今まで2.0%だった障害者の法定雇用率が、2018年4月1日から2.2%に引き上げられることが決まった。これにより、対象となる事業主の範囲が、従業員50人以上から45.5人以上に変わる。初めて障害者を雇用する企業や部署も増えるだろう。
そこで採用と同じくらい注力してほしいのは、従業員の障害者雇用への理解を深めることだ。障害者の離職理由を見ると「職場の雰囲気・人間関係」が上位を占めている(2013年度障害者雇用実態調査・厚生労働省職業安定局)。身体障害者では「配慮が不十分」より高く、精神障害者では1位となっている。せっかく採用できても、周囲の従業員の理解がなければ早期退職となる可能性が高いのだ。つまり従業員の理解がどれだけあるかが、障害者雇用の成否の鍵といえる。
初めて障害者を雇用する企業の研修を行うことがあるが、「障害者にこのようなことを聞いていいのか」「このようなときどう対応するとよいのか」といった質問が絶えない。これまで障害者とほとんど関わったことがない従業員も多く、不安を感じているのがわかる。
ではどうすればよいのか。まずは、会社の方針を明示することだ。企業は社会の一員として、障害者を雇用する義務を果たしていくという強いメッセージを発信する。そうすると従業員もついていこうと感じる。法定雇用率の達成は企業イメージ向上にもつながる、といったメリットを伝えるのも効果的だ。
そして、障害者雇用の事例を共有することだ。すでに雇用実績のある企業であればその事例を、初めて雇用する企業であれば他社の事例を集めてみるとよいだろう。ポイントは当事者の声にも耳を傾けることだ。「仕事をしていく上で不安に感じていることはあるか」「どのようなことに仕事の喜び・やりがいを感じるか」「どのような配慮があると働きやすいか」。健常者が気づかないことも多く、生の声を聞くことでどのようなことに注意すればよいのかイメージもしやすくなる。
研修をしていて感じるのは、障害者雇用について知ることで不安の多くはなくなり、雇用への意欲も湧いてくるということ。これから初めて障害者を雇用する企業にも、この点に注意してぜひ積極的に取り組んでもらいたい。
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【プロフィル】紺野大輝
こんの・たいき 1976年、北海道生まれ。生まれつき脳性まひの障害を持つ。現在は従業員1700人の企業の人事部で働く傍ら、障害者雇用の研修や障害者の就労支援を全国で行う。講演回数は250回を超える。「全国・講師オーディション2015」で「奨励賞」を受賞。2016年12月、「障がい者の就活ガイド」(左右社)を出版。
SankeiBiz 2017-9-27
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