どうして、ぼくはこんなところに。

目を開けると、深い霧の中にいた。









何も見えない。















自分が歩いているのかもわからないが進んでいる気がする。














しばらくすると、








川？


なのか、











大きな流れがある場所に出た。少し視界が開ける。




















上流がどちらなのか、下流がどちらなのか、流れがどちらにも流れる不思議な川だった。







遠くに1人。人影。














一瞬でわかった。






















『あれ、じいちゃんじゃん』









『おーーい！！』










『なにやってんの。こんなとこで！』










呼んでみてはいるが、声になっているかわからない。






ずっとこっちを見ている。
















１０年前に８４歳で亡くなった祖父








ボクは祖父が息を引き取る瞬間を看取った。









だが後悔が残っている。









自分が取締役になり仕事が忙しかった。帰るとクタクタ。



じいちゃんが大好きな相撲を見ている。




その時はまだ一緒に暮らしていた。






じいちゃんは本当に無口な人だった。表情で語るというか、いつも優しい顔をして。







じいちゃんが夕飯の時に話しかけてきた。









「今日はどこの現場だった？」












その言葉に俺は。






「言ってもわかるわけねーだろ！」







その言葉でじいちゃんはすごく寂しそうな顔をしたのを覚えてる。










その言葉が恐らくマトモに話した最後の会話だと思う。








「なぜ、あの時もっと優しい言葉で話せなかったのだろう。」




その後すぐにじいちゃんは病院に入院する事になり、長い間病院生活になる。
マトモに会話できる状態でなくなり、肺炎になり亡くなった。






ずっとこっちを見ている。









しばらくすると。








手招きしている様に見える。






「おーい」




少しずつ近づいている。













そんな夢を愛知に来てから何度も見る様になった。










もう何度目だろう。










今日その夢の続きを観た。

















いつもの同じ夢。














じいちゃんが手招きをする。












これであの時の事、謝れるかな。あれから色々あったよ。








俺も弟も結婚し、子供も生まれた。そして俺は今こんな様だ。





じいちゃん。俺はこれからどうすれば。







話したい事は山ほどある。















どんどん近づいていく。














「おーい」










そして止まる。ある事に気がつく。


















手招きでは無い。










手が逆だ。
















来るなってこと？














じいちゃんが泣いている顔が見えた。























目がさめると、時間は深夜1時19分。



首周りのすごい汗。











この1時19分が一体何を意味するのか。その時はまだわからなかった。