2019年05月13日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <60 梨花の最期>
梨花の最期
僕は今は、家でゆっくりと暮らしている。梨花と二人で映画館へ出かけることもある。そういう日は夕食は外で食べる。人ごみの中では手をつないで歩く。仕事もほとんど俊也に任せた。三崎もまだ元気だ。三崎は、やはり大した男だった。自分の後継をしっかりと育てて俊也のサポートをしてくれている。
梨花は最近は方向感覚が定かでなくなって、一人で外出させるのは危なくなってきた。しかし家の中では何の支障もなく食事の支度をし掃除をする。相変わらず大阪のノリで周囲を笑わせる。話の内容もおかしいところはない。ただ、住所の話をするときには途中で笑ってごまかしてしまう。
その日の朝はキッチンで機嫌よく朝食を作っていた。カウンターの下へ座ったキリなかなか立ち上がらないので見に行った時には倒れていた。救急車を呼んで、そのまま入院した。脳卒中だった。
以前にも一度、朝目覚めないので慌てて救急車を呼んだことがあった。即入院したが、その時には意識を回復して、その後何の変化もなかった。医師から小さな脳梗塞があると聞かされていた。もっと気を付けなければならなかった。
入院してから4日経った。たまに、何か言って笑うこともある。相変わらずなにか冗談を言おうとする。梨花は気を使っているときには相手を笑わせようとするのだ。
その日の夜9時頃だった。梨花は「真ちゃん、あかんたれで泣き虫の真ちゃんが大好きよ。」というと眉間にしわをよせた。「ママ。ママ。苦しい?苦しいの?」真梨がすこし大きな声を出した。
僕は真梨に2人きりにしてくれるように頼んだ。梨花の表情は僕たちが初めて関係を持った時の表情だった。僕の記憶の奥底に埋もれていたものがよみがえってきた。あの時の夢を見ているのだろう。僕の運命が変わったあの日の夢を見ているのだ。
梨花の耳元で、「梨花、そんな顔するから思い出しちゃったよ。」と声をかけた。梨花はフッと笑った。「大丈夫。すぐ行くよ。すぐ行く。直ぐだよ。すぐだ。」と声をかけると、静かにほほ笑みながら眠りについた。
梨花は僕が手をつないでいかなければ目的地にはたどり着けないだろう。行ったこともないところへ行くのに一人では不安だろう。僕だってそうだ。初めての道を一人で歩くのは寂しいに決まっている。梨花、君のせいで寂しがりな男になっちゃったよ。すぐ行くから、ちょっとだけ待っててほしいんだ。直ぐだからね。
梨花の手を握ると、ゆっくりと冷たくなっていった。
続く
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僕は今は、家でゆっくりと暮らしている。梨花と二人で映画館へ出かけることもある。そういう日は夕食は外で食べる。人ごみの中では手をつないで歩く。仕事もほとんど俊也に任せた。三崎もまだ元気だ。三崎は、やはり大した男だった。自分の後継をしっかりと育てて俊也のサポートをしてくれている。
梨花は最近は方向感覚が定かでなくなって、一人で外出させるのは危なくなってきた。しかし家の中では何の支障もなく食事の支度をし掃除をする。相変わらず大阪のノリで周囲を笑わせる。話の内容もおかしいところはない。ただ、住所の話をするときには途中で笑ってごまかしてしまう。
その日の朝はキッチンで機嫌よく朝食を作っていた。カウンターの下へ座ったキリなかなか立ち上がらないので見に行った時には倒れていた。救急車を呼んで、そのまま入院した。脳卒中だった。
以前にも一度、朝目覚めないので慌てて救急車を呼んだことがあった。即入院したが、その時には意識を回復して、その後何の変化もなかった。医師から小さな脳梗塞があると聞かされていた。もっと気を付けなければならなかった。
入院してから4日経った。たまに、何か言って笑うこともある。相変わらずなにか冗談を言おうとする。梨花は気を使っているときには相手を笑わせようとするのだ。
その日の夜9時頃だった。梨花は「真ちゃん、あかんたれで泣き虫の真ちゃんが大好きよ。」というと眉間にしわをよせた。「ママ。ママ。苦しい?苦しいの?」真梨がすこし大きな声を出した。
僕は真梨に2人きりにしてくれるように頼んだ。梨花の表情は僕たちが初めて関係を持った時の表情だった。僕の記憶の奥底に埋もれていたものがよみがえってきた。あの時の夢を見ているのだろう。僕の運命が変わったあの日の夢を見ているのだ。
梨花の耳元で、「梨花、そんな顔するから思い出しちゃったよ。」と声をかけた。梨花はフッと笑った。「大丈夫。すぐ行くよ。すぐ行く。直ぐだよ。すぐだ。」と声をかけると、静かにほほ笑みながら眠りについた。
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