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2019年07月02日

すこやかに老いるーサクセスフルエイジング

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。

ニュートン別冊ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学 から
 監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス

発達の心理学


すこやかに老いるーサクセスフルエイジング

老年期は一般的に、退職する65歳ごろ以降とされます。トランプ.jpg

心身の機能が低下し、退職などにより社会とのつながりが大きく変化するとともに、
身近な人が亡くなるという体験も増える時期です。

そういった状況と向き合いながらも、
より精神的に充実した日々を送っていけるよう、
前向きに加齢とつきあっていくあり方を
サクセスフルエイジング
といいます。

心身の機能低下はどうしてもさけられませんが、
それによっておこるであろう問題に前もって対処していくことは可能です。

たとえば自動車の運転技能が落ちてきたと感じたら、
事故を起こす前に免許証を返納し、
それによって買い出しが難しくなるのであれば、
食材の宅配サービスを探しておくといったように、
代替手段をうまく利用していくことは、
老化への適応の一種だといえるでしょう。

また年をとると、
退職によって収入が減る、
仕事や子育てを通じてできた人とのつながりがなくなるといった
問題とも向き合うことになります。

生きる目的についても同じです。
前成人期や成人期(中年期)は、
仕事での出世や子供の世話と独り立ち、
マイホームのローン返済といった
わかりやすい目的が目の前にありました。

しかし老年期では、
自分で作らなければ目的はなくなります。

一方、老年期は
これまでの人生経験に意義を見出し、
新たな世界を開く時期だとも考えられます。

自由になる時間が増え、
趣味や社会貢献など、
新たな生きがいを見つけることが可能です。

ボランティアや趣味のサークル、地域活動などへの参加により、
新たな社会や他者とのつながりを作ることもできます。

一方、寝たきりになるといったことは
できれば避けたいものです。
週に1回しか外出しない
閉じこもりと呼ばれる状態は、
寝たきりや認知症などになるリスクが大きい
ことがあきらかになっています。

これは、身体機能の低下や、
外出すれば怪我をするのではないかという恐怖、
近所付き合いが少ないため出かける意欲が下がるといった
ことが重なって生じます。

閉じこもりは、その人がもともと持っていた
ライフスタイルだとみなされて見過ごされがちです。

周りの人は、本人が置かれた状況に配慮しながら、
積極的に働きかけを行っていくことが大切といえるでしょう。

自分なりの方法で工夫して喪失体験と向き合う人は、
幸福度が高いと言われています。

そのためには早くから、
退職後や子育て後の人生設計を考えることが大切でしょう。
今までの取り組みを振り返ることも、
これからの過ごし方を考えるうえで有意義だとされます。

老年期の始まりは、
第二の人生のスタート地点とも言えます。
健やかに老いるためにできることはいろいろあると言えそうです。

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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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