ここまで強くおススメする理由は、著者が50年以上にわたって真摯に取り組んできたこと、そこから得た気づきや学びを凝縮しているからです。
言葉ひとつひとつが重く、気づけば涙が出てきます。著者は半世紀以上にわたって、認知症や障がいに取り組んできた医師です。
「自分には偏見がない」、少なくとも「偏見を持ちたくない」と思っていましたが、本書を読むと、いかに自分が偏見にまみれていたか、そして、いかに自分が恵まれているかに気づかされます。
少し長くなりますが、本書の一節をピックアップしてみますね。
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<1>
イソップ物語で、夏は遊んでばかりいたキリギリスが冬に食べるものがなくなり、アリを訪ねると、アリは「夏の間遊んでいたのが悪いのだ」と言って、断ったという話があります。
しかし、私は、この話は悪い話だとつねづね思っています。
たとえ、その人の過去の心がけが悪かったがゆえに今困っているとしても、突き放すのではなく、手を差し伸べてあげることが福祉だからです。
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<2>
日本赤十字社にお勤めの先生が、ハンセン病療養所へ行かれたとき、両手の指10本を全部なくしてしまったお年寄りに出会ったそうです。
そのお年寄りはご夫婦そろってハンセン病で20年以上そこに入院しているのでした。
先生は慰める言葉もなく、ただ元気で暮らすよう励まされたそうです。
ところが、そのお年寄りはにっこりほほえみながら
「先生いいですよ。私はご覧の通り1本の指もありませんが、女房にはまだ指が2本も残っているんですよ。おかげで洗濯機で私のものを洗濯してくれます。ありがたいではありませんか」
そう言ったそうです。ご自身の手を見てください、指は何本ありますか。10本あることをありがたいと思って神様に感謝したことはありますか。
指が10本あることに感謝のできない人は、外見的には身体欠陥者ではなくても、精神的には欠陥者ではないでしょうか。
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<3>
度重なるもの忘れにお年寄りの方ががっくりしているときには、
「年をとって病気になれば、
誰でももの忘れするようになる。
でも、病気がよくなれば
もの忘れもしなくなるんだから、
ちっとも心配しなくていいんだよ」
そう、なぐさめてあげるようにしましょう。
骨折をしている人にはギプスを巻いて、状態が悪化しないように守ってあげますね。認知症もまったく同じです。
厳しく指摘して非難攻撃するよりも、見て見ぬふりをしてあげたり、優しくいたわってあげるほうがよいのです。お年寄りの心にギプスを巻いてあげてください。
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この本の制作中、毎月、認知症の方にお会いしてきました。
大事に守り続けていたこと…
大好きな人との素敵な思い出…
名誉やプライド…
誰にだって大事に大事に抱えていたいものがあると思います。
でも、どうして神様は人生の最後の最後に、こうしたことを全て忘れてしまうような病気をつくったのでしょうか。本書で、ぜひその答えを見つけてください。
◇書籍『幸せに死ぬ義務がある』
著者:山本孝之
価格:本体1500円+税(送料無料)
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