2019年03月29日
27年間で賃金の上昇僅か7万円その原因は何?
27年間で上昇した年収はわずか7万円?なぜ、日本の賃金は上昇しないのか。
1990年代以降の日本の賃金はほとんど上昇してこなかった。
バブル崩壊による景気後退の影響があったとはいえ、欧米の先進国と比較して日本の賃金が低迷を続けていることは明らかで、その原因はどこにあるのか。
平成の30年間で上昇した賃金はわずかしかない。
1990年の平均給与は425万2000円
1997年の467万3000円をピークに下がり始める。
2017年は432万2000円となる。
1990年からの27年間で、上昇したのはわずか、7万円
1997年=100に対して実質賃金指数
・スウェーデン……138.4
・オーストラリア…… 131.8
・フランス……126.4
・イギリス(製造業)……125.3
・デンマーク……123.4
・ドイツ……116.3
・アメリカ……115.3
・日本……89.7
1997年から19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇している
日本は1割以上も下落している。
日本の賃金が上昇しない原因については、5つの段階に分けて考えると、
1、労働組合の弱体化
日本はバブル崩壊によって1990年代以降、景気後退を余儀なくされた。
欧米のように、景気低迷に対しては人員カットではなく、雇用を維持し賃金で調整する方法がとられた。
労働組合も、クビよりも給料を下げることに同意し、日本特有の労使関係ができあがった。
欧州もアメリカも必要とあれば労働組合も整理解雇を認めるというスタンスだ。
日本とは違って欧米諸国は問題を先送りにしないという姿勢
労働組合は自分たちの組合員を守るために、会社側=経営陣に忖度し、会社側の要望を聞き入れる体質になってしまった。
日本の労働組合は、企業ごとの企業内組合が一般的であり、欧州などの産業別労働組合とは異なる。
企業内組合の場合、経営陣との交渉の中できちんとした行動を起こせないという構造的な弱点があり、業績が悪化すれば、素直にベースアップの減額にも応じてしまう。
2、非正規雇用者の増加
小泉政権時代の労働者派遣法の改正によって、日本の雇用形態は大きな変革を迫られ、賃金の低い非正規雇用者を雇いやすくなった。
実質賃金低迷の原因として、人件費を削減して、業績悪化から企業を守った。
日本企業があの時期にもっと海外にきちんと進出していれば、日本企業はもっと成長したし、グローバルな企業に成長できたのかも?
3、少子高齢化の影響
日本の少子高齢化の影響は、重大
データで見るアベノミクスの成果は
●完全失業率……4.3%(2012年12月)→2.5%(2018年11月)、25年ぶりの低い水準
●有効求人倍率……0.83倍(同)→1.63倍(同)、1974年1月ぶりの高水準
●正社員の有効求人倍率……0.50倍(同)→1.13倍(同)、データ収集以来初の1倍
●就業者数……6271万人(2012年)→6522万人(2017年)251万人増、5年連続で増加、「所得環境」も大きく改善
●名目雇用者報酬……252.7兆円(2012年10-12月期)→282.7兆円(2018年7−9月期)30兆円増
●賃金改定でベースアップを行った企業の割合(一般職)……12.1%(2012年)→29.8%(2018年)。2.5倍、春闘の賃上げ率は5年連続で今世紀に入って最高水準
●最低賃金(加重平均額)……749円(2012年度)→874円(2018年度)125円増
●パート時給(前年比)……0.6%(2012年)→2.4%(2017年)1.8%上昇
新規雇用者数の伸びは、人口減少に対応するために非正規雇用や女性のパートタイマー従業員を増やした結果であり、完全失業率の低下や有効求人倍率の上昇は人手不足の表れ
外国人労働者を受け入れる枠を拡大したことで、政府もすでに人手不足が深刻であることは認めている。
60歳もしくは65歳でリタイアしていた高齢者が、ここにきて60歳で低賃金の雇用者に格下げされ、本来なら65歳で完全リタイアだった高齢者が、格安の賃金でいまだに働き続けている、自営業や中小企業の従業員だった人は、低賃金のまま働き続けることを余儀なくされている。
4、内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者
人手不足といわれる業界は、サービス業など生産性が低迷、コンビニ業界で24時間営業の見直しもあるが、粗利益の6割も取るような高いロイヤルティーは、従業員の低賃金や人手不足問題の要因
コンビニ業界にとって、ロイヤルティーの引き下げは難しいが、日本の少子高齢化で、人手不足で改革を迫られる
バブル崩壊以前は、社員こそ最大の資源、という具合に会社も賃上げに積極的だった。優秀な人間は、一生をかけてでも育て上げていく、というのが日本企業の大きな特徴だった。
バブル崩壊以後は雇用さえ確保しておけば、賃上げなんていう贅沢は言わせない、という雰囲気に変わってきた。
労働組合が弱体化したのをいいことに、企業は内部留保を貯め込んだ。
貯めた内部留保で、日本を飛び出して、新たなビジネスを求めて海外に進出すればよかったが、そうしなかった企業も多い。
企業が持つ利益剰余金は446兆4844億円に達しており、金融、保険業を含めれば507兆4454億円となり、初めて500兆円の大台を超えている。
1年分のGDPに匹敵する余剰金だ。
5、規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷
企業経営者や行政の怠慢によって、適正な価格競争が起こらなかった結果
通信や交通エネルギーなどの公共料金分野は、規制緩和の遅れで現在も新規参入を阻害し価格の抑制や引き下げが遅れ、価格が上がらなかったことで顧客満足度が増し、製品やサービスの価格が低く抑えられたまま。
そのツケが、従業員の賃金の上昇を抑えてきた、スーパーやコンビニ、スマホ(通信)、宅配便、外食産業といった業種は、極めて便利で安価なサービスなのだが、その背景にあるのが低賃金で働く従業員でありパートタイマーだ。
日本国民は極めて素直で、従順な民族だから、政府が一定の方向性を示すと素直に従う習慣があり、実質賃金が上昇しない背景には、過去の雇用政策や法改正が大きな影響を与えている。賃金より雇用という大きな流れの中で、我慢し続けている国民がいる。
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