「腸育」を提唱したのが、『食物繊維で腸スッキリ!便秘解消データBOOK』(朝日新聞出版)の著者で、松生クリニック(東京都立川市)の松生恒夫院長。おすすめは腸管機能を高めるオリーブオイルだ。
【あなたの腸のむくみ度は? チェックリストはこちら】
オリーブオイルに含まれるオメガ9系脂肪酸のオレイン酸を多くとると、便秘解消に効果的だ。特に、エクストラバージン(EXV)オリーブオイルは、腸内の滑りをよくし、排便を促す。
「年をとると、腸管機能の働きが弱まります。だからオリーブオイルや食物繊維を積極的にとりたいですね。腸内環境を整えるには『腸内フローラ』の調整と、『食事』『腸管機能の働き』の三つの因子が絡みます」(松生院長)
松生院長のある日の夕食献立を聞いてみると──。
「もち麦ご飯1杯に具だくさんのみそ汁、オリーブオイルをかけた納豆、それにマグロのカルパッチョ。つまり生魚とオリーブオイル」
この和食メニューに使う醤油とオリーブオイルとの相性が抜群だという。献立の「もち麦」も食物繊維が豊富だ。健康向けに「玄米」を思い浮かべるが、咀嚼(そしゃく)が足りないと未消化となり、おなかが張り、便が硬くなることもあり、逆効果だそうだ。
「もち麦は、お年寄りの方にもすすめています。カロリーが控えめで、ご飯に混ぜて炊くとおこわみたいにもちもちします。昔の麦飯のイメージとは違っておいしいですよ(笑)」
配合比率は好みによるが、基本は米2に対し、もち麦1の割合。ならば、1日3食を玄米からもち麦に替えてみようかしら。
「それもいいとは思いますが、飽きるかもしれませんね。たとえば、朝はライ麦パンにオリーブオイルをつけて食べるのはいかがでしょうか」(同)
では、オリーブオイルとともにとりたい食物繊維だが、気をつけたいことがある。
「昆布やわかめ、こんにゃくなどは、よく噛んで食べましょう。食べすぎると消化しきれずに詰まることもあります」(同)
たとえば、便秘症の患者の便に春菊の太い茎が混じることもあるという。腸内での詰まりが原因だ。「こんにゃくの代わりに白滝にしてもいいと思います」(同)。これから鍋の季節。噛み切れない食材には気をつけたい。
また、歩いておなかをすかせ、腸を温めることも大事だという。最後に、身近な食材で腸が快調となるオススメレシピを聞いてみた。
「タマネギ、ニンジン、キャベツをみじん切りにしてコンソメで味付けしたスープ。これをストックして毎日飲んでいたら、青汁を飲むより効果がありますよ。飽きたらベーコンやトマトを入れてもいいですね」(同)
「腸を大切にすると長生きする。これが超能力(腸能力)なんですね(笑)」
発酵学の第一人者で農学博士の小泉武夫・東京農業大名誉教授は、いたずらな笑みを向ける。
小泉名誉教授の肌を見て驚く。つややかで、74歳とは信じ難い。
小泉名誉教授は「免疫」の視点からも発酵食品を中心とした和食が腸に良いという。免疫細胞の7割以上が腸でつくられるといわれているからだ。
「みそなどの発酵食品と食物繊維と生きた菌を摂取していれば、免疫力が上がると言われているのです」(小泉名誉教授)。日本人は元々腸の強い民族なのだ、と言う。
「(1)根茎(2)菜っぱ(3)青果(4)春は山菜、秋はキノコ(5)豆類(6)海藻(7)穀物の七つが和食の中心でした」(同)
福島の酒造家に生まれ、醸造に発酵、食文化論を伝えてきた小泉名誉教授の定番食は──。
「朝は欠かさずみそ汁。昼は大体そばですね。時々カキフライ弁当のこともあります。夜は必ず魚を食べます。肉はほとんど食べません。納豆は毎日。ネギをみじん切りにして入れます。時々甘いものも食べますよ」(同)
大好物の高野豆腐は「100%近く食物繊維で良いですよ」と教えてくれた。
体のだるさ、感情的な不安などの原因は「腸のむくみ」にある、と唱えるのは、自律神経研究の第一人者である順天堂大学医学部の小林弘幸教授だ。
「疲れだとかイライラだとか、集中できないとか。それはすべて腸の悲鳴なんですよね。それが積み重なるから、うつになったりさまざまな病気が発症したりするんです」
腸のむくみとは、慢性炎症のことだといい、やけどと同じく、水ぶくれのような状態になるそうだ。
「がんをはじめ、潰瘍(かいよう)性大腸炎、炎症、そのほか便秘や継続的な下痢が出るときは、むくみが出ます。疲れや食欲減退、おなかの張りを感じるときは、腸のむくみを疑ってもいいです」(小林教授)
腸のむくみを改善する方法のひとつとして、小林教授は「食事のリズム」に注目する。朝に食事を摂取し、それから6時間空けて昼ご飯、そして同じく6時間後に夜の食事に入る。
「食事をとってから6〜7メートルの小腸の末端に到達するのに6時間かかります。だから、小腸で栄養を吸収しているときに新しい栄養が入ってくると、ストレスがかかるんです」(同)
改善方法の二つ目は、「スクワット」。国内外の数多くのスポーツ選手らをサポートする小林教授らしい提案だ。
便秘の症状は年を重ねるごとに右肩上がりだが、小林教授はその原因を、高齢者の(1)自律神経の活性化の低下(2)腸内環境の悪化(3)筋力の低下、にあると説明する。年をとって歩けなくなるのは、太ももの前にある大腿(だいたい)四頭筋が落ちるからだ。そこで、小林教授が伝授するスクワットは、膝(ひざ)を痛めないように、壁を背にして、軽く前かがみになり、おしりを壁にこするように上下する。3分もこなすと、足がガクガクになる。前かがみになることで、左右の腸骨の脇と肋骨(ろっこつ)の下の4点で支えられている大腸に刺激を加えている感じも伝わる。
「むくみというのは血流のうっ滞ですから、スクワットによってそれが改善されます。37兆個の細胞の一個一個にどれだけ質のいい血液を十分に流すことができるか。それに尽きると思います」(同)
だからこそ、血流と腸内環境の大切さを訴える。
「高級食材や高級化粧品を使っても、腸内環境が悪かったら全部毒素を含み血流に乗って、肝臓や心臓と全身に回っていきます」(同)
その小林教授だが、こだわっているのは食物繊維の摂取だ。確かに、それは昔からの歴史が示しており、昭和初期から昭和30年ごろまで、日本人は食物繊維を1日に約20グラム以上摂取していたが、現代は10グラム程度。生活習慣病や女性の死因の第1位が大腸がんであることなど、明らかに食物繊維の不足が招いた結果だと言われている。
小林教授は食物繊維のサプリ「ファイバープロ」を2包、日課であるセブン−イレブンの100円コーヒーに入れて飲んでいる。便秘外来の患者に処方した結果、改善率が高まっているという。(本誌・大崎百紀)
【腸のむくみ度チェック】(小林弘幸順天堂大教授作成)
□体が重く、つねにだるさがある
□便秘や下痢に悩まされている
□おならが臭い
□口臭や体臭がとても気になる
□体温が低く、体が冷えやすい
□脚や顔がすぐにむくむ
□ニキビや吹き出物が出やすい
□感情のアップダウンが激しい
□つい人の悪口を言いたくなる
□取り越し苦労ばかりしている
□つい食べすぎてしまう
□ストレスがたまるとアルコールに依存しがち
□夜食をとる習慣がある
□純粋な水をあまり飲まない
□朝食をとらずに家を出ている
※週刊朝日 2017年11月24日号より抜粋
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171115-00000016-sasahi-hlth
<コメント>
腸は第二の脳です。大切にしましょう!
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