「精神障害者が事件を起こして不起訴になっても、被害者が消えるわけではない」。札幌市中央区の木村邦弘さん(72)は、こうした事件の被害者にも他の犯罪被害者と同等の処遇や権利が保障されるよう訴えている。
木村さんの長男弘宣さんは、精神障害者自立支援施設で働いていた2014年2月、入所者に刺殺された。35歳だった。逮捕された入所者は精神鑑定の結果、心神喪失状態で刑事責任を問えないとして不起訴処分となった。
刑法39条は、心神喪失者や心神耗弱者の刑事責任の免除・軽減を定めている。不起訴処分になると裁判は開かれず、加害者は医療観察法の「対象者」として精神医療と保護観察処遇を受ける。「事件」は存在しないことになり、法的立場を失った遺族は、裁判参加制度などの被害者支援が受けられなくなる。
木村さんは、裁判を通じて遺族としての意見や心情を述べる機会が与えられず、「息子はなぜ殺されたのか」との疑問は今も消えないという。犯罪被害者等基本法の施行で犯罪被害者の権利拡充が進む中、こうした事件の被害者に対しても支援のあり方を考えたい。
毎日新聞 2017年10月8日
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