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2019年07月11日

「のぼりざる」と猿田彦神


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「チキなん番長」と並ぶ延岡の2大マスコットキャラクターといえば、「のぼるくん」です。毎年秋に行われるイベント「のぼりざるフェスタ」のマスコットキャラクターで、江戸時代から伝わる「のぼりざる」(宮崎県伝統工芸品)がモデルになっています。


この「のぼりざる」が、日向神話に登場するサルタヒコノカミ(猿田彦神)に由来する郷土玩具ということをご存じでしょうか?


「のぼりざる」は約200年前、内藤時代の武士の妻たちの手内職として始められたとされていますが、その由来には幾つかの説があります。その一つに、サルタヒコノカミが登場します。


いつごろ書かれた文章かはハッキリしませんでしたが、延岡観光協会が発行した「のぼりざる≠フ由来について」という文書が延岡市立図書館に残っていました。概略を紹介します。


ニニギノミコト(瓊瓊杵尊)が高千穂に降臨した際に、サルタヒコノカミもお伴して大きな功績がありましたが、粗暴な振る舞いが治らず、美神・アメノウズメノミコト(天鈿女命)にイタズラをしたので、アメノウズメノミコトの怒りを買い、諸神の前で竿頭高くつるし上げられました。


サルタヒコノカミは体が大きく、鼻赤く、眼光鋭く、猿に似た異形神だったので、人々は猿の群れに農作物を荒らされると、猿の張り子をつるして猿への見せしめにするとともに、アメノウズメノミコトにつるし上げられたサルタヒコノカミのユーモアと結び合わせて、その威力にあやかったといいます。


これがやがて、豊作を祈るしるしとなり、さらに悪疫退散の魔除けとして戸ごとに立てられるようになったとされています。


のぼりざるの猿が身につけている烏帽子と長袴は江戸時代の武士の式服を象り、白い頬のひげはサルタヒコノカミがモチーフになっています。


そして、背に負った鼓は祝詞を唱える猿舞に、御幣は悪疫退散と商売繁盛を、幟(のぼり)の上2本の線は戦(いくさ)の旗指物に、菖蒲(しょうぶ)の絵は男子の出世開運を、風をはらんで昇る姿は位階の昇るにあやかるなど、あらゆる縁起物を最もユーモラスに表現したものだそうです。


財政が苦しかった江戸時代の内藤藩では、下級武士の家で内職品として盛んに作られたという話も伝わっています。


サルタヒコノカミは役目を果たした後、アメノウズメノミコト(天鈿女命)を伴い、「伊勢之狭長田五十鈴川上」(日本書紀)に向かったとされています。その場所が「日向市の伊勢ではなかったか」という話を「日向神話の本舞台11」で紹介しました。


宮崎県北にはサルタヒコノカミを祀る神社がいくつかあり、天孫降臨の際にニニギノミコトを先導したことから道祖神≠ニして、はたまた戦の神として信仰の対象とされてきました。


そのサルタヒコノカミが「のぼりざる」の由来になっているという話を聞くと、これまで以上に親しみを感じるのは私だけでしょうか。

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