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2019年07月30日

押す女


これは私が、団地暮らしをしていた時の話です。

なお、登場する人物名は全て偽名です。

いつものように旦那を見送り、違うのは旦那が今日は帰ってこないということだけ。

その日、私はベランダで洗濯物を取り込んでいました。

すると、向かいの団地の一階に、インターホンを連打している女?の人が見えました。

私が住んでいた団地は、三つの団地が並んでいるような形で、私はその一番後ろの団地に住んでいました。

女が居るのは、だから真ん中の団地ですね。

その女がインターホンをずっと、押し続けていたんです。

「ぴんぽーーん、ぴんぽーーん・・・」

こっちまでインターホンの音が聞こえて、だんだんうるさくなってきました。

もうこれで二時間ぐらいになる・・・私は我慢の限界に達し、向かいの団地に、文句を言いにいきました。

向かいの団地の30メートル手前ぐらいに来たとき、あの女が団地から出てくるのが見えました。

やっと出て行ったか。

そう思い、私はうちに戻りました。

やっと静かになった、と私はテレビを見ようとリモコンを手にした時、

「ぴんぽーーーーん」

どこからかインターホンの音。

我が家のインターホンでした。

「は〜〜い」

玄関を開けました。

ガチャ・・・

「あら、こんにちは!」

それは隣に住んでるおばさんでした。



「どうしたんです今日は?」

おばさん

「いやね、小室(こむろ)さんにりんご、たくさんもらっちゃってさぁちょっともらってくれない?」



「どうもすいません。いただきます!」

そう言ってりんごを受け取り、再び家へ・・・しきりなおしてテレビを見始めました。

夕方ぐらいでしょうか、またインターホンの音が聞こえ始めたんです。

またもや向かいの団地から・・・ベランダに出て様子を見てみると、またあの女が今度は3階のインターホンを押し続けていました。

もう許せない!外に出て、その女に文句を言うべく、向かいの団地の入り口を入ったとき、今まで聞こえなかったものが聞こえてきました。

分かりやすく言えば

「叫び声」

のようなもの。

「ああぁあぁぁああぁあ!!!」

そして、しきりに鉄製の玄関を蹴る様な音。

「あぁあああぁあぁぁ!」

「ガン!ガン!ガン!!」

「ピンポーーーンピンポーーンピンポーーン」

あまりの騒音に思わず、

「うるさいわよ!いいかげんにしてよ!!」

と、私は言ってしまいました。

すると3階からものすごい勢いで下に降りてくる足音が聞こえました。

「ダダダダダダダダダダ!!!」

私はそこで恐怖を感じ、逃げてしまいました。

走って、私が住んでいる団地に逃げ込んで、通路の角を曲がったとき安心してチラッと立ち止まった時見えたんです。

ちょうど女も入り口から出てくるところでした。

その女の姿はなんて説明していいか・・・関節が無いみたいにグニャグニャしてる様なカンジでした。

指が異様に長かったです。

首を120度ぐらい曲げていました。

そして笑っていたような気がします。

恐ろしすぎて自分のうちに急いで戻り、玄関に鍵を閉め、布団にもぐりこんで震えていました。

しばらくして玄関を開けようとする音が聞こえました。

あいつが来たんだ!!そう思って必死に耳をふさいでいました。

すると、声が聞こえました。

「おい、何で鍵なんて閉めてるんだ?」

旦那の声でした。

旦那が帰ってきた!そう思って、玄関に駆け寄りました。

鍵を開けて早く旦那に来て欲しい。

そう思い、鍵に手をかけたとき、ふいに思い出しました。

今日は旦那が帰ってこないことを覗き穴から外を見てみて、急いで布団に戻りました。

外にいたのは旦那ではなく、あの女・・。

玄関を私が開けるのを、今か今かと待ち構えていました。

「お〜い、早く開けろよ!」

うるさいうるさいうるさい・・・そのまま気を失ったのか、眠ってしまったのか、朝になっていました。

「あれ、いつの間に・・?」

恐る恐る玄関に行き、覗き穴から外を見てみると、もう誰もいませんでした。

しばらくして、インターホンがなりました。

今度は本物の旦那でした。

玄関を開け、旦那に昨日のことを全部話し、聞いてもらいました。

これからは、なるべく早く帰ってくると言ってくれました。

後日、向かいの団地の人に、インターホンがうるさくなかったか、と聞くと誰一人、インターホンの音を聞いた人はいませんでした。

じゃあ、周りから見た私の行動は変でしたね。

少しはずかしくなりました・・・結局あの女が何者だったのかは分かりませんでしたがあの時、玄関を開けなくて、本当によかった。

posted by まとめ at 08:00 | 怖い話
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