光と音の世界を喪失した福島智氏。氏は当時のことをこう綴っている。
「私はいきなり自分が地球上から引きはがされ、この空間に投げ込まれたように感じた。
自分一人が空間のすべてを覆い尽くしてしまうような、狭くて暗く静かな『世界』。
ここはどこだろう。(中略)私は限定のない暗黒の中で呻吟していた」
著者はまず他者とのコミュニケーションをいかに復活させ、
言葉=情報を再び得ることができるようになったかを語る。
だがそれはプロローグにすぎず、自ら生きる意味を問い、幸せの在処を探し求める。
その深く鋭い思索の足跡は、両親や友、師との交流に始まり、フランクルや芥川龍之介、
北方謙三といった人物たちの著書や谷川俊太郎、吉野弘の詩、
はたまた落語にまで及んでいく。
苦悩の末に著者が見出した生きる意味、幸福の形は読む者にもまた
深い思索をもたらしてくれるであろう。
人間と人間が本当に繋がり合うとはどういうことか、仲間との信頼関係を築くためには
何が大事かといったことが説得力を持って迫ってくる。
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