◆当時の求職活動を振り返る
介護の資格は取ったものの、本音は慣れた製造業を続けたいが円高不況で今ほど求人はなかった2010年の春頃だったか。主に工場での単純作業しか経験のない自分にとって、介護職(異業種)への転職活動は勇気の要ることだった。
介護職を扱っている派遣に登録すると1週間もしないうちに連絡が来た。担当者と一緒に面接に向かったのは特養であった。グループホームで働きたかったので本意ではないが、5年働けば退職金100万貰えるって話を聞かされたので悪くはないなと思い断らなかった。
介護未経験者の面接でよく聞かれるのは「お年寄りは好きですか?」って質問。本音は「好きも嫌いもねぇよ!食っていくために仕方なく介護やるしかねぇ状況なんだよ!」と言いたかったが「もちろん好きです」と答えた。それ以外大したことは聞かれなかったが「未経験者」というのがネックなようで、この施設で1〜2日働いてみて下さいとのこと(ボランティア) 2日間も無償労働するのは嫌なので1日で話はまとまった。
無償で働くとはいえ初めての特養、前日から緊張してメシも喉に通らない始末であった。これまで見たこともない特養施設の大きさに圧倒されながら中へ。ロッカーで着替えて申し送り現場で、今日一日実習される○○さんですと紹介されたので「よろしくお願いします」と頭を下げた。大人数の職員だがやはり介護は女だらけの職場であることに違いない。
リーダーらしき職員(おばさん)に指示を受けながら入浴介助、排泄介助などを行い昼食時間となった。配膳後、寝たきり状態で会話ができない婆さんの食事介助をするよう指示があった。声掛けをしながら行うが、全く口を開けてくれないので進まない。困り果てて近くの職員に助けを求めるとその婆さんは口を開けて食べやがる。自分が再度行うとまた口を開こうとしない。
焦って冷や汗が出てきた。何でこんな死にかけのババァに無理矢理メシ食わせなならんのか?そんな気持ちになっていた。見かねた職員が交代してくれたので違う人の食事介助を行った後、休憩時間となった。午後からは雑用以外、入居者とのコミュニケーションをとるよう指示があったのでなるべく多くの入居者に話し掛ける。色々なタイプの人が居たが結局は話しやすい人の所に行き、多くの時間を潰すような感じで終わった。
数日後、派遣の担当者から不採用になったと聞き正直安堵した。不採用の理由は「やっぱり女性の職員が欲しい」とのこと、「1日タダ働きさせておいて何じゃその理由は!」一瞬腹が立ったのだが、おそらく職員や人事担当者が俺の嫌々やってるオーラを感じたんだと思う。
今度は担当者に「グループホーム」を紹介して欲しいと希望を出して、あるグループホームへ面接に行った。大したことは聞かれなかったが現在人員は足りているとのこと。週2,3日という条件で採用されたがこれでは食っていけないので断った。同時期に面接を受けていたもう一つの派遣会社から連絡があり製造業に戻ることになった。
◆再び介護職を探す。
製造業へ戻って1年半後に退職、それをきっけかけに再び介護職を目指すことにした。今後は職安経由で探してみると2日間施設実習で行ったグループホームの求人を見つけたので迷いもなく受付に行くが「この施設は男を採用しないからやめた方がよい」と門前払いを受けてガッカリする。
次のグループホームを見つけて面接へ行った。「お年寄りは好きか?」「職場は女しかいないが大丈夫か?」という質問を受けた。面接後、駐車場やロッカー室などの説明を受けて、いつから来れるのかなど具体的なことを聞かれたので採用されるものだと確信していたら不採用の手紙がきて頭に来た。
後日、別のグループホームへ面接に行って無事採用された。当時は景気が悪いこともあり職を失った異業種の連中が介護に流れ込むこととなり、人手が足らない介護職でさえ人を選ぶようになったということだ。資格を持っていようが「男」「未経験」というだけで不利だと実感した求職活動だった。
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