2017年11月19日
4-3-1. 欧州政策決定指標(2017年11月版)
聞いた話ですが、カラスは人まねをして話せるそうです。宅配業者が「ピンポーン」とチャイムが鳴らすと、屋根のカラスが「はーい」と返事をするようになって困った家さえあるそうです。
ウソに決まっています。
もし本当なら、日本中でそういうことが見られるはずです。だってカラスです。
さて、EURに関する限りプロの通貨という印象があります。
実際、多くのトレンド転換のきっかけは、指標への反応よりも為政者の意図を汲み取って生じがちです。もちろん、そんなことは、EURだけでなく、USDやJPYやGBPやAUDでも起きます。がしかし、EURはそういうことが多い(指標結果の影響力が他の通貨に比べ小さい)という話です。
ところが、欧州では多くの国の政府や中銀の幹部が毎日のようにどこかで何か言っていて、それらをいちいち把握できません。経済指標への反応は素直であっても、その影響時間が短かかったり、初期反応からの反転率が高かったりするのは、そのせいだと考えています。
欧州では、独英仏といった国が南欧・東欧を支援しているという構図がありました。英国はEUを抜けるのでもう関係ないものの、英国が抜けて独仏で同じだけの支援を続けるためには、単純計算でこれまでより独仏の負担が1.5倍になってしまいます。そんなことが続けられるかどうかは、かなり疑問があります。
ECBが償還分を再投資なんてことになると、その資産内容が南欧・東欧分に振り向けられる可能性があります。ECBがそうした国の国債購入比率を高めることは、実質的に財政支援・援助に当たります。それではECBの資産内容が悪化するものの、独仏で支援が選挙の争点になるよりマシです。だから、英国が抜けた負担増は、いずれECBが埋めるのではないでしょうか。
でもそれは、結局、独仏の負担増になるので、うそばっかりなのですが。
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
そして10月26日のECB理事会では、前回予告通りに緩和縮小を決定しました。その要点は次の通りです。
すなわち、現在、月600億EURの資産購入ペースを2018年1月から300億EURへと半減し、その買入期限を2018年9月まで延長(従来は2017年末に買入終了)し、QE終了後にも償還期限を迎えた債券は再投資するというものです。
ECB総裁は、テーパーリングでなくダウンサイジングという言葉を使ったそうです。
(分析事例) ECB金融政策(2017年10月26日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0で、それには僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
10月17日に発表されたZEWは、期待指数が17.6と前回を上回りました。
次回は12月12日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
10月24日に発表された10月分速報値は、製造業・サービス業ともにやや前回を下回りました。
11月24日に発表された11月分速報値は、製造業が62.5、サービス業が54.9で、いずれも前回を上回りました。
次回12月分速報値は12月14日に発表されます。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年10月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
9月25日に発表された9月分景況感は116.7で、直近ピークを上回りました。
10月25日に発表された10月分景況感指数は117.5で、直近ピークを上回りました。
11月24日に発表された11月分景況感指数は117.5で、過去最高の水準を更新しました。
独国の企業景況感は絶好調とも言える状況です。
次回12月集計分は、12月14日に発表予定です。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年9月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。4月分のHICPこそ1.9%に達したものの、最近は1.5%付近で停滞しています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。
次回速報値の発表は11月30日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
11月2日に発表された独国10月分雇用統計の結果は、失業率が5.6%、失業者数前月差は△1.1万人でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
10月31日に発表された欧州9月分失業率は+8.9%でした。各国平均で8.9%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は11月30日です。
ウソに決まっています。
もし本当なら、日本中でそういうことが見られるはずです。だってカラスです。
さて、EURに関する限りプロの通貨という印象があります。
実際、多くのトレンド転換のきっかけは、指標への反応よりも為政者の意図を汲み取って生じがちです。もちろん、そんなことは、EURだけでなく、USDやJPYやGBPやAUDでも起きます。がしかし、EURはそういうことが多い(指標結果の影響力が他の通貨に比べ小さい)という話です。
ところが、欧州では多くの国の政府や中銀の幹部が毎日のようにどこかで何か言っていて、それらをいちいち把握できません。経済指標への反応は素直であっても、その影響時間が短かかったり、初期反応からの反転率が高かったりするのは、そのせいだと考えています。
欧州では、独英仏といった国が南欧・東欧を支援しているという構図がありました。英国はEUを抜けるのでもう関係ないものの、英国が抜けて独仏で同じだけの支援を続けるためには、単純計算でこれまでより独仏の負担が1.5倍になってしまいます。そんなことが続けられるかどうかは、かなり疑問があります。
ECBが償還分を再投資なんてことになると、その資産内容が南欧・東欧分に振り向けられる可能性があります。ECBがそうした国の国債購入比率を高めることは、実質的に財政支援・援助に当たります。それではECBの資産内容が悪化するものの、独仏で支援が選挙の争点になるよりマシです。だから、英国が抜けた負担増は、いずれECBが埋めるのではないでしょうか。
でもそれは、結局、独仏の負担増になるので、うそばっかりなのですが。
【4-3-1.(1) 政策決定指標】
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
そして10月26日のECB理事会では、前回予告通りに緩和縮小を決定しました。その要点は次の通りです。
すなわち、現在、月600億EURの資産購入ペースを2018年1月から300億EURへと半減し、その買入期限を2018年9月まで延長(従来は2017年末に買入終了)し、QE終了後にも償還期限を迎えた債券は再投資するというものです。
ECB総裁は、テーパーリングでなくダウンサイジングという言葉を使ったそうです。
(分析事例) ECB金融政策(2017年10月26日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
【4-3-1.(2) 財政政策】
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
【4-3-1.(3) 景気指標】
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
(3-1) 独国ZEW景況感調査
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0で、それには僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
10月17日に発表されたZEWは、期待指数が17.6と前回を上回りました。
次回は12月12日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
(3-2) 独国PMI速報値
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
10月24日に発表された10月分速報値は、製造業・サービス業ともにやや前回を下回りました。
11月24日に発表された11月分速報値は、製造業が62.5、サービス業が54.9で、いずれも前回を上回りました。
次回12月分速報値は12月14日に発表されます。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年10月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
(3-3) 独国Ifo景況指数
9月25日に発表された9月分景況感は116.7で、直近ピークを上回りました。
10月25日に発表された10月分景況感指数は117.5で、直近ピークを上回りました。
11月24日に発表された11月分景況感指数は117.5で、過去最高の水準を更新しました。
独国の企業景況感は絶好調とも言える状況です。
次回12月集計分は、12月14日に発表予定です。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年9月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
(3-4) 欧州PMI速報値
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
【4-3-1.(4) 物価指標】
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。4月分のHICPこそ1.9%に達したものの、最近は1.5%付近で停滞しています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。
次回速報値の発表は11月30日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
【4-3-1.(5) 雇用指標】
11月2日に発表された独国10月分雇用統計の結果は、失業率が5.6%、失業者数前月差は△1.1万人でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
10月31日に発表された欧州9月分失業率は+8.9%でした。各国平均で8.9%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は11月30日です。
以上
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