2016年06月06日
570話 やっぱり大好き龍太郎
「迎え来れる?」
龍太郎の短いメールが龍之介の携帯に入電された。
野球部の仲間の家で二日間合宿してきた龍太郎が、恐らく
母親に依頼したら、断られ、仕方なく、父親にメールすることに
なったのだろう。
よりによって、母親は季節外れの風邪をひいて、仕事直後に
フトンをかぶって寝ているらしい。
「迎え行けるから、大丈夫だよ。」
龍之介はむしろ迎えを頼まれたことを喜んだ。
しかし、夕飯時、食事の準備ができていないことまで
想像してはいなかった。
「どうしよう」
何とも気まずい二人だが、龍太郎は自分の部屋へ上がった。
今日は、大きな骨付きチキンをクリスマスのように照り焼きに
してもらうはずだった。材料はあるが、そんなもの龍之介が
造れるはずもなく。
「塩コショウで焼くしかないか」
やがて、龍太郎も降りてきて、牛肉を焼く。
「ねえ。肉しかないの?肉だけじゃきついんだけど?」
などと言われても、この家は龍之介にはもはやアウェイ。
「ご飯もないし、野菜無理やし・・・
あっそうそう豆腐ならあるよ」
龍太郎は素直に豆腐を食べ始めた。
「意外とお腹いっぱいになるね。苦しい、もういらん。」
そんな龍太郎とも、これ以上二人きりは気まずい龍之介。
ここはテレビ頼みだ。
志村けんのバカ殿さま
「ハハハハハハハッ」
笑うのはむしろ龍之介のみ。
笑わない龍太郎はそれでもそばにいてくれる。
>流石、志村けん
「龍太郎、ジャース買ってっ来てるぞ。飲まないか?」
「俺、炭酸止めてるんだ。」
野球部での約束事を守っている龍太郎。
「進学のことで悩んでないか?悩んでたら相談しなよ。」
「うん、大丈夫。」
「K高なら大丈夫だと思うけど、S高やSM高なんかも考えても
いいと思うよ。」
地元に近い公立高校のK高。龍之介の単身赴任場所に近い私立の
S高やSM高。
「今は、T高やN高もいいらしいよ。」
龍太郎から良質な野球部のある高校の名前が出た。
まだ、野球やるきはあるんだ。良かったと龍之介は思った。
「そうだね。T高も通学できるね。だけどN高は通学は無理かな。」
志村けんのバカ殿さまも終わり、龍太郎は静かに自分の部屋へと
戻った。
翌朝・・・
「あ〜だいぶよくなったぁ〜」
嫁ちゃんは一晩で体調を取り戻した。
「すごい免疫力だね。よかった、よかった」
「龍太郎ね、いつもならすぐに捨てるようなものなのに、
これ大切に持ってるんだけど・・・」
それは、名門S高校の学校見学のパンフレット。
龍太郎は心の片隅に、密かに野球を続ける闘志が
眠っているに違いない。
そんな龍太郎を自転車を置いている学校付近の友達の家まで、
すすんで車に乗り、送ってやった。
そして、今までの不仲の時のように、返事もされない悲しい気持ちを
表すかのように龍之介は小さな声で
「いってらっしゃい。」
と見送った。
龍太郎は車からおり、荷物を取り出すと目を合わさないまま
行ってしまう仕草に見えたが・・・
「行ってきます。」
その声は、非常に力強く、大きく、ハッキリと龍之介の耳に
飛び込んできた。
龍太郎の短いメールが龍之介の携帯に入電された。
野球部の仲間の家で二日間合宿してきた龍太郎が、恐らく
母親に依頼したら、断られ、仕方なく、父親にメールすることに
なったのだろう。
よりによって、母親は季節外れの風邪をひいて、仕事直後に
フトンをかぶって寝ているらしい。
「迎え行けるから、大丈夫だよ。」
龍之介はむしろ迎えを頼まれたことを喜んだ。
しかし、夕飯時、食事の準備ができていないことまで
想像してはいなかった。
「どうしよう」
何とも気まずい二人だが、龍太郎は自分の部屋へ上がった。
今日は、大きな骨付きチキンをクリスマスのように照り焼きに
してもらうはずだった。材料はあるが、そんなもの龍之介が
造れるはずもなく。
「塩コショウで焼くしかないか」
やがて、龍太郎も降りてきて、牛肉を焼く。
「ねえ。肉しかないの?肉だけじゃきついんだけど?」
などと言われても、この家は龍之介にはもはやアウェイ。
「ご飯もないし、野菜無理やし・・・
あっそうそう豆腐ならあるよ」
龍太郎は素直に豆腐を食べ始めた。
「意外とお腹いっぱいになるね。苦しい、もういらん。」
そんな龍太郎とも、これ以上二人きりは気まずい龍之介。
ここはテレビ頼みだ。
志村けんのバカ殿さま
「ハハハハハハハッ」
笑うのはむしろ龍之介のみ。
笑わない龍太郎はそれでもそばにいてくれる。
>流石、志村けん
「龍太郎、ジャース買ってっ来てるぞ。飲まないか?」
「俺、炭酸止めてるんだ。」
野球部での約束事を守っている龍太郎。
「進学のことで悩んでないか?悩んでたら相談しなよ。」
「うん、大丈夫。」
「K高なら大丈夫だと思うけど、S高やSM高なんかも考えても
いいと思うよ。」
地元に近い公立高校のK高。龍之介の単身赴任場所に近い私立の
S高やSM高。
「今は、T高やN高もいいらしいよ。」
龍太郎から良質な野球部のある高校の名前が出た。
まだ、野球やるきはあるんだ。良かったと龍之介は思った。
「そうだね。T高も通学できるね。だけどN高は通学は無理かな。」
志村けんのバカ殿さまも終わり、龍太郎は静かに自分の部屋へと
戻った。
翌朝・・・
「あ〜だいぶよくなったぁ〜」
嫁ちゃんは一晩で体調を取り戻した。
「すごい免疫力だね。よかった、よかった」
「龍太郎ね、いつもならすぐに捨てるようなものなのに、
これ大切に持ってるんだけど・・・」
それは、名門S高校の学校見学のパンフレット。
龍太郎は心の片隅に、密かに野球を続ける闘志が
眠っているに違いない。
そんな龍太郎を自転車を置いている学校付近の友達の家まで、
すすんで車に乗り、送ってやった。
そして、今までの不仲の時のように、返事もされない悲しい気持ちを
表すかのように龍之介は小さな声で
「いってらっしゃい。」
と見送った。
龍太郎は車からおり、荷物を取り出すと目を合わさないまま
行ってしまう仕草に見えたが・・・
「行ってきます。」
その声は、非常に力強く、大きく、ハッキリと龍之介の耳に
飛び込んできた。
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