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2024年09月09日

トーマス・マンとファジィ3

イロニーの原理

a) 定義 Thomas Mannは、彼の散文の条件として常に現実から距離を置く。一つには、現実をできるだけ正確に考察するために、また一つには、 それを批判するために、つまり、イロニー的に。…この批判的な距離は、 イロニー的な距離になりうる。実際に、批判的な表現における簡潔さには、余すところなく正確に規定された概念言語の要求に対して、 言語媒体そのものの特徴から反対の行動をとるある種の制限が設けられている。一方、ファジイ理論は、システムが複雑 になればなるほど、より正確な記述ができなくなることを主張する。

b) 特徴 双方に共通の特徴として、主観性を想定することができる。周知の通り、ファジィ理論は、科学の中に客観性ではなくて、主観性を導入する。 一方、Thomas Mann と Hans Castorp が歩んでいく道をベースにしたイロニーの原理は、自己を乗り越える原理である。 つまり、ファジィ理論における主観性は、個人的な主観であり、Thomas Maimの主観性は、超個人的な主観(主体性)となる。しかし、何れにせよ双方共に個人による規定や決定が問題となっており、両者をまとめて広い意味で主観と呼ぶことができる。

c) 語の選択 Thomas Mannが使用するイロニー的な語彙、例えば、形容詞とか副詞は、意図的な不正確さを通して言葉が持っている本来の意味合いをはずす。一方、ファジイ集合によって表現される概念は、「背の大きい人達」や「多かれ少なかれ」といった曖昧な概念であり、外延的でも内包的でもない中間的なものとなる。

花村嘉英(2005)計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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