2019年04月02日
THE FIRST STORY 真一と梨花
嫉妬の再生
ここ半年は、大阪へ行って田原の家に泊まって、夜中に梨花が部屋に来るというパターンが続いている。といっても実際に会えたのは5、6回だろう。いくら邸宅でも実家でそんなに羽目も外せない。それでも幸福だった。まるで学生時代のような付き合いだった。
外で会った時には僕は羽目を外した。家で声を潜め合っている分外では梨花も大胆になった。僕は、時々、梨花の過去の男に嫉妬した。自分の前に梨花と濃密な時間を過ごした奴がいると思うと歯がみをしたい気持ちになった。
梨花は、その男にも一緒に死んでやるといったのだろうか?その男の背を撫でて守ってあげるといったのだろうか?その男の前でもあんなにやるせない顔をしたのだろうか?その男にもあんなに柔らかだったのだろうか?そういう、嫌らしい嫉妬心を抑え込まなければならなかった。
僕は、祖父母がなくなった頃には嫉妬心というものをほとんど持たなくなっていた。それは僕の生まれつきの性格ではなかった。
僕は小学校の入学式に、父親が来ている友人がうらやましくて仕方がなかった。中学校の入学式には母が駆けつけてくれたが僕は素直に喜べなかった。ふてくされて入学式に出た。そのあとも学校行事のたびに友人をうらやみ嫉んだ。いつもふてくされていた。
可愛げのない子供だったので、あまり人にかまわれることがなかった。ただ、祖父母だけが僕の気持ちを汲み取って愛してくれた。僕が、非行化せずに大人になれたのは祖父母の愛情のおかげだった。祖父母がなくなってからは自分の生活に必死だった。嫉み疲れて、そんな人間らしい気持ちがなくなってしまった。
生活のために気持ちのいい男を演じるのに必死だった。おかげで多少稼ぎも増えて恋人も人並みにできていた。ただ、その恋人が他の男とどうかなったとしても、それはその時に終わらせるだけの恋だった。人に対する執着心というものが希薄だった。
聡と会って大阪の親戚と交流ができ、今、梨花との関係ができ、人間らしい気持ちを取り戻していた。僕は自分の嫉妬心の強さに戸惑っていた。
以前付き合っていた男はどんな奴だったのだろう。なぜ別れたのだろうか?その男は梨花に執着しなかったんだろうか?
続く
ここ半年は、大阪へ行って田原の家に泊まって、夜中に梨花が部屋に来るというパターンが続いている。といっても実際に会えたのは5、6回だろう。いくら邸宅でも実家でそんなに羽目も外せない。それでも幸福だった。まるで学生時代のような付き合いだった。
外で会った時には僕は羽目を外した。家で声を潜め合っている分外では梨花も大胆になった。僕は、時々、梨花の過去の男に嫉妬した。自分の前に梨花と濃密な時間を過ごした奴がいると思うと歯がみをしたい気持ちになった。
梨花は、その男にも一緒に死んでやるといったのだろうか?その男の背を撫でて守ってあげるといったのだろうか?その男の前でもあんなにやるせない顔をしたのだろうか?その男にもあんなに柔らかだったのだろうか?そういう、嫌らしい嫉妬心を抑え込まなければならなかった。
僕は、祖父母がなくなった頃には嫉妬心というものをほとんど持たなくなっていた。それは僕の生まれつきの性格ではなかった。
僕は小学校の入学式に、父親が来ている友人がうらやましくて仕方がなかった。中学校の入学式には母が駆けつけてくれたが僕は素直に喜べなかった。ふてくされて入学式に出た。そのあとも学校行事のたびに友人をうらやみ嫉んだ。いつもふてくされていた。
可愛げのない子供だったので、あまり人にかまわれることがなかった。ただ、祖父母だけが僕の気持ちを汲み取って愛してくれた。僕が、非行化せずに大人になれたのは祖父母の愛情のおかげだった。祖父母がなくなってからは自分の生活に必死だった。嫉み疲れて、そんな人間らしい気持ちがなくなってしまった。
生活のために気持ちのいい男を演じるのに必死だった。おかげで多少稼ぎも増えて恋人も人並みにできていた。ただ、その恋人が他の男とどうかなったとしても、それはその時に終わらせるだけの恋だった。人に対する執着心というものが希薄だった。
聡と会って大阪の親戚と交流ができ、今、梨花との関係ができ、人間らしい気持ちを取り戻していた。僕は自分の嫉妬心の強さに戸惑っていた。
以前付き合っていた男はどんな奴だったのだろう。なぜ別れたのだろうか?その男は梨花に執着しなかったんだろうか?
続く
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