黙ってられるか、ボケ！

親戚の子を城山公園へ連れて行くと、晴れが数日続いていているのに、遊具が濡れていた。
親戚は不思議がっていたが、私はピンときた。
親戚が帰った夕方、一人で維摩池に散歩へ行くと、イッシーがいたため、「今日、城山公園に行ったでしょ？」と聞いてみると、イッシーは照れくさそうに笑った。

維摩池にイッシーがいたので、「何処に言ってたの？」と声を掛けたら、イッシーは弘法さんを指差した。
「弘法さんと、お話しをしたの？」と聞いてみると、イッシーは小さくうなずいた。
どうやら、イッシーには悩みがあるようだ。

維摩池の散歩のついでに弘法さんへ行き、弘法さんに「イッシーが来たでしょ？」と聞いてみると、私がイッシーと意思疎通できると知った弘法さんは驚いたのか、身動きひとつしなかった。

幼馴染みのＡとでの散歩を終え家に帰ろうと、維摩池の西側に設置してある自販機の前を通ると、背中をツンツンされた。
振り向くと、イッシーが自販機を指差したため、Ａに気付かれないよう口パクで「飲むの？」と聞いてみると、イッシーは「ウン」と頷いた。

私はＡに気付かれないようジェスチャーで「お金は持って来てない」とやってみると、イッシーはジェスチャーで「スマホも持ってないの？」と聞いて来た。
「スマホも持ってないの？」と聞いて来たのは、イッシーは電子マネーが使えることを知ってるから。

姿形がネス湖のネッシーに似ていることから、イッシーと呼ばれているが、イッシーを見たことがある人は多くはない。
維摩池の遊歩道を歩いていると
近所に住む幼馴染みのＡ、「アレ、イッシーじゃない？」
と、Ａは維摩池の中央部を指差して言うのだが、イッシーは私とＡが歩いているのを、さっきからずっと付いて来ている。
たまに私が振り向くと、イッシーは人差し指を立てながら「シー」。
「シー」の音に気付いたＡが振り向いても、Ａにはイッシーが見えない。
なぜなら、心が淀むＡには、イッシーは見えないから。

私達の前を歩くのは、赤ちゃんを抱っこした若いお母さん。
お母さん、「どうしたの？誰に手を振ってるの？」
気になって私が振り返ると、イッシーは赤ちゃんに手を振っていた。

ネス湖のネッシーは知ってるでしょ！
だったら、維摩池のイッシーは知ってる？

野生のライオンを間近で見たことがある人がいないのは、間近で見るとライオンに食べられてしまうから。
イッシーを見た人がいないのも、野生のライオンと理屈は同じ、イッシーには気を付けてね。