2019年04月17日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <35 親戚>
親戚
梨花が安定期に入ったころに、親戚があつまって食事会があった。大阪の有名な料亭の一室だった。老舗料亭らしいが5階建てのビルだ。
集まったのは、ママの妹夫婦と梨花の父方の親戚2家族だった。梨花は洋装だった。並みいる女性がみな和服なのに梨花だけが洋装だったので、かわいそうに思った。多分、ママが一生懸命揃えた和服があるのだろうに。
ママの妹の夫はアメリカの不動産会社の役員だった。おとなしい品のある人で海外生活の方が長いという話だった。口数が少なくて少し不機嫌なような気がした。しょうがない。急に出てきたよくわからない男と姪が結婚したのだ。しかも順番違いだった。
ひょっとしたら自分の親戚にケチが付くと思われているかもしれない。以前の僕なら嫌味の一つぐらい言うかもしれないが今の僕はちがう。あくまで礼儀正しく接した。僕たちの子供がどんな世話になるかもしれない。
父方のおじさんは禰宜ということだった。その息子も神官だった。奥さんの家の跡を継いだそうだ。「俺もできちゃった婚で、しょうがないので女房の家に入った。」といって笑った。
その弟は公務員だった。父方の家の跡はこの人がついだらしい。嫁という人は方言丸出しのおもしろい人だった。父方の親戚は気楽で付き合いやすかった。
そう緊張することもなかった。禰宜のおじさんが強面で、その人が僕と同じく順番間違いをした人だったので気が楽だったのだ。
この席で、依子さんも紹介された。こちらは結婚式、披露宴をするそうだ。僕がそうすすめた。何かといえば引き気味になる依子さんこそしっかりと、後継者の妻として披露されなければならない。再婚だからといって地味にしてはいけない。
俊君も、この家の子供としてみんなに認識されなければいけない。俊君をみんなにしっかり紹介してやって欲しかった。俊君を日陰の子供として育ててはいけない。
そこへ行くと梨花は僕の家の押しも押されもしない大奥様だ。彼女にプレッシャーを与えるような親戚もいない。僕には、梨花を紹介して祝いの席を設ける必要もなかった。親戚などいなかった。
思えばなんと孤独な生活だったのだろう。15年間、一人で肩ひじ張って生きてきた。風邪をひく余裕もなかった。
ママは、梨花に花嫁衣裳を着せたがったが本人は全く関心がなかった。そういう意味では梨花は立派なオヤジだと思っていた。常に僕は自分に甘いのだ。あとになって、梨花が僕の懐事情を考えてくれていたのかもしれないと気づいた。
続く
梨花が安定期に入ったころに、親戚があつまって食事会があった。大阪の有名な料亭の一室だった。老舗料亭らしいが5階建てのビルだ。
集まったのは、ママの妹夫婦と梨花の父方の親戚2家族だった。梨花は洋装だった。並みいる女性がみな和服なのに梨花だけが洋装だったので、かわいそうに思った。多分、ママが一生懸命揃えた和服があるのだろうに。
ママの妹の夫はアメリカの不動産会社の役員だった。おとなしい品のある人で海外生活の方が長いという話だった。口数が少なくて少し不機嫌なような気がした。しょうがない。急に出てきたよくわからない男と姪が結婚したのだ。しかも順番違いだった。
ひょっとしたら自分の親戚にケチが付くと思われているかもしれない。以前の僕なら嫌味の一つぐらい言うかもしれないが今の僕はちがう。あくまで礼儀正しく接した。僕たちの子供がどんな世話になるかもしれない。
父方のおじさんは禰宜ということだった。その息子も神官だった。奥さんの家の跡を継いだそうだ。「俺もできちゃった婚で、しょうがないので女房の家に入った。」といって笑った。
その弟は公務員だった。父方の家の跡はこの人がついだらしい。嫁という人は方言丸出しのおもしろい人だった。父方の親戚は気楽で付き合いやすかった。
そう緊張することもなかった。禰宜のおじさんが強面で、その人が僕と同じく順番間違いをした人だったので気が楽だったのだ。
この席で、依子さんも紹介された。こちらは結婚式、披露宴をするそうだ。僕がそうすすめた。何かといえば引き気味になる依子さんこそしっかりと、後継者の妻として披露されなければならない。再婚だからといって地味にしてはいけない。
俊君も、この家の子供としてみんなに認識されなければいけない。俊君をみんなにしっかり紹介してやって欲しかった。俊君を日陰の子供として育ててはいけない。
そこへ行くと梨花は僕の家の押しも押されもしない大奥様だ。彼女にプレッシャーを与えるような親戚もいない。僕には、梨花を紹介して祝いの席を設ける必要もなかった。親戚などいなかった。
思えばなんと孤独な生活だったのだろう。15年間、一人で肩ひじ張って生きてきた。風邪をひく余裕もなかった。
ママは、梨花に花嫁衣裳を着せたがったが本人は全く関心がなかった。そういう意味では梨花は立派なオヤジだと思っていた。常に僕は自分に甘いのだ。あとになって、梨花が僕の懐事情を考えてくれていたのかもしれないと気づいた。
続く
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8730878
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック