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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2
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2009年02月06日
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 居車喬編 part3
更衣室で慣れない他人の水着に歩美が難儀し、『先に行ってていい』と言われた喬は一人で先に屋内プールへと出てきていた。
そこでは多数の競泳部員や水泳部員が、あるものは大会のため、あるものは自己鍛錬のために泳ぎ回っていた。
もう初冬に入り始めているというのに、こうして寒さを気にせず泳ぐことが出来る学園の温水プールを喬はいたく気に入っていた。


ここに来れば寒さも何も気にせずいつまでも泳ぐことが出来るのだ。喬自身は別に寒かろうがどこだろうが泳ぐのだが、流石に雨や雪が降っていたりしては泳いだ後に風邪を引いてしまう。









「あっ、先輩が来たわよ〜〜。みんな寄って〜〜〜!」












後輩の誰かが気がついたのか、喬の顔を見た途端プールの中にいる競泳部員達に声をかけた。
ただ、全部で6コースあるプール内で競泳部に割り当てられているのは半分以下の2コースである。
競泳部の弱小ぶりが見て分かるであろう。ちなみにいる部員はたったの5名だ。
その2コースで練習している部員達が、一斉に片側1コースによりもう片方のコースを丸々空けてしまった。
これは勿論、喬が泳ぐのを邪魔しないためである。
本当ならもう部外者である喬にここまでやる必要はないのだが、大きな大会はもうないのでそれほど身を粉にして練習に励む必要がないのと、それだけ喬が部員達に慕われていることの証明でもあった。








    「みんな、ゴメンね〜〜〜」














入念にストレッチを終えた喬は部員全員に向って頭を下げると、飛び込み台からザブン!と水に飛び込んだ。
綺麗なフォームでクロールを掻き、ぐんぐんと進む喬はさすがに泳ぎ慣れしているだけあって部員達の目を釘付けにするほどの艶やかさがあった。これでもう少し速ければどっかの有名大学のスカウトが将来の勧誘に来てもおかしくはないのだが、残念ながら喬にそこまでの速さはなかった。
でも、それも喬にとってはよかったのかもしれない。喬は速くなるために競泳部に入っているのではなく、ただ泳ぐのが好きだから競泳部に入っていたのだ。他人より速く泳ぐことを目的にしなければならない大学の競泳は、喬から泳ぐ楽しみを奪っていくに決まっていたろう。
気持ちよく泳いでいる最中、喬はまわりから発せられる憧憬の視線をズバズバと感じていた。
正直、それほど速くもない自分がこうまで注目されると気分がくすぐったくなってくるのだが、ボク言葉で面倒見がよく、陽気な性格で敵を作らない喬は競泳部のみならず中等部の後輩に絶大な人気を誇っていた。
部活のロッカーや靴棚に同性からのファンレターのみならず、本気のラブレターが入っていたことも一度や二度の出来事ではない。
もっとも、喬自身は同性に恋愛感情を抱くことはなかった(というか、異性にも)ので、そう言ったものには全部丁寧にお断りを入れていった。
今の喬にとっては、水こそが友人であり恋人だったと言ってよかった。そこに割り込める輩など、いはしなかったのだ。

喬はたちまちのうちに往復50mを泳ぎきり、プールサイドに腰を下ろした。
「あ〜〜っ。やっぱり泳ぐのって気持ちいいな〜〜!」
何度水の中に身体を漬けようが決して飽きることがない。泳いでいると世の中の何もかも忘れ、ただただ水と一体化している自分を感じることが出来る。









       「………でも」













ただ、だからと言ってこのままずっと泳ぐのに没頭していくわけにもいかない。
さきほど歩美にも指摘されたが、喬は来年高等部へ進まんとしてる受験生なのだ。もしこのまま天童学園に残りたいならばしっかりと受験勉強をこなし高等部へ進学しなければならない。
もちろん私学である天童学園にはスポーツ推薦という進学方法もある。だが、主将を務めていたとはいえたいした成績を持っていない喬にスポーツ推薦での進学は不可能だった。
となると、貴重な時間を割いて勉強に回さなければならない。喬の両親も一応現時点では黙認しているが、再来週の模擬テストの成績次第ではプール通いを禁止される可能性もあるのだ。
「…このままじゃ、しばらくおおっぴらに泳げなくなっちゃうかなぁ……」
喬にとって、一日でも泳げないことは筆舌に尽くしがたい苦痛ではあった。が、泳ぎたいがために勉強をおろそかにして来年からここで泳げなくなるというのは想像すらしたくない。
「泳ぎたいけど、泳いでいると泳げなくなり、泳げなくなるといやだら勉強して、
でもそうするとその間泳げなくて、泳げないと泳ぎたく………」
足を水につけたままプールサイドでじっと固まる喬の頭からプスプスと煙が立ち昇り始めている。元々物事をあまり深く考えない性分なので、思考の袋小路に入ると頭の回線がショートしやすい性質なのだ。



ボン!

そして、遂に喬の頭が大噴火を起こした。







「あーーっ!!もう、後のことは後で考える!今は泳いで何もかも忘れるんだ!」














もはやにっちもさっちもいかなくなり、遂に逆切れした喬はそのままプールから上がって飛び込み台の方に進むと、何も考えずに頭からドブン!と飛び込みメチャクチャに進みだした。
(今は何も考えたくない!泳いで泳いで泳ぎまくって、泳ぐだけしか感じなくするんだ!)
多分に現実逃避的な考えだが、追い詰められて視野狭窄になった喬にはこれしか取り合えずの気を休める方法が思いつかなかった。
そして、周りを全然気にできなかったからこそ喬は気づかなかった。
さっき、競泳部と水泳部あわせて20人以上いたプールに入っている人間が、ただの一人も水面から顔を上げていなかったことに。

何か心にむしゃくしゃした気持ちを残したまま、喬はただがむしゃらに前へ前へと泳ぎ続けた。
(なんだろ…全然楽しくない……)
泳げばこの鬱屈した気分も晴れると思ったのだが、むしろ泳げば泳ぐほど心の中に『泳げなくなる』
という気持ちがめらめらと燃えあがってきて喬の心にますます暗い影を落としていく。
(こんな気分で、ボクは泳ぎたくないのに……?!)

ガッ!

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