2019年06月28日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <40 真実>
真実
翌日はホテルの和食屋の個室で食事をしながら話した。「純一を養子にすると最初に言ったのはおじいちゃんだ。ある日突然おじいちゃんが男の子を養子にしたいと言い出した。
それに大反対したのがママだ。ママがその子は自分の子供だといってきかなかった。もちろん。僕も大賛成したんだ。僕たち夫婦は不妊治療に失敗してたんだ。だから、神様がその子を僕たち夫婦に下さったみたいに思った。僕たち夫婦は君が欲しくて養子にした。」
「なんで、おじいちゃんは僕を養子にしようとしたの?どういう縁で僕は養子になることになったの?」
「純一は聡一が結婚する前に美奈子さん以外の人と恋愛して生まれた子供だ。君のお父さんは聡一だ。」というと純一は、しばらくポカンとしていた。そして「それ隆や叔母さんも知ってること?」と聞いた。
「この間、美奈子さんが気づいたんだ。一瞬、修羅場に成るかと思ったんだが、あの人は意外に肝が据わってる。」というと、純一は腑に落ちたという顔をした。「僕、大阪でものすごく親切にされるんだ。だから縁談とか一生懸命になってるんだなあ。」といった。
僕は一瞬不快になった。「大阪がいくら親切だろうと、こっちの愛情の深さに勝てるもんか。」と妙な返事をしてしまった。
「絵梨と君は従妹同士、結婚して何の問題もない。君のお母さんと聡一が別れて、聡一が結婚してから君が生まれた。君のお母さんは、どうしても聡一の子供が欲しくて、聡一に知らせずに君を生んだ。そのころ美奈子さんは病弱で聡一は君の存在を言い出せなかった。
そこで、おじいちゃんが君を引き取りたいといった。でも、ママがそれに納得しなかった。自分の方がふさわしいからうちの養子にするって、おじいちゃんに食って掛かったんだ。ママはお嬢様育ちでね、その上おじいちゃんは甘々の親だったからママが人に食って掛かることなんてなかった。
縁っていいうのかな。なんで、あの時、あんなこと言ったんやろうって?そんな感じ。ママは直感的に、その男の子が欲しくて欲しくてしょうがなくなった。それで、今もまだずっとその子が可愛くてしょうがない。ママは自分以外の母親は認めない。」と説明した。
「僕、望まれてなかったんだね。父親から。」と純一が言った。「違う。聡一は君が可愛くてしょうがなかったから家の外にも家庭を持った。大阪のおじいちゃんにとっては君は孫だ。かわいくてしょうがなかったから毎月養育費を払った。
金で解決したかったら、一括で大きな金を渡せば終わる事をわざわざ毎月会うようにした。聡一も大阪のおじいちゃんも君が可愛かったし心配だったから毎月養育費を払った。聡一は、毎週通っていたらしい。そういう意味では美奈子さんは気の毒な立場だった。」
純一の顔は興奮で赤みを帯びてきた。「じゃ、僕の母親は愛人として僕を育ててたんだよね。その人今何してるんですか?」少し怒っていた。「実は僕は君のお母さんには面識がない。僕が君の存在を知った時には亡くなってた。君が生後3カ月ぐらいの時に交通事故にあったらしい。
それで当初は、お母さんの兄という人が君を引き取ったらしい。聡一は、その兄さんという人に会って君が幸福になれないと確信した。なんとか、こちらで引き取れないかを、要は親戚中で考えた結果、君がうちへ来た。」
「何でその時、父は僕を引き取れなかったんですか?養子に出すなんて筋違いじゃないですか。」と明らかに聡一を責めていた。「美奈子さんのおなかには隆君がいた。美奈子さんは病弱で心も弱かった。こういう問題に向かい合える人じゃなかった。
みんなはそう思った。あの頃の印象では、美奈子さんは神経質で、とても君を幸福にできるような気がしなかった。君は知らないやろうが真一おじいちゃんは田原真介の愛人の子供だ。中学生の時にお母さんが亡くなってる。君のことを放ってはおけなかった。
最初は自分の養子にするつもりで皆に話した。それを真梨が自分の子にしたいと言い張った。純一、うちでは君を欲しくて養子にした。だからこその特別養子だ。誰にも渡す気なんかない。」というと純一は泣き出した。個室にしてよかった。「パパに君呼ばわりされたくない。」と言って泣いた。
「僕も、この話をするについてはそれなりに決心した。いったんお前と距離を置かないと冷静になれないやないか!今でも、なんでこんな話をしてるのか納得してないよ。それでも真梨は絶対嫌だって言ったんやからしょうがない。僕が損な役を引き受けてきた。
ほかの人に頼むわけにもいかん。僕ら夫婦は今まで通り純一、純一って呼び捨てにしたい。ママからの伝言。ママの前では絶対ママだけの子でいてほしい。全くしょうもない役目や。僕は自分でも一体何をやっているのかよくわからん。」
純一が「世話のかかる息子でごめん。」といったので「もう一人の娘の方も世話がかかる。最近気分がちょっと破れかぶれで心配してる。明日、聡一にもきちんと挨拶をしてくれ。特に美奈子さんにちゃんと礼を言ってほしい。今回のことで僕たちの背中を押してくれたのは、あの人や。」
「うん、多分僕たちは、いい方向へ向かっているんだよね。」といった。「多分、そうだと思う。」と答えてから「世界が変わるというか、急転直下というか。たぶん僕たち家族4人は、みんなそんな感じでいるんやと思う。みんな三半規管とか平衡感覚とか、そういうものが狂って、何が何だかよくわからなくなってる。お前落ち着いたら真梨に電話してくれ。」と言って別れた。お互いに腑に落ちたような落ちないような訳の分からない気分だった。
続く
翌日はホテルの和食屋の個室で食事をしながら話した。「純一を養子にすると最初に言ったのはおじいちゃんだ。ある日突然おじいちゃんが男の子を養子にしたいと言い出した。
それに大反対したのがママだ。ママがその子は自分の子供だといってきかなかった。もちろん。僕も大賛成したんだ。僕たち夫婦は不妊治療に失敗してたんだ。だから、神様がその子を僕たち夫婦に下さったみたいに思った。僕たち夫婦は君が欲しくて養子にした。」
「なんで、おじいちゃんは僕を養子にしようとしたの?どういう縁で僕は養子になることになったの?」
「純一は聡一が結婚する前に美奈子さん以外の人と恋愛して生まれた子供だ。君のお父さんは聡一だ。」というと純一は、しばらくポカンとしていた。そして「それ隆や叔母さんも知ってること?」と聞いた。
「この間、美奈子さんが気づいたんだ。一瞬、修羅場に成るかと思ったんだが、あの人は意外に肝が据わってる。」というと、純一は腑に落ちたという顔をした。「僕、大阪でものすごく親切にされるんだ。だから縁談とか一生懸命になってるんだなあ。」といった。
僕は一瞬不快になった。「大阪がいくら親切だろうと、こっちの愛情の深さに勝てるもんか。」と妙な返事をしてしまった。
「絵梨と君は従妹同士、結婚して何の問題もない。君のお母さんと聡一が別れて、聡一が結婚してから君が生まれた。君のお母さんは、どうしても聡一の子供が欲しくて、聡一に知らせずに君を生んだ。そのころ美奈子さんは病弱で聡一は君の存在を言い出せなかった。
そこで、おじいちゃんが君を引き取りたいといった。でも、ママがそれに納得しなかった。自分の方がふさわしいからうちの養子にするって、おじいちゃんに食って掛かったんだ。ママはお嬢様育ちでね、その上おじいちゃんは甘々の親だったからママが人に食って掛かることなんてなかった。
縁っていいうのかな。なんで、あの時、あんなこと言ったんやろうって?そんな感じ。ママは直感的に、その男の子が欲しくて欲しくてしょうがなくなった。それで、今もまだずっとその子が可愛くてしょうがない。ママは自分以外の母親は認めない。」と説明した。
「僕、望まれてなかったんだね。父親から。」と純一が言った。「違う。聡一は君が可愛くてしょうがなかったから家の外にも家庭を持った。大阪のおじいちゃんにとっては君は孫だ。かわいくてしょうがなかったから毎月養育費を払った。
金で解決したかったら、一括で大きな金を渡せば終わる事をわざわざ毎月会うようにした。聡一も大阪のおじいちゃんも君が可愛かったし心配だったから毎月養育費を払った。聡一は、毎週通っていたらしい。そういう意味では美奈子さんは気の毒な立場だった。」
純一の顔は興奮で赤みを帯びてきた。「じゃ、僕の母親は愛人として僕を育ててたんだよね。その人今何してるんですか?」少し怒っていた。「実は僕は君のお母さんには面識がない。僕が君の存在を知った時には亡くなってた。君が生後3カ月ぐらいの時に交通事故にあったらしい。
それで当初は、お母さんの兄という人が君を引き取ったらしい。聡一は、その兄さんという人に会って君が幸福になれないと確信した。なんとか、こちらで引き取れないかを、要は親戚中で考えた結果、君がうちへ来た。」
「何でその時、父は僕を引き取れなかったんですか?養子に出すなんて筋違いじゃないですか。」と明らかに聡一を責めていた。「美奈子さんのおなかには隆君がいた。美奈子さんは病弱で心も弱かった。こういう問題に向かい合える人じゃなかった。
みんなはそう思った。あの頃の印象では、美奈子さんは神経質で、とても君を幸福にできるような気がしなかった。君は知らないやろうが真一おじいちゃんは田原真介の愛人の子供だ。中学生の時にお母さんが亡くなってる。君のことを放ってはおけなかった。
最初は自分の養子にするつもりで皆に話した。それを真梨が自分の子にしたいと言い張った。純一、うちでは君を欲しくて養子にした。だからこその特別養子だ。誰にも渡す気なんかない。」というと純一は泣き出した。個室にしてよかった。「パパに君呼ばわりされたくない。」と言って泣いた。
「僕も、この話をするについてはそれなりに決心した。いったんお前と距離を置かないと冷静になれないやないか!今でも、なんでこんな話をしてるのか納得してないよ。それでも真梨は絶対嫌だって言ったんやからしょうがない。僕が損な役を引き受けてきた。
ほかの人に頼むわけにもいかん。僕ら夫婦は今まで通り純一、純一って呼び捨てにしたい。ママからの伝言。ママの前では絶対ママだけの子でいてほしい。全くしょうもない役目や。僕は自分でも一体何をやっているのかよくわからん。」
純一が「世話のかかる息子でごめん。」といったので「もう一人の娘の方も世話がかかる。最近気分がちょっと破れかぶれで心配してる。明日、聡一にもきちんと挨拶をしてくれ。特に美奈子さんにちゃんと礼を言ってほしい。今回のことで僕たちの背中を押してくれたのは、あの人や。」
「うん、多分僕たちは、いい方向へ向かっているんだよね。」といった。「多分、そうだと思う。」と答えてから「世界が変わるというか、急転直下というか。たぶん僕たち家族4人は、みんなそんな感じでいるんやと思う。みんな三半規管とか平衡感覚とか、そういうものが狂って、何が何だかよくわからなくなってる。お前落ち着いたら真梨に電話してくれ。」と言って別れた。お互いに腑に落ちたような落ちないような訳の分からない気分だった。
続く
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