そのせいで、ロシアに一次エネルギーを依存していたドイツやイタリアなどの国は軒並み光熱費が高騰しています。
電気代が今年の冬、80%も上昇する国もあります。庶民がこのような状況を乗り越えられるのでしょうか?
高騰しているのは光熱費だけではありません。食料関連の値上げも大きく生きていくのが困難になるような状況の国もあります。
日本の場合はどうなのでしょう。
確かにすべてのものが高騰していますが、ロシアの依存度がそれほど高くなかったのがせめてもの救いでしょう。
日本は中東にエネルギーの供給を依存してきました。そのために起きたのが1970年代に起きたオイルショックです。現在でも日本のエネルギーの多くは中東に依存している部分は大きいですが、資源の少ない日本では、これらの化石燃料からの脱却を視野に、様々な取り組みが進行しています。
日本の一次エネルギーのロシアへの依存度
日本の位置から見れば、中東よりもロシアのほうが近いということもあり、近年ロシアからの輸入も増えていました。しかし、今回のウクライナ進攻で、その依存度を下げる取り組みがされています。
2021年度の日本のロシアへの依存度はどれくらいあるのでしょう。
- 石油:3.6%
- 天然ガス:8.8%
- 石炭:11%
日本の依存度はそれほどではないにしろ、この分を別から供給しなくてはならない状況にあります。
ドイツのロシアへの依存度を見てみましょう。
- 石油:34%
- 天然ガス:43%
- 石炭:48%
こちらは2020年度の輸入量におけるロシアの割合になります。
かなり、ロシアへの依存が大きいといえます。
脱炭素が化石燃料の高騰化を招いている
今回のロシアのウクライナ進攻以前から、化石燃料の高騰はありました。
これは「脱炭素」を急速に進めている欧州により、この先の化石燃料の輸出量の低下が予測されているからです。
やがては化石燃料を使う量を減らしていくのが目標ですが、すぐにそれが出来上がるわけではありません。
その間の穴埋めに化石燃料をロシアから輸入したわけです。
しかし、一国への依存が現在の状況を招いてしまったといえるでしょう。
これに比べアメリカは自給率が高いためにロシアへの依存は石油1%のみなのです。
そこで、欧州はアメリカにガス供給を頼む状態になっていますが、位置的に遠いため直ぐにどうこうできる状況ではありません。脱ロシアを念頭に入れていますが、今年の冬には間に合わないこともあり、庶民の生活が危うい状態といえるでしょう。
アメリカのLNG6割増産
欧州の脱ロシアに向けて、アメリカの大手米エネは、2027年にはLNGを6割増産して年約1900トンにすると発表しています。(2022年3月10日)
増産した分は欧州やアジアへ振り分けるということです。また、米シェール2022年12月の米原油生産は2月に比べて日量100万バレルを増産するとの事、こちらもロシア産の代替えとしての事です。(2022年3月17日)
資源大国アメリカは、ロシアがどう出ようと全くびくともしないということですね。一国集中のエネルギー供給の危うさが今回浮き彫りになりました。
日本はほぼ自給率がない国です。エネルギーを輸入する際の各国からの分散を念頭に入れて動いているようです。ロシアという国は、日本人から見れば信用に値しない国ですが、欧州から見れば違う側面があるのでしょう。
この先のエネルギー政策
日本は2050年までにカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを行っています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質0にするという政策です。
カーボンニュートラル宣言をしているのは、日本だけではなく欧州、アメリカ、アフリカなども宣言を出している状況で、ほぼ世界は脱炭素に向けて動き出しています。
再生エネルギー
不安定さのある再生エネルギーの系統容量の確保、系統混雑の暖和、脱炭素化された調整力の確保を課題にして対応。
原子力発電
安全性、経済性、機動性に優れた原子炉の追及。廃炉、廃棄物処理、処分などのバックエンド問題の解決の向けた技術開発の推進。
火力発電の脱炭素
火力発電は再生可能エネルギーの変動制を補う調整力として重要な機能を持っています。
その能力を確保させるために、燃料そのものを水素、アンモニアに転換させたり、排出されるCO2を回収、貯蓄、再利用するように推進。
少ない燃料でたくさんのエネルギーを作り出す技術により、温室効果ガスの削減が可能になります。それらを実現させる取り組みも行われています。
現在の高騰は冬を乗り切れば安定してくる!
世界は脱ロシアに向けて動いています。天然ガスはロシアだけで算出しているわけではありません。アメリカのシェールガスなども現在の高騰化を鎮めるものとなるでしょう。
欧州よりも日本は国民の生活を守るために、燃料費高騰に対する対応は早く行われています。
また、欧州よりもロシア依存が低かったことも功を奏していますね。
アメリカが燃料輸入国として大きな位置を占めてくるのではないでしょうか。
助け合う力は大きいほど安定化への道は開けてくるでしょう。