小学生時代、喘息をこじらせて短期入院をしたことを思い出した。
本当に短期で、一週間も入院しなかった。
見舞いに来てくれる家族に頼んで図書館で本を借りてきてもらったり、携帯ゲームを持ち込んだりした。
同室の患者が一人だけいた。年下の少年だった。
自分と同じように喘息で短期入院をしていた。
当時やっていたゲームはGBAの伝説のスタフィーだった。
退屈な時間を利用して真珠?のフルコンプを成し遂げた。
これまでやったゲームのコンプ要素を100%やったのは初めてで、達成感がすごかった。
そのスタフィーを、やってみたいから貸してほしいと少年は言った。
良いけどデータは消さないでね、と念入りに注意した。
スタフィーはセーブデータが3つ作れた。他のデータに保存する様を見せてから貸した。
その日の消灯間近に返ってきたスタフィーは、件のデータが削除されていた。
呆然とする自分に、少年は悪びれることも謝ることもしないでベッドに戻っていった。
ひょっとしたら貸す時の約束を忘れていたのかもしれない。だとしてもだ。
遅れて文句を言おうとしたが、ナースさんが巡回に来て叶わなかった。
即座に少年に何か言えなかった自分の駄目さを恨み、
少年がささやかながら嫌な思いをするように祈っているうちに眠ってしまった。
……自分そんなに昔から嫌な奴だったんだな。