2022年03月14日
忘却の闇に 第3話 ささやき
紹介先の工場にて
昇平、工場長を紹介するから
君が昇平君かね
はい
ところで、記憶を無くしたときいたのだが
はい
よければ、丁度なうちで働いていたものが辞めてな
どうかね
まあ、少し力仕事だけど君は体つきがいいから向いているかもしれないな
私でよければ
そうか、だが、住むところがないと聞いたが
実はそうなんですよ
わかった、俺の家に住め
まあ、狭くて古いが無いよりはいいだろう
はい
工場長宅にて
お父さん、お父さん
誰か一緒に住むことになったってお母さんから聞いたけど
ああ、うちで働く者だ
ほら、話をしたら来たぞ
実は記憶を無くしていてな
北山昇平という名前しか覚えていないんだ
きゃあ
イケメンさんじゃない
そうだろ
美恵子
そんなことはないですよ
工場長
その日の夕方
美恵子、今日は焼肉パーティでもするか
いいね
お父さん
ううう
焼肉・・・
なんだ、この感覚は
どうしたの
昇平さん
いえ
俺は誰なんだ・・・
どうですか
昇平さん、ビールでも飲みませんか
いえ
明日の仕事に支障があるので
昇平、気にするな
どんどん、飲め
お父さんは飲みすぎよ
肝臓を悪くしているでしょ
ああ、大丈夫だ
もう
その日の深夜にて
俺は誰なんだ
全然、思い出せない
恋人はいたのか
名前だけじゃないか
俺は一体どうなるのか
翌日
昇平さん
昨日はよく眠れましたか
お父さんのいびきがすごかったでしょ
そんなことはなかったよ
お父さんはいい人じゃないか
まあね
こわい時があるけど
私にはとても甘いのよ
そうなんだね
昇平さんは恋人はいるの
そうか
覚えていないのでしたね
それなら、私がなってあげましょうか
あ、なってあげましょうかは失礼ですね
私は魅力を感じませんか
いや、そんなことはないよ
突然ですね
昇平さんはカラオケとかは歌いませんか
いや、それすら記憶がないですね
それでは、仕事が終わったら食事に行きませんか
いえ、私は一文無しなので
大丈夫です
お金は心配いりませんから
よろしいのでしょうか
もちろんです
昇平さんと行きたいからです
それでは、お言葉に甘えます
レストランにて
このコースは美味しいでしょ
そうですね
昇平さん
改めて、私と付き合ってもらえませんか
突然すぎるのはわかりますけど
それとも、私には魅力がないかしら
そんなことはありません
ただ・・・
友達からじゃ駄目でしょうか
そうですよね
私には魅力がないのです
ここにお金を置いておきますから
私は帰ります
待ってください
第4話へ続く
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