2018年12月10日
石田有志(石田さんち)
『美容師』
そして六男ゆうじくん。キャリア五年で一人前の美容師になったというのにまさかまさかの辞める宣言。
「オレ、どっちにしろ3月20日になったら絶対やめるから。そしたらとりあえずプーになるね」
成人した息子にどうとしたアドバイスは無用。荒波は太平洋に任せて、お父ちゃんの2018年が開けました。ところがなぜか六男のゆうじ君も一緒。
「さあーぶい」
(ふたりでくるなんてめずらしいじゃないですか?)
「そうだよね〜、ほんとにそう。たまたまね。ふふふ。たまたま」
寒風吹きすさぶ信念の海辺に、たまたまやってくる者はおりません。実はゆうじくん決意を伝えに来たのです。川崎の美容室に勤めて五年。もう一人前になりました。
それなのに、さらりと口にしてしまった言葉に仰天してしてしまったのです。
「美容師をやめる、ほかでやるんじゃなくて 美容師自体をやめる」
ショックでした。
「仕事はどう?落ち着いた?気分はまだ現状維持?」
「オレどっちにしろ3月20日になったら絶対やめるから そしたらとりあえずぷーはやるね」
「あんだよ 隼司と一緒だ。ぷーやる前にどっかにくるかとかって決めてない?」
「ほんとはしたいんだけど・・・」
「じゃあステップアップでそういうところに行くとか・・・」
「ないねー」
「なんで簡単に言うの?ないねーって即効でなんで答えるの?」
「そこまで ちゃんと考えてたの すでに」
「考えてねーよ、そこで「考えてねーよ」って決める親父の考え方も俺はようわからん」
「本当だろうな〜」
「ほんとうだよ」
「俺は経験から言ってるんだよ?お前経験俺よりないじゃん」
「ねえよ」
「断定はできないけども・・・」
「でも「断定する」言われ方してる」
「そんな感じかなと思ってる」
「それは経験上で言ってるのかもしれないけど・・・」
「会社って大概そうだから」
「わかんないでしょ」
「わからないわからない。絶対はないんだよ」
「そうそう、絶対はないんだよ」
「でも、おやじは自信満々で言っているように俺は聞こえるけどね それは」
「そのね、自信満々で言ってたら、そこまで俺は自信ない」
「でしょ?でも俺はそういう風にすごい伝わる。」
「ごめん、じゃあ自信がない。うん。でもただ経験上 そうなのかなっていう」
「ぐらいでしょ?」
(もったいないとかは思ったりしない?)
「思ったよ、思ったけどじゃそうもったいないから続けようから言って、30歳になったらもう新しいことをしようっていう、なんだろ、選択肢って自分の中でなくなっちゃうんじゃないかなっていう。今25歳だから、遅くはないのかな。まだ今ならいけるのかな?っていう、これじゃあ、「もったいないもったいない」つって三十まで行きました。それで次、その時点で、「ああ〜違うのやりたいな」ってもし思ってしまったら遅くね?もったいないもったいないとは思うよ確かに
5年間は無駄かもしれないけど、俺は無駄だとは思わないから。」
この場合「忍」の一児は、お父ちゃんのほうか。
「実際、超人見知りだった俺が、美容師になったおかげで、人見知りじゃなくて全然本当に初めての人ともコミュニケーションとれるし、ちっちゃいことひとつあげるとね。」
親の心子知らずというけども、子供の心だって親にはわかりません。
(どうなんですか?お父さんは?)
「反対 あいつは「職を変えたい」つうんだ。俺は「職を変えずに場所を変える」嫌だっつう。子供だからこれ以上言わないけども、他人だったら当たり前だバカヤローっていうんだけどな。なにいってんだ!いちいちがたがたいうんじゃね〜!っていうけども」
ところで美容師を止めると誓った六男のゆうじ君この日が最後の出勤です。五年間精一杯働いた。心残りはなさそうだ。
「最後なんでまあ気持ちいい仕事がみんなでできればなあと思いますのでよろしくお願いします。以上です。」
その店に向かっていたのは人生に踏み迷う末っ子隼司君。兄弟の麗しい思いやりを見ちゃいました。
美容師生活最後の日。どういうわけかゆうじ君は弟の隼司君を店に呼んでいました。
「スタイルかわんないっしょ?」
「うん、いつもの」
最近ずっと弟の髪をカットしてきた兄貴。これが最後という理由だけではなさそうです。
「どうなのあれは?職探しはぼちぼちなの?」
「来週話を聞きに行く」
「話を聞きに?面接とかじゃなくて?」
「うん」
「なるほど」
「どういうものか それか親父からlineきて 学校の先生をやれって言われた。 できねーよって思って」
「さすがにまだお前の経験じゃ無理だな。まだ無理だなそれは。自分の中でこういう感じのやろうとかって決まってんの?」
「何もない 」
「多少は せっかく美容師やったんだから一応二年間は 多少かずることはしようとかそういう考えはないの?」
「最初はあったけど今はもうなんでもいいやって」
「なんでもいいやと」
「まあせっかくならね 二年間を無駄にしたらもったいないからね」
なるほど、兄貴はどことなく弟のこれからを気にかけていたんだ。
やがて石田家の人気キャラならではの話題に。
「あれ、でも聞かれない?お客さんとかにも兄弟で一番誰が仲いいのとか」
「超 聞かれる!」
「聞かれるよね!俺もめっちゃ聞かれる」
「まあそこは謝って、すいません自分だけ誰とも仲良くないんですよねっていう」
「仲がいいって基準が兄弟間だとわかんないからって俺は大体いう 俺は印象なのは あれこいつとぼろくそ言い合ってこいつすぐ包丁持ちだすから。包丁持ちだしたら逆にお〜やばいやばいやばいって言って逃げってって、母ちゃんがこう全部止めてる。ていう」
「それ、相当小さいころじゃない?」
「こいつ すぐ持ち出すから」
ゆうじ君が思い出すのは兄弟げんか。11年前の映像です。
「お〜い!お前狙ってんじゃねえよ!」
ふたりは中三と小6でした。
「もういいかげんにしろ もう疲れた」
「いって!」
「いって!いって!いって〜よ〜!殺す!ぜってえー殺す!こいつに怒れ!いてーよバカ!さわんじゃねーこのくそ!」
「うるせ、黙れ、死ね デブ!うるせ!そういう怒り方だけかよ!そういう怒り方だけかよ!うるせえよ!わらってんじゃねえよ!」
こんなケンカが日常茶飯事だったんです。
「さわんじゃねえ!」
「モトキ!いらないこと言わなくていいから」
石田さんちのファンにはおなじみ、芽衣子さんのヨーグルト事件に続き、隼司君のだったらフライパン事件。
「なんでなんで毎日毎日そうなのお前は。」
なんでおこってんの?
「もう〜またこわす」
「いい加減にしろ!ふざけんじゃねえよ!」
「ふざけてねえよ!」
「ゆうじお前が一番悪いんだからね!」
「あいつのこところしていい?」
この時期に三歳の年の差は圧倒的です。兄貴は余裕癪癪でちょっかいを出し続けました。」
「うわっ隼司だっさ」
「んおぉ〜!ぶっ殺してやる!ぜってぇー!ぶっ殺す!マジ殺す!」
「もういいから!」
「うるせえよ!あいつぜってえーッ殺してやる!じゃあフライパンでも殺してやる!じゃああいつ殺して来いよ!じゃあなんで怒んねえの?」
「今思うとすげーなって」
「それ相当昔じゃね?」
「血のぼってる人っていくら子供でも、母親さすぞ?って思うくらい。よくとめてんなあつって。すげーなって思うもん今思うと」
隼司はおぼえてる。
「覚えてるよ」
「お前の印象それしかない」
「包丁」
大家族ならではのバイオレンスを見てきた私たちにとっては、ふたりが兄弟げんかを懐かしむ日が来るなんて、感無量でした。だってお母ちゃんの偉大さを口にするんだもの。
「一番の目的はお父さんとお母さんを慰労する?」
「大移動」
「違う、移動じゃない、慰労だよ。」
「イドウ?」
「慰労って知ってる?」
「ぜってーそう捉えてんだろうなって思ってた。」
「慰労って知ってる?」
「慰労ってなに?」
「ねぎらうってわかる?」
「ははは。お前めっちゃばかにされてるけど、お前大丈夫?」
「それはさすがにね、わかるよ」
美容師をやめて何をするかまだ決めていない隼司君。でもゆうじ君にはもう新たな仕事が待っています。
「イケメンさんで〜す」
兄貴の助言は役に立ったかな。
「じゃあまた、31ね」
「31ね」(笑い交じり)
「お前の方が身長たけえーよなやっぱな」
「これから伸びるよもうちょっと」
「うぜーな」
「ありがとうございました。あざす。あざす」
自分の可能性を試したい。ゆうじ君たしかお父ちゃんにそう言ってました。今度の職場は横浜にある百貨店の中。
ユニフォームの背中には・・・
「ダイソン」両親指で背中のマークを指さす。
「え?あの掃除機の?」
選んだ仕事はヘアードライアーの販売員。なるほど、これなら美容師経験が役に立つかも。今日は初出勤。感心したのはしきりにメモをとる姿です。五年前とおんなじだ。
「偉いね メモ」
「いやいや 社会人社会人 でもいろいろスピーディーすぎて全部は目盛れない 単語だよ 単語」
さらに驚かされたのは接客の様子。美容師経験から学んだ、流れるような話術は販売員の頼もしいスキルになっていました。
「ここで風量とかもコントロールできます。なおかつこのダイソンのドライヤーっていうのは風量が強かったりするので、風量が強いその力もあるので、そなると若干引っ張りつつ、乾かしてあげると艶感が出ると思うんですけど」
どうやらかなり勉強もした様子。ブローは当然お手の物です。いろんな意味でキャリアが生かされました。
「いやーわからないことが多々ある。やっぱり。全然あのー以前まえ働いていたとこと全然違うからね、雰囲気も客層とかも全然違うし、そういった面とかをもっとスキルアップしていけたらなっておもったかなー。今ほんとまだ短い時間しか働いてないけど」
(汗かいてるもんね)
「汗かいてる?やっぱりてかりはよくないんだよ、こういった店で。あとでちゃんとこうやってふいとかないと」
ついにお父ちゃんの苛立ちはゆうじ君へ。
「難しいけど、でもまあまあ」
「お前はできないからサロンを去った」
「それができないからサロンを去った?」
「うん それができないコントロールできなかったんだよお前は」
「それがコントロールできなかったからサロンを去った?」
「わかんねえだろ?」
「もう一度言ってみ。もう一度言ってみ?全然意味わかんねーよ」
「全然わかんねえだろ?」
「全然わかんない」
「お前ね」
「言ってみろ」
「言ってみろってどういうことだてめえこの野郎!おい!おい!」
「こい こい」
「どういうこった?いくわけねえだろこの野郎が」
「死なねえだろ」
「これなら死ぬんじゃねえ?」
「ばか、いくわけねえだろ」
ゆうじくんにもプライドがあります。
「あのな」
「そこはちょっと冷静に」
「お前ね ひとつ言っとくよ」
「言って来いよ」
「言ってこい?お前誰に言ってんの?」
「あんたに」
「俺を誰だと思ってんだ?」
「ほんとに言い方が悪い」
「言い方もなにもねえだろ」
「俺は言い方だと思うよ」
「ふざけんじゃねえよお前」
「いくら息子であろうとも・・・」
「息子だろうが なんだろうが 息子だろ お前は!」
「おおそうだよ」
「馬鹿垂れ」
「お前誰のお金で」
「いろいろとやってもらってすごい感謝してるのはもちろんある もちろんある!言い方っていうのはどの人にも大してもおんなじだろ」
「感謝は感謝だろ!」
「感謝は感謝!それは本当におっしゃる通り。感謝は感謝」
「もういい分かった。 お前はもうそういう人なんだよ おっけおっけおっけ」
「おっけ?おっけ?」
「話したくないんだったらいい。おっけおっけ」
「したくねえ」
「おっけ」
「うん」
「じゃあもう終わりな。それでおわりな」
「隼司、」
「うん?」
「そういうことだ。話は続かねえんだ 俺も続けたくない」
「うん」
「その代わりお前は、一回常総市離れろ ちゃんと考えろ 苦しめ どうするかを考えてくれ な?お前らが まあお前らっつーけど、お前らが美容師になるっつったとき、「こんなになれるわけねーだろ」つって美容学校いってなんだかんだやってつって、 いっぱい勉強して金使ってそれでなんかなったかつったら結局なにもならねえじゃん。恩をあだで返しちゃいかん。親でも他人でも。恩をあだで返してはいかん。
何があっても、どんな不条理があっても、あだで返してはいかん。返した分かならずしっぺ返しがくるから。それはやってみないとわからない。二人は美容師をめざしたんだよ。「俺は、ふたりは美容学校出身です。美容師ですー」つって、でも今もうやめました。つって。え〜!そういう流れもなーんにも理解もなんもしてくれないし。」
微妙にすれ違う親の思いと、息子の気持ち。今はいいかもしんない。40歳 50歳なったら、ちゃんと360度見れる人になってほしい。偉くなる必要はない。見れる人になってほしい。」
ゆうじくん今度は弟の援護射撃に回ります。
「おやじががつがつくると俺もそれくらいのテンションできちゃうから、普通の感じで聞いてほしいんだけど、おやじは俺と隼司に美容師の美容学校言って、美容師になったんだからそこでいくら知識だったりとか、感じたことっていうので、いろんな心境の変化があって、こういうのもやってみたい、違うこともしてみたい、っていうことを思ってはダメ。そういうことは絶対だめだ。お前は美容師をやれって言いたいの?「お前らはそれをやったんだったら美容師をやるべきだ」
「ほかのことをやってしまうのは間違ってる」って聞こえる。隼司はどう聞こえた?」
「ん?」
「俺はなんかもう、お前らは美容師をやめるって言うことを選んだこと自体をお前ら間違ってんだ、みたいな言われ方をしている気がする。聞こえ方。俺の感じ方が間違ってるのかもしれないけど。」
「俺は間違ってると思うよ。俺の気持ちも間違ってるかもしれないけど、俺の気持ちはそうなんだよ。」
「そうなの?」
「俺の気持ちは率直にそうなんだよ。」
「隼司いろいろ聞いたよな?」
「うん」
「頑張れよ」
「うん」
「もうお前にもそれ以上は言わん」
「うん」
「うん、まあいろいろとなあるからな お前もな」
「私的な自分の自分の部分と家族的な部分と自分の個人的生き様の部分といろいろなことあるからな。あと、兄弟のいろんなこともしがらみもあるんだろうからな」
「うん」
「うーん」
「考えちゅうか?」
「そーだな。何をやっていいかわかんねーから・・・」
「まあ 考えろよ」
転職したいけど なにをやっていいかわからない。そんな若者はきっとたくさんいるはずです。
そして六男ゆうじくん。キャリア五年で一人前の美容師になったというのにまさかまさかの辞める宣言。
「オレ、どっちにしろ3月20日になったら絶対やめるから。そしたらとりあえずプーになるね」
成人した息子にどうとしたアドバイスは無用。荒波は太平洋に任せて、お父ちゃんの2018年が開けました。ところがなぜか六男のゆうじ君も一緒。
「さあーぶい」
(ふたりでくるなんてめずらしいじゃないですか?)
「そうだよね〜、ほんとにそう。たまたまね。ふふふ。たまたま」
寒風吹きすさぶ信念の海辺に、たまたまやってくる者はおりません。実はゆうじくん決意を伝えに来たのです。川崎の美容室に勤めて五年。もう一人前になりました。
それなのに、さらりと口にしてしまった言葉に仰天してしてしまったのです。
「美容師をやめる、ほかでやるんじゃなくて 美容師自体をやめる」
ショックでした。
「仕事はどう?落ち着いた?気分はまだ現状維持?」
「オレどっちにしろ3月20日になったら絶対やめるから そしたらとりあえずぷーはやるね」
「あんだよ 隼司と一緒だ。ぷーやる前にどっかにくるかとかって決めてない?」
「ほんとはしたいんだけど・・・」
「じゃあステップアップでそういうところに行くとか・・・」
「ないねー」
「なんで簡単に言うの?ないねーって即効でなんで答えるの?」
「そこまで ちゃんと考えてたの すでに」
「考えてねーよ、そこで「考えてねーよ」って決める親父の考え方も俺はようわからん」
「本当だろうな〜」
「ほんとうだよ」
「俺は経験から言ってるんだよ?お前経験俺よりないじゃん」
「ねえよ」
「断定はできないけども・・・」
「でも「断定する」言われ方してる」
「そんな感じかなと思ってる」
「それは経験上で言ってるのかもしれないけど・・・」
「会社って大概そうだから」
「わかんないでしょ」
「わからないわからない。絶対はないんだよ」
「そうそう、絶対はないんだよ」
「でも、おやじは自信満々で言っているように俺は聞こえるけどね それは」
「そのね、自信満々で言ってたら、そこまで俺は自信ない」
「でしょ?でも俺はそういう風にすごい伝わる。」
「ごめん、じゃあ自信がない。うん。でもただ経験上 そうなのかなっていう」
「ぐらいでしょ?」
(もったいないとかは思ったりしない?)
「思ったよ、思ったけどじゃそうもったいないから続けようから言って、30歳になったらもう新しいことをしようっていう、なんだろ、選択肢って自分の中でなくなっちゃうんじゃないかなっていう。今25歳だから、遅くはないのかな。まだ今ならいけるのかな?っていう、これじゃあ、「もったいないもったいない」つって三十まで行きました。それで次、その時点で、「ああ〜違うのやりたいな」ってもし思ってしまったら遅くね?もったいないもったいないとは思うよ確かに
5年間は無駄かもしれないけど、俺は無駄だとは思わないから。」
この場合「忍」の一児は、お父ちゃんのほうか。
「実際、超人見知りだった俺が、美容師になったおかげで、人見知りじゃなくて全然本当に初めての人ともコミュニケーションとれるし、ちっちゃいことひとつあげるとね。」
親の心子知らずというけども、子供の心だって親にはわかりません。
(どうなんですか?お父さんは?)
「反対 あいつは「職を変えたい」つうんだ。俺は「職を変えずに場所を変える」嫌だっつう。子供だからこれ以上言わないけども、他人だったら当たり前だバカヤローっていうんだけどな。なにいってんだ!いちいちがたがたいうんじゃね〜!っていうけども」
ところで美容師を止めると誓った六男のゆうじ君この日が最後の出勤です。五年間精一杯働いた。心残りはなさそうだ。
「最後なんでまあ気持ちいい仕事がみんなでできればなあと思いますのでよろしくお願いします。以上です。」
その店に向かっていたのは人生に踏み迷う末っ子隼司君。兄弟の麗しい思いやりを見ちゃいました。
美容師生活最後の日。どういうわけかゆうじ君は弟の隼司君を店に呼んでいました。
「スタイルかわんないっしょ?」
「うん、いつもの」
最近ずっと弟の髪をカットしてきた兄貴。これが最後という理由だけではなさそうです。
「どうなのあれは?職探しはぼちぼちなの?」
「来週話を聞きに行く」
「話を聞きに?面接とかじゃなくて?」
「うん」
「なるほど」
「どういうものか それか親父からlineきて 学校の先生をやれって言われた。 できねーよって思って」
「さすがにまだお前の経験じゃ無理だな。まだ無理だなそれは。自分の中でこういう感じのやろうとかって決まってんの?」
「何もない 」
「多少は せっかく美容師やったんだから一応二年間は 多少かずることはしようとかそういう考えはないの?」
「最初はあったけど今はもうなんでもいいやって」
「なんでもいいやと」
「まあせっかくならね 二年間を無駄にしたらもったいないからね」
なるほど、兄貴はどことなく弟のこれからを気にかけていたんだ。
やがて石田家の人気キャラならではの話題に。
「あれ、でも聞かれない?お客さんとかにも兄弟で一番誰が仲いいのとか」
「超 聞かれる!」
「聞かれるよね!俺もめっちゃ聞かれる」
「まあそこは謝って、すいません自分だけ誰とも仲良くないんですよねっていう」
「仲がいいって基準が兄弟間だとわかんないからって俺は大体いう 俺は印象なのは あれこいつとぼろくそ言い合ってこいつすぐ包丁持ちだすから。包丁持ちだしたら逆にお〜やばいやばいやばいって言って逃げってって、母ちゃんがこう全部止めてる。ていう」
「それ、相当小さいころじゃない?」
「こいつ すぐ持ち出すから」
ゆうじ君が思い出すのは兄弟げんか。11年前の映像です。
「お〜い!お前狙ってんじゃねえよ!」
ふたりは中三と小6でした。
「もういいかげんにしろ もう疲れた」
「いって!」
「いって!いって!いって〜よ〜!殺す!ぜってえー殺す!こいつに怒れ!いてーよバカ!さわんじゃねーこのくそ!」
「うるせ、黙れ、死ね デブ!うるせ!そういう怒り方だけかよ!そういう怒り方だけかよ!うるせえよ!わらってんじゃねえよ!」
こんなケンカが日常茶飯事だったんです。
「さわんじゃねえ!」
「モトキ!いらないこと言わなくていいから」
石田さんちのファンにはおなじみ、芽衣子さんのヨーグルト事件に続き、隼司君のだったらフライパン事件。
「なんでなんで毎日毎日そうなのお前は。」
なんでおこってんの?
「もう〜またこわす」
「いい加減にしろ!ふざけんじゃねえよ!」
「ふざけてねえよ!」
「ゆうじお前が一番悪いんだからね!」
「あいつのこところしていい?」
この時期に三歳の年の差は圧倒的です。兄貴は余裕癪癪でちょっかいを出し続けました。」
「うわっ隼司だっさ」
「んおぉ〜!ぶっ殺してやる!ぜってぇー!ぶっ殺す!マジ殺す!」
「もういいから!」
「うるせえよ!あいつぜってえーッ殺してやる!じゃあフライパンでも殺してやる!じゃああいつ殺して来いよ!じゃあなんで怒んねえの?」
「今思うとすげーなって」
「それ相当昔じゃね?」
「血のぼってる人っていくら子供でも、母親さすぞ?って思うくらい。よくとめてんなあつって。すげーなって思うもん今思うと」
隼司はおぼえてる。
「覚えてるよ」
「お前の印象それしかない」
「包丁」
大家族ならではのバイオレンスを見てきた私たちにとっては、ふたりが兄弟げんかを懐かしむ日が来るなんて、感無量でした。だってお母ちゃんの偉大さを口にするんだもの。
「一番の目的はお父さんとお母さんを慰労する?」
「大移動」
「違う、移動じゃない、慰労だよ。」
「イドウ?」
「慰労って知ってる?」
「ぜってーそう捉えてんだろうなって思ってた。」
「慰労って知ってる?」
「慰労ってなに?」
「ねぎらうってわかる?」
「ははは。お前めっちゃばかにされてるけど、お前大丈夫?」
「それはさすがにね、わかるよ」
美容師をやめて何をするかまだ決めていない隼司君。でもゆうじ君にはもう新たな仕事が待っています。
「イケメンさんで〜す」
兄貴の助言は役に立ったかな。
「じゃあまた、31ね」
「31ね」(笑い交じり)
「お前の方が身長たけえーよなやっぱな」
「これから伸びるよもうちょっと」
「うぜーな」
「ありがとうございました。あざす。あざす」
自分の可能性を試したい。ゆうじ君たしかお父ちゃんにそう言ってました。今度の職場は横浜にある百貨店の中。
ユニフォームの背中には・・・
「ダイソン」両親指で背中のマークを指さす。
「え?あの掃除機の?」
選んだ仕事はヘアードライアーの販売員。なるほど、これなら美容師経験が役に立つかも。今日は初出勤。感心したのはしきりにメモをとる姿です。五年前とおんなじだ。
「偉いね メモ」
「いやいや 社会人社会人 でもいろいろスピーディーすぎて全部は目盛れない 単語だよ 単語」
さらに驚かされたのは接客の様子。美容師経験から学んだ、流れるような話術は販売員の頼もしいスキルになっていました。
「ここで風量とかもコントロールできます。なおかつこのダイソンのドライヤーっていうのは風量が強かったりするので、風量が強いその力もあるので、そなると若干引っ張りつつ、乾かしてあげると艶感が出ると思うんですけど」
どうやらかなり勉強もした様子。ブローは当然お手の物です。いろんな意味でキャリアが生かされました。
「いやーわからないことが多々ある。やっぱり。全然あのー以前まえ働いていたとこと全然違うからね、雰囲気も客層とかも全然違うし、そういった面とかをもっとスキルアップしていけたらなっておもったかなー。今ほんとまだ短い時間しか働いてないけど」
(汗かいてるもんね)
「汗かいてる?やっぱりてかりはよくないんだよ、こういった店で。あとでちゃんとこうやってふいとかないと」
ついにお父ちゃんの苛立ちはゆうじ君へ。
「難しいけど、でもまあまあ」
「お前はできないからサロンを去った」
「それができないからサロンを去った?」
「うん それができないコントロールできなかったんだよお前は」
「それがコントロールできなかったからサロンを去った?」
「わかんねえだろ?」
「もう一度言ってみ。もう一度言ってみ?全然意味わかんねーよ」
「全然わかんねえだろ?」
「全然わかんない」
「お前ね」
「言ってみろ」
「言ってみろってどういうことだてめえこの野郎!おい!おい!」
「こい こい」
「どういうこった?いくわけねえだろこの野郎が」
「死なねえだろ」
「これなら死ぬんじゃねえ?」
「ばか、いくわけねえだろ」
ゆうじくんにもプライドがあります。
「あのな」
「そこはちょっと冷静に」
「お前ね ひとつ言っとくよ」
「言って来いよ」
「言ってこい?お前誰に言ってんの?」
「あんたに」
「俺を誰だと思ってんだ?」
「ほんとに言い方が悪い」
「言い方もなにもねえだろ」
「俺は言い方だと思うよ」
「ふざけんじゃねえよお前」
「いくら息子であろうとも・・・」
「息子だろうが なんだろうが 息子だろ お前は!」
「おおそうだよ」
「馬鹿垂れ」
「お前誰のお金で」
「いろいろとやってもらってすごい感謝してるのはもちろんある もちろんある!言い方っていうのはどの人にも大してもおんなじだろ」
「感謝は感謝だろ!」
「感謝は感謝!それは本当におっしゃる通り。感謝は感謝」
「もういい分かった。 お前はもうそういう人なんだよ おっけおっけおっけ」
「おっけ?おっけ?」
「話したくないんだったらいい。おっけおっけ」
「したくねえ」
「おっけ」
「うん」
「じゃあもう終わりな。それでおわりな」
「隼司、」
「うん?」
「そういうことだ。話は続かねえんだ 俺も続けたくない」
「うん」
「その代わりお前は、一回常総市離れろ ちゃんと考えろ 苦しめ どうするかを考えてくれ な?お前らが まあお前らっつーけど、お前らが美容師になるっつったとき、「こんなになれるわけねーだろ」つって美容学校いってなんだかんだやってつって、 いっぱい勉強して金使ってそれでなんかなったかつったら結局なにもならねえじゃん。恩をあだで返しちゃいかん。親でも他人でも。恩をあだで返してはいかん。
何があっても、どんな不条理があっても、あだで返してはいかん。返した分かならずしっぺ返しがくるから。それはやってみないとわからない。二人は美容師をめざしたんだよ。「俺は、ふたりは美容学校出身です。美容師ですー」つって、でも今もうやめました。つって。え〜!そういう流れもなーんにも理解もなんもしてくれないし。」
微妙にすれ違う親の思いと、息子の気持ち。今はいいかもしんない。40歳 50歳なったら、ちゃんと360度見れる人になってほしい。偉くなる必要はない。見れる人になってほしい。」
ゆうじくん今度は弟の援護射撃に回ります。
「おやじががつがつくると俺もそれくらいのテンションできちゃうから、普通の感じで聞いてほしいんだけど、おやじは俺と隼司に美容師の美容学校言って、美容師になったんだからそこでいくら知識だったりとか、感じたことっていうので、いろんな心境の変化があって、こういうのもやってみたい、違うこともしてみたい、っていうことを思ってはダメ。そういうことは絶対だめだ。お前は美容師をやれって言いたいの?「お前らはそれをやったんだったら美容師をやるべきだ」
「ほかのことをやってしまうのは間違ってる」って聞こえる。隼司はどう聞こえた?」
「ん?」
「俺はなんかもう、お前らは美容師をやめるって言うことを選んだこと自体をお前ら間違ってんだ、みたいな言われ方をしている気がする。聞こえ方。俺の感じ方が間違ってるのかもしれないけど。」
「俺は間違ってると思うよ。俺の気持ちも間違ってるかもしれないけど、俺の気持ちはそうなんだよ。」
「そうなの?」
「俺の気持ちは率直にそうなんだよ。」
「隼司いろいろ聞いたよな?」
「うん」
「頑張れよ」
「うん」
「もうお前にもそれ以上は言わん」
「うん」
「うん、まあいろいろとなあるからな お前もな」
「私的な自分の自分の部分と家族的な部分と自分の個人的生き様の部分といろいろなことあるからな。あと、兄弟のいろんなこともしがらみもあるんだろうからな」
「うん」
「うーん」
「考えちゅうか?」
「そーだな。何をやっていいかわかんねーから・・・」
「まあ 考えろよ」
転職したいけど なにをやっていいかわからない。そんな若者はきっとたくさんいるはずです。
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