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2020年01月06日

現代の生命観と道元禅

題名「アコースティック哲学:山・川」なのですが、
「現代の生命観と道元禅」という記事を見つけました。

『正法眼蔵』「山水経」に次のような説示があります。
世界に水ありといふのみにあらず、水界に世界あり、
水中のかくのごとくあるのみにあらず。
雲中にも有情世界あり、風中にも……、火中にも……、
地中にも……、法界〔ほっかい〕中にも……、
一茎草〔いっきょうそう〕中にも……、有情世界あり。
有情世界あるかごときは、そのところかならず仏祖世界あり。
かくのごとくの道理よくよく参学すべし。

〈世界に水があるというだけではない。
水の世界にも世界がある。水の中がこのようであるだけではない。
雲の中にも有情世界がある。風の中にも……、火の中にも……、地中にも……、
法界の中にも……、一本の草の中にも……、有情世界がある。
有情世界があるところには、かならず仏祖世界ある。
このような道理をよくよく参学しなさい。〉
有情とは、命あるものであり、こころを有するものという意味です。
つまり、あらゆるものの中に「こころ」をもつものの世界があると道元禅師は言われるのです。

現代科学においても、有機物と無機物の境を説明できなくなりつつあると言われます。
われわれ人間とその他の動物との違い、動物と植物との違い、植物と鉱物との違い……、
確かに違うのですが、明確な境界線が引けないというのです。
そもそも、生命とは何か、生命はどこからやって来たのか、
ということを現代科学も解明できていないのですから、
現代科学も、道元禅師のこのような説示をけっして否定できないのです。

あらゆるものに命があり心があり、そしてそれらはつながっています。
この世界のあらゆる存在は、関連しあってひとつながりなのです。

私たちのからだは数え切れないほどの原子から成り立っていると言われます。
それらが集まった細胞が、常に入れ替わりながら、私たちの身体を形作っているのです。
五年も経てば、今私のからだをつくっている原子はすべて入れ替わってしまうとも言われます。
私たちは、原子のレベルでみると、
あらゆる動物や植物や鉱物と原子を互いに交換しながら生きているのだとも考えられます。

はるか昔にお釈迦様や道元禅師のからだの中にあった原子が、
いま私のからだの一部分になっているかも知れません。
過去に存在した私のすべての御先祖さまの原子が、
私の遺伝子をつくり、私の中で生きているとも言えましょう。

私たちは今、その「ひとつながり」ということを忘れかけていないでしょうか。
だから、自分と他人を分け隔てて差別して苦しめ、対立して無益な戦争をおこし、
環境を破壊して自らの首を絞めるような行為を行ってしまうのでしょう。

私たちは、かつてこの地球上に存在したすべてのものと無関係ではなく、
現在存在しているあらゆるものとひとつであり、今の私たちの生き方、
考え方が未来に大きな影響を与えていくのであろうと思われます。

「いのち」とは、広い意味で、そのようなものではないでしょうか。

(『永平寺事典』所収)









































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