インドで後に「カレー」と呼ばれるようになった料理がいつ頃誕生したのか、
はっきりとしたことは分かりません。
しかし、カレーに使われているスパイスのうちインド原産のものは、
既にインダス文明時代から栽培されていたようです。
インダス文明は新石器時代に西アジアからインド北西部へ移住してきた
ドラヴィダ人という民族によって興されました。
インダス文明は紀元前2300年頃に始まりました。
ドラヴィダ人はメソポタミアやエジプトなどと交易を行っており、
中東で栽培されていたスパイスもインドへ持ち込まれていました。
スパイスをたくさん使ったインド料理の原型は、この頃既に形作られていました。
これが現在のカレーの原点、原始的なカレーの誕生といえるかもしれません。
紀元前1700年頃になるとインダス文明は衰退しました。
紀元前1500年頃になると中央アジアの遊牧民族だった
アーリア人という民族がインド北西部へ移住してきました。
ドラヴィダ人はアーリア人によって征服され、
一部はインド南部へ逃れていきました。
現在のインド人が地方によって民族や言語が違うのは、この一件の名残です。
アーリア人はインドに移住すると遊牧を止め、
農耕を始めて定住するようになりました。
そしてアーリア人によって、インダス文明とは違う新しい文化が興りました。
原始的なカレーにはアーリア人の食文化も取り入れられ、
インド各地で地域ごとに特色のあるカレーが発展し ていきました。
紀元前 300年頃になると、インド人は東南アジアと交易を行うようになり、
インドへ東南アジア産のスパイスが持ち込まれると同時に、
東南アジアへはインドの食文化が伝わりました。
このことにより、インドのカレーはさらに多くの種類のスパイスが
使われるようになり、東南アジアでもカレーが作られるようになりました。
一方、タイ人の先祖はこの頃、華南地方で稲作をしながら暮らしていました。
しかし漢民族などの北方諸民族の南下に伴い、
タイ人の先祖は周辺の各地へと移住を始めました。
彼らの一部は、9世紀頃までに現在のタイ王国のある、
インドシナ半島まで移住してきました。
ここでタイ人はインドから伝わったカレーに出会いました。
そしてカレーはタイ人の食生活に取り入れられていきました。
こうしてインドで生まれたカレーは東南アジア各地に広まっていき、
それぞれの地域の伝統的な食文化と融合して独自の発展を遂げていきました。
しかし、15世紀ごろまではアジアのどの国でも、
現在のカレーには大抵入っているチリペッパー(唐辛子)は
使われていませんでした。
実はチリペッパーは熱帯アメリカ原産で、
この頃にはまだアジアには伝わっていなかったのです。
チリペッパーが伝えられるまでは、
ペッパー(胡椒)やロングペッパー(長胡椒)などで辛味を出していました。
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