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2015年07月08日

株式投資は “正しさ”では勝てない!?

 ●オバハン、流動性相場の恐ろしさを学ぶ

 サスペンダー:おかあさん、「流動性相場」って知ってるか? 

 パンプキン:リュウドウセイソウバ? なんやそれ、聞いたことあるな。新聞かテレビでよう言うてはるで。何のことや? 

 サスペンダー:流動性って何が流動しているかといったら、お金が流動しているってことやねけど、世の中に流れるお金の量が増えたら、そのお金が向かう先がなくなって、なんでもかんでも資産の値段が上がる、ということ。

 パンプキン:はぁはぁ、なるほど。

 サスペンダー:今、世の中で「お金余り」って聞くやろ? あれ何でか知ってるか? 

 パンプキン:それ、政府とか日銀が、いっぱい市中に供給したお金が株に向かってるんやろ? 

 サスペンダー:なんや、意外と分かってるな。ほなら、流動性相場のリスクって何かわかるか? 

 パンプキン:なんや、聞いたことあるで。90年頃、バブルの時も同じようなこと言うてたわ。実態が伴わない株価やから、売り出したらひたすら売られて値段がつかんようになるねやろ? 

 サスペンダー:なんや、わかっとるな。実態が伴わないというか、実際誰かが株を売っても、積極的に買いたい値段やったら買い手がつくから値段は崩れへん。けど、実態と乖離した値段やったら、誰かが売りに回った時、買い手がつかないままひたすら売られて、株価もひたすら落ちるねん。これ、何も難しないやろ? 友達のカズちゃん(60代後半のオバハン)に説明すると思って、流動性相場を説明してみ? 

 パンプキン:あんた、いい加減にしいや!! カズちゃんに株とかリュウドウセイソウバの話したら、「あんた、なんでうちにそんな話するの! ぜぇーんぜん、興味ないわ! 」って、怒らはるで!! 

 さて、今回はオバハンが意外と流動性相場を理解していて驚いたのだ。これは私たちがまだ子供のころ、団塊の世代は「実体経済とかけ離れた株のバブル」を体験までした世代ならではであろうか。もはやオバハンと流動性相場を議論する必要がなくなってしまったわけだが、今回は流動性相場の議論をもっと拡大して、「実体経済では説明できない株価の大きな値動き」について、その様々なパターンを読者の皆様と一緒に学んでいきたいと思う。




● 景気鈍化の中国で、 なぜ株価が急騰したのか? 

 「中国株を売っていたファンドマネジャーは全員死んだ……」

 私はいまロンドンに滞在しているのだが、これは昨日ディナーを共にした世界最大規模の資産運用会社でファンドマネジャーとして活躍するミンス(仮名)の一言である。

 中国経済の先行き不透明さが取り沙汰される中、日本ではやれシャドーバンキングの不良債権、やれ不動産バブル、やれ中国崩壊論など面白おかしく騒がれてきた。しかし、ほんの少し前まで、今年は中国株が世界最高のパフォーマンスを示してきた。

 バリュエーションの水準もすっかり高騰し、もはやファンダメンタルでは買えない、“乗るか反るか”のバブル相場になっている。経済悲観論が先立つ中、なぜこれほどまでに中国株が買われたのだろうか? 実際、実体経済とは裏腹に、中国市場での証券取引量は、他の主要証券市場の10倍を優に超え、なかでも個人の資金が株式に押し寄せている。

● 政府が株価を上げようとしたときは、 目をつぶって株を買いまくれ

 「習近平政権が株価を上げようとしているから、政府の株価を上げる能力を皆、信じているんだ」

 これは中国人投資家の友人の一言だが、実体経済がどうであろうが、習主席が「株価を上げる」と言えば、経済動向に関係なく株価は上がるらしい。

 効果の大きかった政策の一つが中国株式市場の垣根撤廃である。深セン市場、上海市場、香港市場は分けられていたが、最近の制度改正により中国大陸市場の株も香港市場で買えるようになり、その逆もしかりとなった。この証券市場間の自由取引解禁により、資金の移動が圧倒的に増え、例えばテンセントの株などはまさに爆騰した。

 中国市場では、当局の政策が株式相場に大きな影響を与えるので、大手資産運用会社のファンドマネジャーたちはこぞって共産党幹部と会食をし、政策動向に関し知見を深めようとしのぎを削っている。つまり、投資対象の経営陣やIR(インベスターズリレーションズ)とのみ話していても、株価を決定する大きなコンテクスト(背景情報、状況)は見えてこないのである。




● 株価のさざ波ではなく、津波に乗れ “個別業績分析”は“流動性相場”に飲み込まれる

 このような、“企業収益や経済見通し”と関係のない株の値動きは頻繁にある。むしろ株価の動きは、業績のファンダメンタルズに関係のない値動きのほうが多いのではないか。

 例えば不動産株に関しては、物件の賃料や土地の値上がり見込み、空室率などを一生懸命細かく調べているアナリストが多いが、それらは所詮、さざ波に過ぎない。日々の数%の株価の値動きではなく、3倍、5倍、10倍、はたまた10分の1に株価を変動させる“相場の津波”は、不動産向け貸し出しなど、金融市場の環境に大きく依存するのだ。

 過去2年間の日本株の急騰なども、“ファンダメンタルから乖離した値動き”の良い例である。確かに輸出企業の業績は改善しているが、8000円の株価を2万円に押し上げるほどの、2.5倍の業績向上があったかといえばそれには程遠い。中には、円安で輸入価格が上がり、業績は低下しているのに株価だけは上がっている企業も多いが、それは株式市場に押し寄せる資金が増えているからであり、これを流動性相場と呼ぶ。

● 優良株が売られ、ダメな株が急騰する理由 理不尽な“デノミネーターエフェクト”

 株価が企業業績に関係なく動くことは多い。例えば、リーマンショックが起こった当初、日本はサブプライムローンをあまり抱えていないので影響は少ないと言われたが、結果的に最も売られたのが日本株であった。

 これは当時の取引高の大きな部分を外国人機関投資家が占めていたからである。だが、彼らは米国株への資産配分の一定割合を日本株に配分しているので、米国株の価値が下がれば自動的に日本株を売って、その割合を一定に保とうとするのである。逆もしかりで、米国の株価が上がれば、一定の割合に保つために他の国の市場の株も買うため、たとえその株のファンダメンタルズが悪くても、買われるときは買われてしまう。これを“デノミネーターエフェクト”という。

 このデノミネーターエフェクトで売られるときは、優良株ほど売られていくからやるせないものである。というのも、外国人機関投資家はアナリストやファンドマネジャーを通して優良である割に割安な株を買おうとする。しかし、その外国人が日本株を売るときは、そういった優良株しか持っていないので、本来上がるはずの株に限って売り浴びせられるのだ。




 ちなみに、今回のギリシャ危機に端を発する市場の混乱でも、ユーロ圏のリスク上昇が飛び火してEUから米国への資金引上げが起こり、一見、実体経済に何も関係なさそうな日本の株式が、優良株から大幅に売られる展開が危惧される。

 他にも、本来なら紙切れになるまで売りとばさなければならない倒産寸前の株が急騰することもあるから手に負えない。例えば、ある会社が倒産しかけていて、多くの投資家が空売りを仕掛けたとする。すると、当面はみるみるうちに株価が下がるが、ショート(空売り)を仕掛けた投資家は、どこかの地点で株を買わなければならない。すると、どこかの地点で買い注文が集中し、業績に何も良いことがなくても株価が上がることがある。

 そして株価が上がりだすと、ショートを仕掛けていた投資家が焦って、“さらに値上がりする前”に株を買い戻そうとするので、需要がさらに集中して株価が高騰する。意図的にショートカバー(空売り後の株の買戻し)を集中させて株価を上げることを“ショートスクィーズ”というが、これもファンダメンタルズだけ分析していては投資判断を誤る典型例であろう。

● 馬鹿な理由でも、株価は大きく動く 賢すぎると勝てない株式投資

  “株式投資は賢すぎる人は勝てない”とは、かのウォーレン・バフェットが語った言葉だが、公開株の資産運用会社の経験を振り返っても、それは正しい。株価はストーリーが正しいから上がるのではなく、皆がついてくるから上がるのだ。逆に言えば、本来なら売られるべき株も、皆が騙されている間はひたすら上がり続ける。

 少しでも公開株のアナリストやファンドマネジャーをやった人は、株価理論の“効率的市場理論”など鼻で笑う気もおきないくらい、相手にしたくない理論ナンバーワンであろう。市場は情報の非対称・非効率の塊であり、多くの市場参加者のおかしな思い込みや偏見に惑わされ、大いなる誤解が株価を形成しているのである。

 例えば、私が建設会社の株式を担当していたとき、中部地方の一部で地震が起こった。大きな地震ではなかったのだが、怪しげなブローカーが“復興需要で建設会社に恩恵”みたいなレポートを流して、株式を売買させようとする。もちろん真面目に業界を分析していたアナリストは、もっと大きなファンダメンタル要因である“公共事業の原則”“原材料高騰”“民間建築の価格競争”“供給過剰”など、いくつものもっともな理由を並べて、決して建設株を買おうなどとは夢にも思わない。だが、株式投資で勝つのはこの“馬鹿なストーリー”に乗った人だったりするのだ。




 結果的に、“これはとんでもなく馬鹿なストーリーだが、騙される人のほうが正しく判断する人よりも多く、購買力が高い”と判断すれば、“馬鹿な人の数”にベットして投資し、鮮やかに儲けて高値で売り抜けるのである。

 もちろん、長期的には株価はファンダメンタルズに収束するはずという“ファンダメンタリスト”の議論も一部当てはまるケースもある。しかし“長期”の定義が不明なことと、単に株価を外している時の“市場が間違っており、本来の価格に落ち着くはずだ”などという言い訳に使われることが多いこととも申し伝えておきたい。

 重ねて言うが、株式投資で大切なのは“ファンダメンタルズが正しいかどうか”ではなく、自分が投資している期間において、“どのストーリーのほうが信者をより多く引き付けるか”を見抜くのが大切なのである。

● 日本株の“パーティータイム”は、 いつまで続くのか

 今の流動性相場は、日銀による資金供給に加え、GPIFが国内株式への配分をかつての12.5%からほぼ倍増させるまでに株を買いまくって日本株を押し上げているためであるというのはご存じのとおりである。ファンダメンタルを乖離して株価が上がっていることをバブル相場と呼ぶが、こうなると株価の予測は業績の予測というより“この乱痴気騒ぎがいつまで続くか”という、もっともらしく言えば“行動ファイナンス”、より端的に言えば“空気を読む”以外にできることがなくなるのである。

 私が尊敬する某伝説のファンドマネジャー(某大手外資系運用会社で最大規模のファンドを長年運用)は、ファンダメンタルズから乖離したバブル相場は“乗るか反るかの一大博打”、と語っていたが、これに私も同意する。説明力が怪しい“ファンダメンタルズに依拠した理論”で株価のランダムな動きを無理やり説明しようとするから、ますます投資判断を間違えるのだ。

  “株価は長期的にはファンダメンタルズを反映する”と訴えかけてくる資産運用会社が多いが、何を信じるかは個人の自由だ。しかし、火傷する心の準備が必要である。様々な理論に裏切られてきてすっかり“相場の無神論者”(=株価に絶対の決定要因などないという考え方をする人)になった私としては、 “株価は所詮のところ需給で決まり、様々な短期・長期の需給要因の中、ファンダメンタルズは判断材料の一部に過ぎない”というのが正しいところである。宗教でも株価でも、極端なファンダメンタリストはバランス感覚を失い、やがて自滅の道をたどるのだ。
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