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2020年06月10日

笑う女


旅先で知り合ったアニキに聞かせてもらった話。

このアニキが昔、長野と岐阜の県境あたりを旅していたころ、
山あいの小さな集落を通りかかった。陽も暮れ掛けて夕焼け空に
照らされた小さい村の約半数近くが廃屋で、残りの半数近くも
結構古い建物ばかり。そして、小さい学校らしき建物にはちゃんと
校庭もあった。

季節は夏で、このアニキは今日はここで野宿することに決め、
校庭と校舎の間にある階段(幅6〜7mくらい)に腰掛けて
くつろいでいた。夜になりタバコを吸いながら何気なく周りを
見渡すと、月明かりでかろうじて物が見えるほどの暗いなかを
校庭の向こう側からこちらに向かって誰かが歩いてくるのが
見えた。それは24、5歳くらいの女の人で、白っぽい服を着ていた。

最初はアニキも期待はしたけど、その人が近くまで来たときには
むしろ不安がよぎっていた。その人はずっと笑いつづけていたから。
しかもアニキと同じように階段の端っこに腰掛け、ずっと笑い
続けている。ヘタに動くと余計マズいんじゃないかと、アニキは
とても緊張していた。スキを見て逃げようとすればするほど余計に
怖くなる。が、他に行き場がないし、旅の疲れも溜まっているので、
いつしか眠ってしまっていたそうだ。朝になって目がさめると夕べの
気のふれた女はいなくなっていた。でも、着ていたシャツのあちこちに
女の人の手で触ったような汚れというか、跡がついていたそうだ。

近所の人にこの辺りでちょっとおかしい人はいないか
聞いてみても、知らないという。
このアニキ曰く、ヘタなユーレイよりも生きている
人間の方が怖いんだそうだ。

すんませんね、怖くなくて。
posted by まとめ at 08:00 | 怖い話
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