悪霊か悪魔か、とにかく人外の悪しき何かと交流してしまった男がいた。
場所は村のはずれの教会だったか。神の加護がある場での出会いだったので、悪い存在と思わなかったのだろう。
人外と再度会う約束をしたか、その場から立ち去れない呪いを受けたかで、男はその場にとどまることになった。
別件で派遣されてきた神父が、男の話を聞き、憐れんで救済を祈った。
すると突然激しい嵐が起きた。
教会の外でけたたましく雷が鳴る中、それにかき消されぬほど男が大声を上げ苦しがった。
あまりの恐ろしさに神父は目を閉じひたすら神に祈った。
音が止み、恐々神父が目を開けた。嵐は去っていた。
眼前にいたはずの男の姿がない。
足元をみると拳より一回り小さい奇妙な物が落ちていた。
黒く干からびたそれはかろうじて人の形をしていた。
様子を見に来た村長に村の記録を調べてもらうと、男の名前が百年以上昔の行方不明者と一致した。
神父の祈りで歪められた男の時間が正しく流れ、肉体は本来の姿に変容し、魂は救済されたのだった。
神父は村の共同墓地に男を丁重に弔った。
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っていう話を小学生低学年の頃、市民館か何かの公共施設で読んだ。
地元の子供会や老人会なんかの集まりが使う部屋に、古い本棚が置かれており寄贈本が並んでいた。
本のタイトルも話のタイトルも覚えていない。
本は海外の怪談集だったけど、時間の都合でこの一話しか読めなかった。
妙に覚えているんだよな。どこまで合ってるか知らないけど。