に比べれば、その影響はゆっくりと進行、あるいは停滞しているといった具合に取られていた時期もあったと思います。しかし、今回の#Metoo運動の動きはセクシャル・ハラスメントの告発に留まらず、男女の賃金格差など、これまで進展が遅れていた労働問題にも波及してきています。これもやはりメディア発になりますが、米国民放番組の司会者やBBC放送の中国局長が過大な男女間の賃金格差を告発し、雇用者はその修正を余儀なくされています。
このようにフェミニズムの新しい波になりそうな勢いの#Metoo運動ですが、世代間あるいは文化間ではその波及の度合いや解釈には大きな違いが見受けられるようです。
まず口火を切ったのはフランスの著名な文化人や女優のグループが#Metoo運動に対して「清教徒的」「男性からの誘惑の自由」を訴えたケースがありました。またこれらの文化人の年齢層が1970年代の性の自由やウーマンリブを経験した比較的年齢層の高い世代であったため、フェミニズムに関する世代間のギャップを論じたのが今回のThe Japan Times紙の記事です。
The New York Timesの #Metoo 運動に関する世代間の考え方の違いを論ずる対談記事もありますので、参考情報として以下リンクを貼ります。メディア・エディターとして働く女性3人(20代、30代、50代)が議論しているものです。
The #MeToo Moment: Parsing the Generational Divide
一方、私が関心を持ったのはどちらかというと、#Metoo 運動に関する文化間のギャップです。最初に公にこの運動に異論を唱えたのが著名なフランス文化人だったというのも象徴的であったと思います。わが国でも少なからずこの#Metoo 運動の社会への影響はあったと思いますが、まだ以下に紹介する記事の中に出てくるWhisper(囁き)のレベルのようです。記事では、米国・スウェーデン・ハンガリー・バルカン半島から4人の識者が #Metoo 運動の功績と限界について執筆しています。文化ごとに違う問題のインパクトとそれに対する社会の反応を冷静に分析した良質な記事です。
Where to for #MeToo?: Four writers assess the movement’s impact in the US and Europe
特に旧社会主義国であった国々の状況は保守的な日本と少し似ている部分がありました。The New School, New YorkのClaire Potter教授はまた、この記事のなかの彼女の寄稿部分に以下のタイトルをつけており、セクハラは単に性的暴力の問題でなく、改めてthe abuse of powerの問題であり、男性中心の組織文化の改善にフォーカスすることを強調していたのが印象的です。
A lot of things are broken: Why focusing on sex won’t fix sexual harassment
男女同権が世界で最も進んでいる国の一つと思われるスウェーデンでさえもこの#Metoo運動は大きな影響を与えたようで、昨秋以来、多くの告発が行われたようです。筆者はやはり現在の組織のリーダーシップのモデルが攻撃的な男性性を備えた人物としてイメージされていることが問題だとも述べていました。この新しいフェミニズム運動に関して異なる文化的背景を持つ4人の識者の話には「日本の現況をどのように改善していくのか」についての大きなヒントが含まれているように感じました。
皆さんの今週の議論に期待しています。
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2018年02月11日
西宮国際交流デー 2018年2月25日(日)10時〜16時
西宮国際交流デーが開催されます。
詳細は以下のとおり:
2018年2月25日(日)10時〜16時
場所:フレンテ西宮4階、5階
西宮市国際交流協会
http://www.nishi.or.jp/contents/0004169000020012800950.html
インターナショナルカフェ、バザーなど
@にしのみや留学生スピーチ大会 10時半〜12時半
A民族音楽パフォーマンス 14時〜15時半
タグ:国際交流
2018年02月03日
2/8(木)朝英語の会梅田のテーマ:小室哲哉氏の引退の波紋〜メディアの役割&介護家族へのサポート
The Japan Times On Sunday
来週2/8(木)の「朝英語の会梅田@スタートアップカフェ大阪」は小室哲哉氏の引退に関わる様々な社会的問題について論じます。利用する記事は1/30に紙面で発表された以下のものです。
Let’s discuss Tetsuya Komuro’s retirement
https://www.japantimes.co.jp/life/2018/01/29/language/lets-discuss-tetsuya-komuros-retirement/#.WnV6QaiWbIV
成功と名声をを欲しいままにした才能溢れる音楽家である小室氏の私生活に関するスキャンダルがスクープされました。その結果として「小室氏引退」となったわけですが、ここ数年日本のメディア報道が陥っているお決まりのバターンがあります。まず週刊誌が勢いのある有名人の醜聞、特に男女関係のものをスクープし記事にする。→それがTVのワイドショーで繰り返し取り上げられ、SNS等でも拡散する→スクープされた当人が何らかの謝罪をしたり、経歴詐称や違法性のある場合はしばらく活動を停止する、といった具合です。
しかし、小室氏のスキャンダル報道には、これまでとは違う4つの要素がありました。何より小室氏が90年代の日本の音楽シーンに大きな影響を与えた超大物アーティストであったこと、2番目に若くして病気を患い介護が必要になった才能ある歌手だった妻の存在、そしてご当人も病気を患い、妻の看病と合わせて心身ともに疲弊していたこと、そしてこの醜聞を契機として引退を表明したことです。
小室氏の今回の引退騒動には以下の複数の考えるべきテーマがあると思います。
1. メディアの役割とは何か?
個人の醜聞をも商業的娯楽として消費していくのか。 或いはメディアはまだ権力の番犬として公人(有名人?)が不当に権力を乱用するのを阻止する力を持っているのか?後者はハリウッドの大物プロデューサーであったハービー・ワインスタイン氏がニューヨークタイムズ紙の調査報道により過去の不当行為の告発を受けたことから始まったMetooムーブメントが良い例です。
2. 言論の自由
民主主義国では言論の自由が保障され、その自由な言論活動により、権力を監視し、エンターテインメントをはじめとする市場経済活動を発展させてきたという自負があります。ただ、近年問題になってきているのは言論の自由の名のもとにメディアは個人のプライバシーを暴き、それを流布する権利があるのかということです。 公私の活動の境界線は何処にあるのか。また、近年は一般人がSNSでも簡単に情報を拡散できるようになったのですが、デマやヘイトスピーチなど、明らかに「言論の自由」と「公共の利益」「社会的弱者の利益」が相反する事態になってきています。私達はどのようにそれと折り合いをつけていくのでしょうか?
3. 社会的包摂―新しい社会政策
また小室氏の事件で見逃せないのは引退に至った個人的・社会的背景です。妻の看護と自分自身の病気を抱えて小室氏自身は相談相手も少なく、深い孤独に悩まされていたのではないかということです。小室氏の引退は彼のように経済的に恵まれた人でも介護者には大きな精神的・肉体的負担があるということを改めて社会に認識させることになりました。社会問題となっている介護離職を防ぐための介護家族へのサポート 、心のケア 、要介護者への更なる支援 、孤独感への対処やそれを支える地域 コミュニティの役割なども見直していく必要がありそうです。また働き方改革と一体になったワークライフバランスの課題もこの議論に含まれると思います。
以上ざっと議論の要点を挙げていきましたが、参考になるような記事は以下のとおりです。
Loneliness: The cost of the 'last taboo'
http://www.bbc.com/news/education-41349219
英国で孤独担当大臣が創設され、孤独を放置する社会的コストを一人当たり6千ポンド(約94万円)と算出。またチャリティ活動や社会福祉が日本よりはるかに充実している英国でさえ、孤独は最後のタブー。小室哲哉さんの引退から考えるべき日本の社会政策の未来。
「働く世代」の介護者、支援も手薄で「孤独」...小室さんの苦悩、他人事ではない
https://www.bengo4.com/internet/n_7355/
「男性による介護」という観点から 小室哲哉 さんの会見を見つめ直してみました。介護の専門家が、ある経験者の気づきとして紹介してくれた話。「介護にブレーキをかけるものは『世間体、見栄、男独特のプライド、他人との比較』の4つ」
Celebrity Chasing Online
http://www.pewresearch.org/fact-tank/2008/04/04/celebrity-chasing-online/
2008年の米国の調査ですが、ネット人口の36%が有名人の情報を検索エンジンで調べたことがあると回答。
Publics Globally Want Unbiased News Coverage, but Are Divided on Whether Their News Media Deliver
http://www.pewglobal.org/2018/01/11/publics-globally-want-unbiased-news-coverage-but-are-divided-on-whether-their-news-media-deliver/
世界中の人々が偏見のない報道を望んでいるが「主要なメディアの報道姿勢に満足しているか」については意見が分かれている。特に米国では意見が大きく対立。特定の主義主張に偏った報道には不満
Media and celebrity: production and consumption of "well-knownness".
http://www.biomedsearch.com/article/Media-celebrity-production-consumption-well/244276463.html
有名人とメディアの関係性、その消費に関する学術論文
皆さんの当日の議論に期待しています。
The Japan Times PLUS
来週2/8(木)の「朝英語の会梅田@スタートアップカフェ大阪」は小室哲哉氏の引退に関わる様々な社会的問題について論じます。利用する記事は1/30に紙面で発表された以下のものです。
Let’s discuss Tetsuya Komuro’s retirement
https://www.japantimes.co.jp/life/2018/01/29/language/lets-discuss-tetsuya-komuros-retirement/#.WnV6QaiWbIV
成功と名声をを欲しいままにした才能溢れる音楽家である小室氏の私生活に関するスキャンダルがスクープされました。その結果として「小室氏引退」となったわけですが、ここ数年日本のメディア報道が陥っているお決まりのバターンがあります。まず週刊誌が勢いのある有名人の醜聞、特に男女関係のものをスクープし記事にする。→それがTVのワイドショーで繰り返し取り上げられ、SNS等でも拡散する→スクープされた当人が何らかの謝罪をしたり、経歴詐称や違法性のある場合はしばらく活動を停止する、といった具合です。
しかし、小室氏のスキャンダル報道には、これまでとは違う4つの要素がありました。何より小室氏が90年代の日本の音楽シーンに大きな影響を与えた超大物アーティストであったこと、2番目に若くして病気を患い介護が必要になった才能ある歌手だった妻の存在、そしてご当人も病気を患い、妻の看病と合わせて心身ともに疲弊していたこと、そしてこの醜聞を契機として引退を表明したことです。
小室氏の今回の引退騒動には以下の複数の考えるべきテーマがあると思います。
1. メディアの役割とは何か?
個人の醜聞をも商業的娯楽として消費していくのか。 或いはメディアはまだ権力の番犬として公人(有名人?)が不当に権力を乱用するのを阻止する力を持っているのか?後者はハリウッドの大物プロデューサーであったハービー・ワインスタイン氏がニューヨークタイムズ紙の調査報道により過去の不当行為の告発を受けたことから始まったMetooムーブメントが良い例です。
2. 言論の自由
民主主義国では言論の自由が保障され、その自由な言論活動により、権力を監視し、エンターテインメントをはじめとする市場経済活動を発展させてきたという自負があります。ただ、近年問題になってきているのは言論の自由の名のもとにメディアは個人のプライバシーを暴き、それを流布する権利があるのかということです。 公私の活動の境界線は何処にあるのか。また、近年は一般人がSNSでも簡単に情報を拡散できるようになったのですが、デマやヘイトスピーチなど、明らかに「言論の自由」と「公共の利益」「社会的弱者の利益」が相反する事態になってきています。私達はどのようにそれと折り合いをつけていくのでしょうか?
3. 社会的包摂―新しい社会政策
また小室氏の事件で見逃せないのは引退に至った個人的・社会的背景です。妻の看護と自分自身の病気を抱えて小室氏自身は相談相手も少なく、深い孤独に悩まされていたのではないかということです。小室氏の引退は彼のように経済的に恵まれた人でも介護者には大きな精神的・肉体的負担があるということを改めて社会に認識させることになりました。社会問題となっている介護離職を防ぐための介護家族へのサポート 、心のケア 、要介護者への更なる支援 、孤独感への対処やそれを支える地域 コミュニティの役割なども見直していく必要がありそうです。また働き方改革と一体になったワークライフバランスの課題もこの議論に含まれると思います。
以上ざっと議論の要点を挙げていきましたが、参考になるような記事は以下のとおりです。
Loneliness: The cost of the 'last taboo'
http://www.bbc.com/news/education-41349219
英国で孤独担当大臣が創設され、孤独を放置する社会的コストを一人当たり6千ポンド(約94万円)と算出。またチャリティ活動や社会福祉が日本よりはるかに充実している英国でさえ、孤独は最後のタブー。小室哲哉さんの引退から考えるべき日本の社会政策の未来。
「働く世代」の介護者、支援も手薄で「孤独」...小室さんの苦悩、他人事ではない
https://www.bengo4.com/internet/n_7355/
「男性による介護」という観点から 小室哲哉 さんの会見を見つめ直してみました。介護の専門家が、ある経験者の気づきとして紹介してくれた話。「介護にブレーキをかけるものは『世間体、見栄、男独特のプライド、他人との比較』の4つ」
Celebrity Chasing Online
http://www.pewresearch.org/fact-tank/2008/04/04/celebrity-chasing-online/
2008年の米国の調査ですが、ネット人口の36%が有名人の情報を検索エンジンで調べたことがあると回答。
Publics Globally Want Unbiased News Coverage, but Are Divided on Whether Their News Media Deliver
http://www.pewglobal.org/2018/01/11/publics-globally-want-unbiased-news-coverage-but-are-divided-on-whether-their-news-media-deliver/
世界中の人々が偏見のない報道を望んでいるが「主要なメディアの報道姿勢に満足しているか」については意見が分かれている。特に米国では意見が大きく対立。特定の主義主張に偏った報道には不満
Media and celebrity: production and consumption of "well-knownness".
http://www.biomedsearch.com/article/Media-celebrity-production-consumption-well/244276463.html
有名人とメディアの関係性、その消費に関する学術論文
皆さんの当日の議論に期待しています。
The Japan Times PLUS
2018年01月17日
1/25(木)朝英語の会梅田のテーマ:緊急地震速報システムと阪神淡路大震災の教訓
英語学習ならThe Japan Times On Sunday
1/25(木)の朝英語の会梅田@スタートアップカフェ大阪のテーマは緊急地震速報(警報)及び(予報)についてになりました。くしくも本日1月17日は1995年の阪神淡路大震災から23周年の記念日となっています。2011年の東日本大震災、2016年の熊本大震災と大規模な災害が続いている日本ですが、阪神淡路大震災は何より戦後大きな経済的成功を収めた日本が初めて経験した大都市直下型地震であり、その被害の大きさの為に復興には大きな困難が伴ったことで、我々の災害への取り組み方に大きな影響を及ぼしました。
防災関連の施策や取り組みが繰り返し叫ばれる日本ですが、まだまだ非常時の備えは十分ではないようです。これは人間の心理だと思うのですが、やはり「事故」や「災害」「病気」「死」といった最悪の事態を我々は考えないように生きているのだと思います。私には以前「不安神経症」に悩まされている欧州在住の友人がいました。彼は飛行機や高速列車などを利用する前には必ず何処かで見た事故映像のフラッシュバックが襲ってくるらしく、欧州内の移動は通常飛行機になるので、出張を伴う仕事を遂行する上で様々な困難を抱えていました。研究者によると、遠い昔まだ近代文明が確立されていない時期は人間も他の動物の様に様々なリスクに晒され、それを絶えず意識して生活していたので、彼が悩まされていたパニックアタックはその時代の動物としての人間の本能の名残だと説明しています。彼のような精神状態でもない限り、近代文明のもたらす利便さを日々享受し、動物としての本能を失った我々先進国の人間は「最悪の事態」は直ぐには起こり得ないと考えて毎日行動しているようです。
The Japan Times PLUS
しかし、近年の地震の多さや様々な予測から見る限り、日本に近い将来大地震が起こり得るリスクが存在することは明白な事実です。そこで、日本の気象庁が力を入れているのが、2007年から導入している以下の緊急地震速報です。
緊急地震速報(警報)及び(予報)について
http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/shikumi/shousai.html
運用から10年が経過したとはいえ、そのシステムの精度にはまだまだ改良が必要で、今年初めに比較的小さい地震にもかかわらず大地震であると警報が発動され、東京方面の電車内ではパニック状態に陥った乗客もいたかと思います。地震の予知がまだ難しく、このような誤報によって不要な混乱を引き起こすのを好ましくないと考えている人も多いようです。
それでも昨年起こったメキシコ大規模地震ではその規模にもかかわらず、犠牲者が非常に少なく、これは直前の地震警報システムが一定の役割を果たしたと評価されているようです。
An earthquake early warning system helped Mexico City. Trump's budget would kill it in the US
https://qz.com/1082191
また米国西部も地震の多発地帯として知られていることから、日本やメキシコのような地震警報システムを求める声もあります。
The United States Needs an Earthquake Warning System Already
https://www.wired.com/story/the-united-states-needs-an-earthquake-warning-system-already/?mbid=social_twitter_onsiteshare
過度に不安を煽ることは問題かもしれませんが、便利さに慣れ切った我々の生活を見直すためにも過去の災害の経験談を聞く事や避難訓練、警報システムの整備は今後も地道に続けていく必要がありそうです。
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1/25(木)の朝英語の会梅田@スタートアップカフェ大阪のテーマは緊急地震速報(警報)及び(予報)についてになりました。くしくも本日1月17日は1995年の阪神淡路大震災から23周年の記念日となっています。2011年の東日本大震災、2016年の熊本大震災と大規模な災害が続いている日本ですが、阪神淡路大震災は何より戦後大きな経済的成功を収めた日本が初めて経験した大都市直下型地震であり、その被害の大きさの為に復興には大きな困難が伴ったことで、我々の災害への取り組み方に大きな影響を及ぼしました。
防災関連の施策や取り組みが繰り返し叫ばれる日本ですが、まだまだ非常時の備えは十分ではないようです。これは人間の心理だと思うのですが、やはり「事故」や「災害」「病気」「死」といった最悪の事態を我々は考えないように生きているのだと思います。私には以前「不安神経症」に悩まされている欧州在住の友人がいました。彼は飛行機や高速列車などを利用する前には必ず何処かで見た事故映像のフラッシュバックが襲ってくるらしく、欧州内の移動は通常飛行機になるので、出張を伴う仕事を遂行する上で様々な困難を抱えていました。研究者によると、遠い昔まだ近代文明が確立されていない時期は人間も他の動物の様に様々なリスクに晒され、それを絶えず意識して生活していたので、彼が悩まされていたパニックアタックはその時代の動物としての人間の本能の名残だと説明しています。彼のような精神状態でもない限り、近代文明のもたらす利便さを日々享受し、動物としての本能を失った我々先進国の人間は「最悪の事態」は直ぐには起こり得ないと考えて毎日行動しているようです。
The Japan Times PLUS
しかし、近年の地震の多さや様々な予測から見る限り、日本に近い将来大地震が起こり得るリスクが存在することは明白な事実です。そこで、日本の気象庁が力を入れているのが、2007年から導入している以下の緊急地震速報です。
緊急地震速報(警報)及び(予報)について
http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/shikumi/shousai.html
運用から10年が経過したとはいえ、そのシステムの精度にはまだまだ改良が必要で、今年初めに比較的小さい地震にもかかわらず大地震であると警報が発動され、東京方面の電車内ではパニック状態に陥った乗客もいたかと思います。地震の予知がまだ難しく、このような誤報によって不要な混乱を引き起こすのを好ましくないと考えている人も多いようです。
それでも昨年起こったメキシコ大規模地震ではその規模にもかかわらず、犠牲者が非常に少なく、これは直前の地震警報システムが一定の役割を果たしたと評価されているようです。
An earthquake early warning system helped Mexico City. Trump's budget would kill it in the US
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また米国西部も地震の多発地帯として知られていることから、日本やメキシコのような地震警報システムを求める声もあります。
The United States Needs an Earthquake Warning System Already
https://www.wired.com/story/the-united-states-needs-an-earthquake-warning-system-already/?mbid=social_twitter_onsiteshare
過度に不安を煽ることは問題かもしれませんが、便利さに慣れ切った我々の生活を見直すためにも過去の災害の経験談を聞く事や避難訓練、警報システムの整備は今後も地道に続けていく必要がありそうです。
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2018年01月10日
1/11(木)朝英語の会梅田のテーマ:顔認証技術と個人情報について
The Japan Times On Sunday
新年あけましておめでとうございます。
2018年の最初の朝英語の会梅田のテーマが発表されました。今回は2020年の東京オリンピックに導入が検討されている顔認証に関する技術についてです。東京オリンピックの開催が2年後に迫っています。しかし開催直前の平昌オリンピックも含めて、まだまだ政治危機及びそれがもたらす経済リスクに関して予断を許さない状態が続いています。スポーツに関する投資やビジネス、それが生み出す様々なベネフィットも期待されるのですが、このような国際大会の開催には以前にも増して多様なインフラの整備やマネジメントが求められるようになってきています。その中で今回取り上げられたトピックはスポーツ大会等のセキュリティ面を確保するための技術です。
残念ながら、ミュンヘン・オリンピックやボストン・マラソンなど、大規模スポーツイベントにおけるテロ対策は現代では必要不可欠です。また現代社会においては、あらゆる場所へのアクセスに本人確認が必要となり、認証方式が交換不能な生態認証に進化していっています。東京オリンピックだけでなく、日本ではゴールデン・スポーツイヤーと呼ばれ、来年にはラグビーワールド・カップ、2021にはマスターズ・ゲームとこれらをてこにした新たなビジネス・モデルが期待されています。
セキュリティの問題だけでなく、チケットの販売、交通、出入国の審査、買い物など今後あらゆる場面で顔認証を始めとするIT技術が進化していくでしょう。
Facial Recognition Is Only the Beginning: Here’s What to Expect Next in Biometrics on Your Phone
Paying with Your Face〜Face-detecting systems in China now authorize payments, provide access to facilities, and track down criminals. Will other countries follow?
それでも生態認証を利用したIT技術は政府や企業に個人情報へのアクセス権を与えることになり、その管理の手法・安全性が問われることになります。意図しない情報漏洩のリスクだけでなく、過去の苦い経験から権力によるプライバシーの侵害なども懸念されています。約70年前に未来のディストピアを描いた傑作として古典となった「1984」でジョージ・オーウェルは全体主義国家における先端技術を利用した監視社会の怖さを描いています。実際、顔認証システムが高度に発達した中国では、この技術は政府が国内の人々の活動の監視を強化するために使われるのではないかと懸念する研究者もいます。
In China, facial recognition is sharp end of a drive for total surveillance
事実、先日男女の賃金格差の問題でBBC中国の編集局長を辞任したキャリー・グレイシー女史は中国駐在時のジャーナリストに対する様々な監視活動他取材への妨害などの問題をBBCのラジオ番組で赤裸々に語っていました。このようなサーベイランスに生体認証システムから得られた個人情報が使われたとしても不思議ではありません。また認証システムとして最も安全と思われた顔認証システムでさえも簡単にハッキングが可能である事が先日中国で行われたエキジビジョンで紹介されていました。
BBC Woman's Hour (Podcast)
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09kq14q
1964年の東京オリンピック時には国家予算に匹敵するくらいのインフラ投資が世界銀行からの借款を通じて実行され,その投資がその後の日本の経済成長を支えたといいます。我々は2020年の東京オリンピックを日本の未来を変える祭典に出来るでしょうか。日本人の真価が問われています。
新年あけましておめでとうございます。
2018年の最初の朝英語の会梅田のテーマが発表されました。今回は2020年の東京オリンピックに導入が検討されている顔認証に関する技術についてです。東京オリンピックの開催が2年後に迫っています。しかし開催直前の平昌オリンピックも含めて、まだまだ政治危機及びそれがもたらす経済リスクに関して予断を許さない状態が続いています。スポーツに関する投資やビジネス、それが生み出す様々なベネフィットも期待されるのですが、このような国際大会の開催には以前にも増して多様なインフラの整備やマネジメントが求められるようになってきています。その中で今回取り上げられたトピックはスポーツ大会等のセキュリティ面を確保するための技術です。
残念ながら、ミュンヘン・オリンピックやボストン・マラソンなど、大規模スポーツイベントにおけるテロ対策は現代では必要不可欠です。また現代社会においては、あらゆる場所へのアクセスに本人確認が必要となり、認証方式が交換不能な生態認証に進化していっています。東京オリンピックだけでなく、日本ではゴールデン・スポーツイヤーと呼ばれ、来年にはラグビーワールド・カップ、2021にはマスターズ・ゲームとこれらをてこにした新たなビジネス・モデルが期待されています。
セキュリティの問題だけでなく、チケットの販売、交通、出入国の審査、買い物など今後あらゆる場面で顔認証を始めとするIT技術が進化していくでしょう。
Facial Recognition Is Only the Beginning: Here’s What to Expect Next in Biometrics on Your Phone
Paying with Your Face〜Face-detecting systems in China now authorize payments, provide access to facilities, and track down criminals. Will other countries follow?
それでも生態認証を利用したIT技術は政府や企業に個人情報へのアクセス権を与えることになり、その管理の手法・安全性が問われることになります。意図しない情報漏洩のリスクだけでなく、過去の苦い経験から権力によるプライバシーの侵害なども懸念されています。約70年前に未来のディストピアを描いた傑作として古典となった「1984」でジョージ・オーウェルは全体主義国家における先端技術を利用した監視社会の怖さを描いています。実際、顔認証システムが高度に発達した中国では、この技術は政府が国内の人々の活動の監視を強化するために使われるのではないかと懸念する研究者もいます。
In China, facial recognition is sharp end of a drive for total surveillance
事実、先日男女の賃金格差の問題でBBC中国の編集局長を辞任したキャリー・グレイシー女史は中国駐在時のジャーナリストに対する様々な監視活動他取材への妨害などの問題をBBCのラジオ番組で赤裸々に語っていました。このようなサーベイランスに生体認証システムから得られた個人情報が使われたとしても不思議ではありません。また認証システムとして最も安全と思われた顔認証システムでさえも簡単にハッキングが可能である事が先日中国で行われたエキジビジョンで紹介されていました。
BBC Woman's Hour (Podcast)
http://www.bbc.co.uk/programmes/b09kq14q
1964年の東京オリンピック時には国家予算に匹敵するくらいのインフラ投資が世界銀行からの借款を通じて実行され,その投資がその後の日本の経済成長を支えたといいます。我々は2020年の東京オリンピックを日本の未来を変える祭典に出来るでしょうか。日本人の真価が問われています。