障害者が働きながら技能を身に付ける就労継続支援A型事業所の全国協議会は、全国のA型事業所を対象に初めて実施したアンケートの報告書をまとめた。事業所の収入は本業が4割超で、半分以上を国の給付金などの公費に依存している実態が明らかになった。12日、東京都内で記者会見して説明した。
A型事業所を巡っては、倉敷市や名古屋市などで経営難を理由に障害者の大量解雇が相次いでいる。厚生労働省は事業収益で障害者の賃金を賄うよう求めており、経営改善が課題となっている。
アンケートは今年2月、NPO法人「就労継続支援A型事業所全国協議会」が岡山や広島県など計約3500事業所を対象に実施した。2015年度決算について回答した365事業所の平均値で収支構造を分析した結果、収入では給付金が43・7%と最も多く、補助金(6・8%)と合わせ50・5%に上った。本業の就労支援事業による収入は43・5%にとどまった。支出は就労支援事業にかかる経費(27・9%)、職員人件費(27・7%)、障害者賃金(27・4%)の順に多かった。
就労支援事業だけで見ると、支出(経費と障害者賃金の合計額)が収入を上回り、実質赤字の運営となっている。
他の項目は942事業所が回答した。障害者の平均賃金は月額7万3374円。仕事の内容は、企業などからの請負ではトップが「清掃」、次いで「ダイレクトメールなどの封入・仕分け・発送」「部品・機械組立」となり、事業所独自分では農作業が最多だった。
経営上の課題は、「良質な仕事の確保」「利用者の成長(能力開発など)の促進」が多数を占めた。常勤職員の平均年収は260万円で、厚労省の調査による福祉施設介護員の322万円を下回った。不足している職員は「企画や営業担当」が最も多く、人材確保にも苦慮していることがうかがえる。
全国協議会の久保寺一男理事長は「真面目に取り組んでいるのに経営がうまくいかないケースは多い。一般就労が難しい障害者が働いて(A型事業所に求められる)最低賃金を稼ぐのは並大抵のことではなく、何らかの社会的支援が必要だ」と話した。
就労継続支援A型事業所の給付金 利用者1人当たり1日5千円以上(定員20人以下の場合)が公費から事業所運営者に支払われる。公費の負担割合は、国が2分の1、都道府県と市町村がそれぞれ4分の1。福祉専門職員の配置などにより別途加算もある。公費頼みの事業所が少なくないとみられるため、厚生労働省は今年4月の省令改正で給付金から障害者賃金を支払うことを原則禁じ、事業を健全化して収益で賄うよう促した。
(2017年09月12日 山陽新聞 )
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