民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる事件で、小沢氏が不起訴、幹事長続投となったことで、党内は小沢氏礼賛の声が広がり、お祭り騒ぎの様相だ。しかし、検察審査会の判断次第では、強制起訴もありうるうえに、秘書３人が起訴された政治責任を問う声は大きい。今夏の参院選に向け、巨大与党に暗い影がつきまとう。

　

　小沢氏と東京地検特捜部の佐久間達哉部長がそれぞれ４日に行った会見は、勝者と敗者の色が濃かった。

　党本部で会見した小沢氏は冒頭、「国民、同志のみなさんに心からおわび申し上げる」と謝罪したが、進退については「職責を返上しないといけないとは考えていない」と語気を強めた。

　会見後には、「オシッ」と右拳を上げて部屋を去り、この後、東京都世田谷区の自宅に近い居酒屋に秘書らと立ち寄り“祝杯”をあげた。

　対する佐久間氏は検察庁舎で異例の１時間２０分にわたる会見を行い、「共犯に問うだけの証拠がなかった」と淡々と語った。

　小沢氏の不起訴情報が駆けめぐった３日以降、民主党内は「浮かれムードが漂っている（中堅議員）。

　同日夜には、東京・赤坂の衆院赤坂宿舎に民主党議員３０−４０人が集まり、節分の豆まきに興じた。着ぐるみで赤鬼、青鬼にふんした議員や、小沢氏と鳩山由紀夫首相のお面をかぶった女性議員も姿も見られ、さながら“前夜祭”となった。

　小沢氏に近い輿石東参院議員会長は４日、「きょうは一つのけじめ。なんで幹事長をやめなきゃいけないの」と、終結宣言。反小沢系議員も沈黙し、表だって小沢氏の辞任、議員辞職を求めたのは、村越祐民衆院議員ただひとりだった。

　しかし、実は小沢氏への刑事処分の可能性は完全に消えたわけではない。

　小沢氏を刑事告発した市民団体は、今回の不起訴処分を不当として検察審査会（検審）に審査を申し立てる方針を固めた。検察審査会法では、検審で「起訴相当」が２回議決された場合、裁判所が指定した弁護士が検察官に代わって強制起訴する。国民からくじで選ばれた１１人中、８人で「起訴相当」と議決できる。つまり、国民の判断次第で強制起訴の可能性があるのだ。

　また、小沢氏の道義的、政治的責任を問う声も多い。自民党の谷垣禎一総裁は不起訴となった事件は「（小沢氏の）大きな疑惑の一部分にすぎない」と述べ、小沢氏の証人喚問も視野に対応する考えを示した。

　それだけに、参院選勝利のため、世論次第で小沢氏が参院選前に辞任するか、鳩山首相が内閣改造と幹事長交代を含む党役員人事を断行するとの見方もある。

　仙谷由人国家戦略担当相は「これからの世論動向も見ながら政治的な判断をするべきだ」と指摘。別の反小沢議員は「世論が小沢氏を追い込むのを待つしかない」と語り虎視眈々と「小沢降ろし」の機をうかがっている。（夕刊フジより）