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2017年12月20日

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える6

4 質疑応答の一例

 計算文学を研究するためのシステムは、あるのかないのか。つまり、どこがスタートラインで、どのような基礎研究があり、それはどのような形で応用編へ展開していくのか。
⇒ 人文から見た計算文学は、認知のTの逆さの定規を言語と情報の認知に分けたLのフォーマットによる、作家の執筆脳の研究である。縦の購読脳だけではない。
現在、「魔の山」のDBを作成している。Excel上にシートを分けて、あらすじをまとめ、イディオムや形容詞といった用語類とか音に関する情報そしてまたThomas Mannのイロニーが読み取れる文章などを抽出している。良いDBを作るには、関連文献と共に作品自体を何度も重ねて読む必要がある。
⇒「魔の山」のDBを使用して、推定による統計を試みている。データが比較的大きいためである。
ラフ集合をベースとした研究分野にテキストマイニングがある。まず、DBを作成するために、テキストデータの収集方法を検討しなければならない。例えば、非定型文の場合、不要な情報が大半を占めるため、分析する上で不満が残る。より具体的な情報を得るには、文章が完成した定型自由文を用いるほうが良い(林 俊克2002)。そこから、Thomas Mannのイロニーにまつわる因果関係を探ることはできる。筆者がかねてから思っているように、「魔の山」を単体レベルではなく、他の作家のDBとマージすると面白い。
⇒ 他の作家の候補として、魯迅、ナディン・ゴーディマ、森鴎外、井上靖、川端康成などを考えている。地球規模を意識して、東西南北にバラつくように作家を選んだり、男と女の割合も7対3ぐらいになるようにしていきたい。

参考文献

花村嘉英 (2005)  計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジー推論といえるのか? 新風舎 
花村嘉英 (2017)  Thomas Mann “Der Zauberberg”のデータベース
林俊克 (2002)  Excelで学ぶテキストマイニング入門、オーム社
津本周作 (2001) ラフ集合論の現状と課題、日本ファジー学会誌552-561
Mann, Thomas (1974)  Der Zauberberg, Fischer Verlag.

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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