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2019年07月29日

うつ病と自殺率

こころの病気の原因と対策

うつ病と自殺率

うつ病では、強い自殺の危険にさらされるケースがあることが知られています。不安とうつは関係する神経伝達物質に違いがある.png

うつ病は、自然に寛解する
ことの多い精神障害ですが、
うつ病の方々に治療を導入
することが必要なのは、
うつ病がしばしば自殺念慮
をもたらし、
自殺の危険を高める
からです。

海外の文献によると、
精神疾患を原因とする
自殺の中で、
約36%をうつ病や双極性障害が占めていることが
報告されています。

それゆえ、うつ病を早期に
診断し、治療することが、
自殺を防止する有力な方法となるのです。

これを実証した研究としては、
新潟県で実施された、
地域の老人のうつ病を早期に診断し、治療する取り組みがあげられます。

この取り組みによって、
自殺率を2分の1以下にすることができました。

このように自殺とうつ病は、
互いに密接に結びついており、
うつ病を治療すれば自殺が減らせる、
逆に治療しなければ自殺の可能性が増す
という関係になっています。

入院から1年で完全に回復するのは50%

うつ病になった人の5人に2人は発症から3ヶ月いないに回復しはじめ、
5人に4人が1年以内に回復しはじめます。

そしてうつ病の患者の50%は、
治療を開始する以前にすでにうつ病を最低1回は
体験していることが知られています。

これは、うつ病には自然に寛解する傾向があるため、
治療を受けずに回復することが少なくないことを意味します。

うつ病の最初の入院から1年後で50%が完全に回復します。

また5年後では85〜90%が回復していると報告されています。

回復しない患者の多くは、
うつ病が慢性化した状態の気分変調症
(2年以上の長期にわたって、ほとんど中断なく、抑うつ症状が持続する)
に移行します。

薬物療法を続けないと、
退院後半年で25%が、
2年で30〜50%が、
5年で50〜75%が再発します。

これに対して、双極性障害は、多くの場合はうつ状態で発症します。
躁状態のみで、うつ状態のない双極性障害は全体の10〜20%です。

躁状態は治療をしないと3ヶ月間も続きますが、
治療をすれば数週間で治ります。

躁状態の50〜60%は炭酸リチウムなどによる薬物療法で抑えることができます。

再発を繰り返すと寛解の期間が短くなる傾向が認められます。

双極性障害患者の40〜50%は、2年以内に2回目の躁病再発を経験します。
双極性障害は再発傾向の強い病気です。

若い時期に発症したこと、
職業に不適応だった経歴があること、
アルコール依存症であること、
再発までの間に抑うつ症状が認められる場合には、
病気の経過が悪くなることが知られています。

長期予後は、全体の15%が良好、
45%は再発が多いが良好、
30%が部分的に寛解のまま経過し、
10%が慢性化するという経過をとります。

うつ病や双極性障害などの治療では、
精神療法と薬物療法とを組み合わせることが一般的です。

精神療法では、患者への教育や環境への介入を含めた
支持的精神療法が基本とされます。

また別の精神療法として、
抑うつ的認知の改善を目指す認知療法が行われています。

また、「経頭蓋磁気刺激治療法(TMS)」
という新しい治療方法が注目を集めています。

これは、脳の背外前頭前野という部位に磁気刺激を与え、
ニューロンの活動を変化させる治療方法です。

薬物と同等の効果が得られ、副作用が少なく、
比較的短期間で治療が終わるという長所があります。

薬物療法では、
最近は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
など副作用がとても少なく、
比較的短期間で治療が終わるという長所があります。

外来治療でコントロールできない場合には
入院が必要になります。

うつ状態よりも、躁状態の患者の方が
治療を受け入れる傾向が乏しいので、
入院治療が必要となることが多くあります。

再発する傾向が強いと考えられる症例に対しては、
予防のための抗うつ薬や炭酸リチウムなどによる維持療法が行われています。

【参考文献】
ニュートン別冊 精神科医が語る 精神の病気
心の病気の原因と対策が、この1冊でよくわかる!
監修 仮屋暢聡 株式会社ニュートンプレス 2019年4月5日発行

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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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